表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/613

187.楽しいサバイバル9

 ■ ノーネーム ■


 試験用サーバーに生息する魔物達は開発段階で没になった者達である。

 二足歩行でヒトと勘違いしかねない魔物や

 単純にデザインが没になったもの等々の理由で使われなかった者達は一様に名前が存在しない。 


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////



焚き火にどこからとも無く現れた、でかい緑の裸の王様。


 あんなでかいのが何処に潜んでいたのか?


 「あいつどこから現れたか見てた人!」


 「見ておらんかったの」


 「見ていませんでした」


 「気が付かなかったね!」


 「そんな事どうでもいいから倒すの、ここが正念場なの」


 ビエーラに窘められたので、このキャンプのボスらしき裸の王様に向かう事にする。


 サイズは微妙だ。ユニオンボスは種類によって差はあるが、こいつは本当に微妙なサイズだ。


 片手に木の棍棒を持っているが、手元は細く末端に行くほど太くなる、いかにも野生的な木の棍棒。一本飛び出す枝と葉っぱがワンポイントになってる。


 まずは安定の騎士殿前衛。


 自分達よりかなり大きな巨人相手に堂々と対峙する騎士殿に気負いは無い。


 何か一対一でやる気なの?って聞きたくなるし、下手したらいけるんじゃないの?って思っているのは自分だけだろうか?


 裸の王様が棍棒を振ると風を切る音というより、突風が吹く音がする。


 しかし、軽く相手の懐に入りかわす、騎士殿。そのまま間合いを詰め、脛を斬りつける。


 斬りつけているのだが、鈍い音がし、まるで棍棒で殴っているかのような音がする。


 そして、棍棒を振り切り、一瞬上体が止まった所で、ビエーラの矢が相手の目に刺さる。相変わらずの命中率だ。


 「ウゴフ・・・」


 変なうめき声と共に矢の刺さった目を押さえる裸の王様。


 動きが完全に止まったと見て、殴り始めるガイヤとそのパーティ達。


 さらに剣聖の弟子も参戦し始める。


 自分はやる事がない。さっきは激励で剣聖の弟子が暴走しちゃったし、もう何をしたらいいんだか。


 相手の動きはそこまで俊敏ではない上に、攻撃パターンは棍棒によるなぎ払い、踏みつけ、棍棒を持っていない手での掴みとちょっと少ない。


 順調に攻撃を重ねていると、一声叫ぶ裸の王様。


 すると、ぞろぞろと現れる術士の魔物と棍棒を持つ魔物。


 棍棒持ちが前衛、術士が後衛といった具合だ。それぞれ10体づつで20体。


 自分が後ろから襲われる。ビエーラはさっと逃げ、位置取りを変える。


 自分も続いて、ビエーラの逆に動き始めれば、裸の王様の方に抜けていく、新たな魔物達。


 そして、裸の王様の周りに集合し、既に攻撃してるメンバー達に攻撃し始める。


 元々攻撃していなかった自分はそもそも相手にされていなかったらしい。


 ふむ、裸の王様の動きを見ながら、小さいほうの魔物まで相手にすると、流石に集中しきれないのか、ちょっと動きが鈍くなってくる。


 「皆一旦距離とって集まろう」


 そういうと、うまく戦闘を抜け自分を中心に集まる仲間達。


 皆何気に魔物との戦闘経験が多い。強プレイヤー達がうまく他プレイヤーをフォローしつつ、引いてくる。


 「隊長どうする?力押しにするのはちょっときつくなってきたね」


 「うん、ばらばらに掛かるとどうしても気がそぞろになってるんでしょ?士気揚げちゃうと暴走の可能性があるから術補助は出来ないけど、隊列だけは作れるから、ちょっと集団戦やってみようか」


 「任せるよ!指示通りやるからさ」


 「じゃあ、まず騎士殿先頭に楔状隊形に変更、先頭は騎士殿次を【海国】の二人と自分、三列目をビエーラ、アンデルセン後非戦闘員、遊軍に剣聖の弟子、ガイヤ。コローナのメンバーは三列目の守りについて」 

 一応形になった所で、魔物の集団に対峙する。


 「取りあえず、術士優先で倒していく。近接が近づいてきたら、適当にあしらって、とどめは無理にささなくていい」


 そうして、攻撃を仕掛ける。


 敵先陣の近接は騎士殿が盾で押しのけさっさと割って入る。


 中央は裸の王様がいるので、左外辺から術士を削り始める。


 飛んでくる火の玉は騎士殿が盾で防いでいる。


 どうやら盾術を使用しているのか敵術のダメージがかなり軽減している。


 そして、二列目の【海国】の二人が、術士を削る。


 群がってくる近接魔物はコローナのメンバーが相手をする。


 ビエーラとアンデルセンは視野が広く、バランスよくサポートに入る。


 ガイヤと剣聖の弟子は放っておいても、勝手に敵を削ってくれる。術士優先の指示に、裸の王様の攻撃を避けながら、敵陣内側にいて手を出しにくい奴等を倒してくれるからありがたい。


 兎角ダメージ量の多い術士を倒しきれば、裸の王様に取り掛かる。


 非戦闘員及び遠距離、術士を間合いの外に残し、護衛にコローナのメンバーを残し、残りの近接魔物の掃討を任せる。


 でかい魔物相手で、戦陣術を使えないのであれば、隊形を組むよりばらばらに行ったほうがよい。


 激励は使えないが、戦闘継続による士気はそれなりに溜まってきたので、一個だけ使用する。


戦陣術 疎陣


 隊形不要で、攻守移動が若干上がる使いやすいタイプの術。

 戦線維持より必要士気がやや多いが、士気低下攻撃を使ってこない相手であり、この後術を使用する気も無いので、これで決めてしまおう。


 裸の王様を囲み、人によっては近接魔物にも絡まれているが、冷静に対応してもらう。


 そして、自分は一個だけ試してみたかったので、正面に立ち、足はスタンスを広く取り、構える。


 すると棍棒でなぎ払ってくるので、ブロックする。


 自分より全然大きな相手、しかし、いける気がした。だから行く。


 両手で剣を支え、棍棒を受ければ、ブロックが成立し、硬直する魔物。


 隙ができた所で、一斉に攻撃を重ねる。


 ブロックが成立する事を確認した事で、パターンを確立、そのまま削り倒して勝利する。


 いつもはNPCと何人かやられるのが当たり前で、多少強引に攻める事もするが、出来るだけ倒されないように動くのはなかなか厳しかった。

 

 しかし、一人も倒れなかったのは、何も言わずにこちらのやって欲しい事をやってくれる強プレイヤー達のおかげだろう。

 単純戦闘や集団を動かすことは出来ても、その辺の周りを見て、動くプレイヤースキルは魔物との戦闘経験の差なのかね~。


 集団戦というには微妙な相手だけあって、ファンファーレはならなかったが、背中の大きなマントだけ落としていった。


 マントと言っても大きな布を首で結んでいただけだったが。


 「これなんだろうね?」


 「いや、どう見ても帆じゃねえか?」


 「船の帆?」


 「そう、それだ。多分船を修理するとかそんなんじゃないか?」


 「嗚呼、じゃあ海岸の船で脱出するのに必要なアイテムが手に入ったって事か、先にこっち来て正解だったな」


 「だな。しかし海岸は多分ユニオンボスだって話じゃねえか。メンバーどうするよ?」


 「なんともな~また探索するしか無いのかね?今日のところは小屋に引き上げよう」


 そうして、船の帆を手に入れて、一旦拠点にしている小屋に帰ることにする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ