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195.潮宝樹

 ■ 宝樹の声 ■


 選ばれた者にのみ聞こえると言われたり、

 宝樹の意思により、極僅かな者にのみ話しかけることがあるとも言われ

 本当は話し好きだが、声が聞こえるものが稀にしかいないとも言われているが

 宝樹の声が聞こえたものは皆一様に女性の声だったと言う


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

 


 魚人街を出て、マンボーさんと暗い水底を泳いでいく。


 ふと思うのは、今までマンボーさんに付いて泳いできたが、いざ一人だったら進む方向をあっという間に見失うだろうという事。


 正直自分には自分がどっちに進んでいるのか皆目見当も付かない。


 まあ、先のことを考えても仕方ないか。


 結局の所、辛い過去にいつまでも囚われていたり、これから来るであろう未来に不安を抱くから情緒不安定になる。


 今日を生きることに集中できれば、何とかしのげる。そんなもんじゃないだろうか?


 うん・・・海は自分を思索に導くから困っちゃうな。


 そんなこんな、時折空気玉の使い方を練習しながら泳ぎ進む。


 そして、水深は然して変わらない筈なのに妙に明るい場所に辿り着く。


 目の前はまるで崖、底は到底見えない暗闇。

 

 自分は今海に潜って、浮遊している筈なのに、一歩踏み外せば落っこちるような錯覚を覚える。


 「少年よ、悪いがここまでだ。この先は瘴気が満ちている。気をつけてくれ」


 「ありがとう。マンボーさん、行ってきます」


 「ここで待ってるぞ」


 そう言ってというかジェスチャーで示して、一人になり、真っ直ぐ泳ぎ進める。


 明るいので方向は間違っていないだろうが、やはり下方に広がる暗闇に恐怖を感じる。


 いつか引き込まれるんじゃ無いかという恐怖。


 気が付かない内に底へ底へと沈んでいるじゃないかという不安。浮力のおかげで上下は分かるが、沈んでない保証は無い。


 足を付く事ができないというのはこんなに不安なものか。


 そして、光源がハッキリしてくる。


 大樹の様に大きな珊瑚だ。


 ベースはピンクがかった赤だが、キラキラと青や黄に煌いている。


 そして、目に見える潮流。


 海水が珊瑚の周りを回る様に強い流れを作っている。


 そしてそこに一匹の黒い大きな魚。


 ただの巨大魚だったら良かったが、何故か腹が体よりも大きく膨らんでいる。


 よくこんなサイズ感で、泳げるなとその体のバランスの悪さがそれだけで気持ち悪さを感じる。


 背中の宝剣を抜き、巨大魚に近づいていく。


 巨大魚は珊瑚の周りの潮流に流されて、近づけないでいるようだ。


 自分も潮流に乗り珊瑚の周りを流される。


 流されながらも、徐々に巨大魚に近づいていくと、大きすぎる腹が今にもはち切れそうで、皮が薄くなっており、中身が蠢いているのがよく分かる。


 正直、この腹だけは剣で突きたくない。


 出来るだけ本体部に向かっていき、後ろから尻尾を斬り落とす。


 あっさり、斬れて水に溶ける尻尾だが、すぐに生える。


 本体の大きさは変わらない。


 多分、腹から体の一部を持ってきているのか。


 再生すると体中から糸か紐のようなものが無数に生えて、自分の方に流れてくるので、少し離れる。


 腹側には何も生えないということは、こっちを先につぶせという事か・・・ちょっと嫌だ。


 まあ、嫌だ嫌だと言っていても仕方なし、腹の真下に寄り、宝剣でつつく。

 

 すると、ずるずると溶けかかった人が暗い水底に沈んでいく。


 これどうしよう。上は触手が流れてきてて、いけない。下は気持ち悪い。


 しかし、やるしかない。腹をつつけば、溶けてくっつきかけた人が腹からこぼれて、沈んでいく。


 よく見たくは無いが、気が付いてしまった。


 人型だけど、人じゃない。幽霊船で登場した敵のような人だ。


 これがアレか?邪神の力を内包した化け物?


 でも、幽霊船で働かされる筈なのに、何で瘴気生物の腹の中で溶けて引っ付いてるんだ?


 後、甲殻類が邪神側の筈なのに、よく分からない。


 まあ、海は神秘だ仕方ない。気持ち悪いが、腹を突きまくりどんどん中身を引きずり出していく。


 大分小さくなってきた所で、そろそろ、倒し方を考える。


 今までの様に積極的に攻撃してくる訳ではないが、近づくに近づけない。


 先程までクラゲのような触手を垂れ流しているだけだった筈なのに、いつの間にか全身にヒレが生えてる。


 普通の魚と違い左右対称でもなんでもなく適当にとげとげのヒレが体中をおおっている。


 ただ、触手のように流れている訳ではない。形が決まっている為、無理の無い範囲で、切り落としていく。


 3枚切り落とし、4枚目を切り落としに行った瞬間にヒレの筋が延び、突かれる。


 取り込まれると思い、一瞬心臓が止まるかと思うほど緊張したが、


 運がいいのか悪いのか、空気玉の一つに当たり、噴出した空気で潮流からはじき出される。


 今度は警戒して、近づいていく。


 近づいただけで、ヒレの筋が延びてくるが、今度は間合いを間違えない。


 真っ直ぐ伸びてくるので、体をずらし、避けた所で、ヒレを切り落とす。


 慎重にヒレを落とし裸にしていく。


 今度こそ、尻尾を切り落とせば、泳げずにただ潮流に流され始める。


 未だ核は露出しないので、尻尾側から削っていく。


 徐々に小さくなり斬れた部分が水に溶けていく。


 丁度魚の心臓の辺りだろうか、頭の付け根辺りに核らしきでっぱりが見えたので、突けば。


 完全に水に溶けて消えていく。


 正直今までの中では一番大人しい相手だったが、多分水中戦と言う事で、ある程度加減した難易度だったのだろう。


 しかし、あの腹から出てきた気持ち悪い人型達は深海に沈んで深海魚にでも食べられるのだろうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 深海を覗いてはいけない。彼らはいつもこちらを観ているのだから。
[気になる点] 邪神系列の海の敵は人によってはかなり無理な感じの見た目をしてるけど、このゲームその辺の緩和手段あったりするのだろうか? [一言] 今回の敵はちょっと想像したらぞわぞわした 隊長はよく戦…
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