205.護国の将軍
■ 死者の平原 ■
【王国】の【兵士】職のクエストではよく行く事になるフィールドである
かつて多くの戦争戦闘が行われた場所であり
【王国】の先人達の記憶、記録、技能が眠る場所でもある
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敵将は2体の騎士を率いて主戦場とはちょっとずれた場所にゆるゆると進んでくる。
こっちは自分が何も指示しない内に騎士5人がそちらに向かう。
仕方が無いので自分もそちらへ向かえば、
騎士が左右に控え、中心には戦車に乗った骸骨の将軍。
まさか、戦車とは。まあ、平原の将なら当たり前か?
いや、騎兵が発達してるなら、戦車戦は無いのか、そうするとあくまで指揮車的なポジションかね?
馬2頭立ての戦車に御者が一体、車右とでも言うのか攻撃係が一体、そして明らかに将と分かるものが一体。
戦車戦は初めてだが、どう考えても一人だけ徒歩の自分が不利だろうな。
現実の戦車なら馬の勢いで強引にドリフト走行してるはずだから、大きく振り回されるように逃げて、戦車を壊すのが良いのだろうが、
ゲームのオブジェクトがそう簡単に壊れるものか分からないしな。そうなると可哀想だが、馬を狙うしか無いだろう。
霜界仕掛けて、動きが遅くなった所を削るしか無いか、うまい事騎士達と連携取れるか・・・
そんな事を癒丸薬を飲みながら考える。先程まで戦陣術を使用していたので、ここで回復しておくほか無いだろう。
こうして指揮官同士が顔を合わせて相対しているのだから、直接戦闘で決めるということだ。多分。
折角の集団戦なんだから兵達の力を借りたいが、ガッツリ噛み合って泥沼消耗戦中。
前半のアドバンテージ分こっちが押しているようだが、あくまで押しているだけ、圧勝してこっちに駆けつけてくれるなんて事は、無いだろう。
そんな事を考えている内に左右に広がる騎士達。
いやいやいや、これから戦車攻略だよ?勝手に動いちゃ駄目じゃん?
しかし、敵も左右に分かれる。大外に両騎士同士が対峙する。
自分から見て左手側に車右と見られる勇士が、右手側に御者が腰の剣を抜き、戦車から馬を外して、騎乗して対峙する。
戦車から馬を外して・・・?
それぞれの正面にこちらの騎士が向き合う。
そして、最後に敵将が戦車を降り、徒歩で自分に向き合う。
大外から順に騎士が名乗りを上げ突撃していく、それに呼応するように敵騎士も馬を駆けさせる。
最後に自分の番だが、騎士の名乗りの作法など、祖父ちゃんに昔聞いたことがある位だ。
しかし、相手は見ていると先程からしゃべれないようだ。そこに一方的に名乗るのもなんだ。
代わりに腰の剣を抜き、自分の得物を顔の前に立て相手に見せると、敵将も応じてくれる。
ちなみに一体残ったうちの騎士はさもこれが作法とばかりに少し外れた場所に立会人状態だ。
自分は人数使って戦いたいんだけどな。これが【王国】の戦い方か。
敵将に近づいていくと、かなりの巨漢だ。【馬国】の獣人もでかかったが、更に一回り大きいように見える。そして相手の得物もその体のサイズに合った片手長剣だ。
相手の剣の間合いに入ると同時に真っ直ぐ唐竹割りに剣を振ってくるので、自分は地面に水平に剣を掲げて受け止める。
体の芯にズシッとくる衝撃に体の動きが止まる。相手も硬直が発生したのか動きが止まる。
相手が剣を引くのに合わせて間合いを詰めて、今度は自分が突くが、
相手はプレートメイル、ダメージを与えられる場所が少ない為、中身は骸骨だと主張するかのように空いている顔面狙いだ。
しかし、狙いがばれているのか、簡単に顔を背け避けられる。
すぐに剣を引き、敵の肘裏を狙い斬りつける。本当にそんな継ぎ目しか狙う場所が無い。
しかし、どうやら普通に斬るだけでは、効果が薄そうだ。何せ相手の動きに微塵もよどみが無く、2発目の打ち込みが来る。
今度は体幹を使って全身の軸をずらすように横に摺足気味にスライドする。
足場の良い平原だから摺足で動く事で、次の攻撃に繋げられるかと思ったのだが、
読んでいたかのように縦の打ち込みから、横のなぎ払いに切り替えてくる。
そして、一撃一撃が全身を使った強撃の為、こちらも体を固め全身を使って受け止める。
また、先程同様両者動きが止まる。
次の打ち込みのため相手が剣を引いたので、
氷剣術 凍牙
先程、普通の斬りつけだけでは効果が薄かったので、術を乗せて少しでもダメージ量を上げていく。
今度は敵将が剣を突いてきた。感じる圧力が尋常じゃないが、剣を合わせ、滑らせ、小手を防具の上から強引に叩く。
剣撃を持っていない自分では大したダメージ量にならないかもしれないが、術のダメージに期待しよう。
そのまま、今度は胴を叩き、相手の後ろに抜ける。
背中側から膝裏の継ぎ目を突く。
敵将は上体を半回転させるように剣を振り切ってくるが、転がって避ける。
自分が立ち上がると同時に敵将もこちらに正面に向く。
間髪いれずに、真っ直ぐ間合いをつめ直前でジャンプし、顔面を突く。
それを敵将が再び顔を背けて避けるが、今回は体ごと行っているため当然相手とぶつかる。
フルプレートの上に巨漢の敵将はぶつかられても平気で立っている。むしろ自分にダメージが入るが、そのまま相手の首に腕を回しつつ背中側にぶら下がる。
仰け反る相手が一瞬動きが止まった所に首からプレートメイル内側に目がけて剣を突きこむ。
剣身が短い武器を使う自分だからこその密着距離の間合い。
全身骨のはずなのに謎の手ごたえ、まるで心臓だけはあるかのような位置での、変な感触。
相手の動きが止まる。急所判定らしい。
更に2度突けば、体を振り、自分を振り払う敵将。
体の大きさ通りの剛力か、簡単にはね飛ばされてしまう。
相手が剣を構えるが、再びの走って間合いを詰めながらのジャンプ突き。
今度は相手もそれに合わせて剣を横薙ぎに振ってくるが、流石に自分も同じ事はしない。
ブーツに精神力を込め二段ジャンプで、横薙ぎの剣を飛び越える。
そして、そのまま相手の体も越えて、またもや背後を取る。
なんかさっきから背中とってばかりだが、騎士道に反するのだろうか?
まあ、でもそれしか勝ち目が見当たらないから、仕方ない。
相手は先程と同じ振り向き斬り、それに合わせて小手を叩けば、相手の勢いと合わせて大きな衝撃と手応えを感じる。
敵将が剣を取り落とす。
いつもならこのまま追撃だ。
しかし、今日はなんかそんな気分じゃない。100人ボスの割りに人型で、行動や攻撃力も人サイズの域を超えていない。
しかも、戦い方は正面から向き合ってくる。このまま、もう少し続けたいなと思って剣を拾うのを待っていたら。
部位破壊の起きた利き手とは逆の手で剣を拾い、鞘に戻す。
そして、スゥッと姿が空気に溶けたように消えてしまう。
辺りを見渡せば、敵兵も皆消え、さらにうっすらかかっていた靄も消え、晴れて何も無い平原と無骨な砦だけしか残っていない。
すると頭にいつものファンファーレが鳴る。
クエスト発見者
部位破壊
今回はこの二つ
一つはいつものメダル
もう一つは右手用の小手、グローブとは干渉しないようだが、効果はまた今度調べますかね。
なんとも、もやっとした終わり方だが【王国】の100人長クエストだと考えると、集団戦技能と個人戦闘技能を持ち合わせなきゃ勝てないし、やっぱり身体能力の上がるスキルもちの騎士職ありきなのかもな。