179.楽しいサバイバル2
■ 同士討ち ■
戦陣術の一つ 隊形による補正は無い
対象となる敵の集団の半数が混乱状態の時のみ使用可能
その名の通り敵同士が戦い始める
条件が厳しくピーキーな術である。
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「さて、ここからどうします?」
「わしはあまり生産スキルは持っていないが<植物知識>と<採取>だけはできるぞ」
「え? <採集>できるの? 騎士殿」
「違うの<採取>は植物だけじゃ。草とか作物とか後水も集められるのぉ」
「なんでまた植物特化? 農業もやってたとか?」
「【王国】におるヒュムの薬師が高齢で薬草が採ってこれないというんで、よく採ってきてやったんじゃが、こなす度にだんだん難易度が上がっていくのじゃ、困った物じゃの」
嗚呼、騎士殿は任務じゃなくて、困った人を助けるつもりでクエストこなしまくってたのか。となると草関係ならかなり信頼置けるな。
「僕は戦闘ばかりで、生産はお役に立てそうもありません」
ふむ、サバイバルとは聞いていたので<野泊者><採集>だけは付けてはいるが、どうなるかな。
「じゃあ、後は武器の調達かね~自分は最悪ナイフでも戦えるけど」
「わしはロングソードじゃの。片手長剣じゃ。短剣小剣は使えん。盾は中盾じゃの」
「僕は本当は日本刀が助かりますが、片刃の刀類なら扱えます。日本刀じゃないと抜刀術は使えませんが」
「う~んこのメンバーじゃ作るのは無理だし、何かあればいいんだけどね」
そんなこんな、話していると川原の石が何となく感覚にひっかかる。
ここは上流なのか、結構大きくてごつごつした石が多い。
その中の一つが感覚に引っかかったので<採集>してみると〔砥石〕だった。
これは自分にとっては馴染み深い<手入れ>道具だ。
一応<野泊者>の<基礎知識>でこの手の珍しくない汎用アイテムは判別できる。
そして、とりあえず島からの脱出が目的だが、脱出方法については全然思い当たらない。
まずは、歩く事にする。なんだかんだ三人ともあまり立ち止まってしゃべるより、動きながら思いつくタイプみたいで、川を下って歩いて行こうかと提案すれば、それに乗り、思いつくまま話す。
とりあえず、使えそうな草が生えてれば、<採取>する騎士殿。
すばやく小回りが利き、周りを警戒しつつ、進行方向を決める剣聖の弟子。
とりあえず、適当に<採集>する自分。
唐突に剣聖の弟子が警戒するので、自分達も動きを止め身を潜める。
丁度川周りが低くなっている為、体を縮め姿を隠す。
剣聖の弟子の合図に合わせて、そっと覗けば、緑色の生き物が川に向かってきている。
二足歩行なので、もしかしたらそういう種族なのかもしれない。
様子を見守っていると、低くなっている川沿いに下りてきて、顔を川につけて水を飲み始める。
あ~五臓六腑に染み渡るぜ!とばかりに口をぬぐうと、自分達の姿に気がつき飛び跳ね、牙をむく。
そして、腰から剣を引き抜きこちらに向ける。
両手で、正眼に構えているが、どう見ても片手長剣だ。そしてその緑の生き物は自分達よりかなり小さい。
「ギャー!!」と一声無くと自分に斬りかかってくるので、ナイフでブロックする。
硬直が発生したので、喉に突きこみ、更に後頭部にも突きこむと長剣を残し、光の粒子に変わる。
どうやら、持ち物だけドロップして消えてしまうタイプらしい。
落ちた長剣を拾い上げると、がびっがびに錆び付いていたのでお手入れタイムとする。
現状戦えるのは自分だけ、無理しない程度に周囲を警戒してもらう。
丁寧に砥石で錆を落とせば、多分鉄製の片手長剣だ。
これで、騎士殿が戦える。
ふむ、魔物が武器や何か持っているわけか。
うちの主力が力を手に入れたことで、ちょっとほっとして川沿いを進む。
するとなんか気になる実を見つける。
一見ヘチマ。皮をはぎ中を見れば、やっぱりスポンジ状の中身。何で気になるのかスポンジ部をいじっていると、スルスル中身が広がっていく。そして細長い一枚布のようになる。
うん、これ包帯だ、多分。あとは<分析>しなきゃ分からないけど。いくつか包帯ヘチマを採っていく。
そして、自分がヘチマの実をいじっている間に、
騎士殿が魔物を何匹か狩ってきていた。
そして、取り出す、錆びた曲刀、錆びたグリーブ、錆びた冑、かびた革鎧、そしてお酒お酒お酒
「これどうしたの?」
「さっきの緑のやつを適当に倒しておったら、落としたのじゃ」
うん、またお手入れタイムだ。
錆び物は研いで綺麗にしていく。本当はぼろ布でも欲しいけど。とりあえずサバイバルだしな。
そして、問題はカビだが、これは意外とお酒で何とかなる。
今回手に入れたお酒は蒸留酒のようだから、ラッキーだ。高濃度のお酒でカビ落としをしていく。
うん、酒臭い穴あき鎧になった。使えるのか、こんなん?
さて、行こうかと思うと二人して、迷子だよ。自分しかいないじゃん。
最初に研いだ曲刀持ってテンション上がっちゃったんかね~。困ったもんだな~と思っていると
目の前に獣が現れる。狼だ。こっちはナイフ一本。相手は猪サイズの狼。
じっと見合っていると、真っ直ぐ向かってくると見せかけて、後一歩で左に飛び、そこから飛び掛ってくる。
が、殺気はバレバレ、口の中に横にナイフを差し入れ、口端を斬りながら、押し返す。
ひっくり返して、地面に叩きつけ、喉にナイフを一発差し込む。
急所に入り硬直したところで、めった刺しにすると、動かなくなるのでナイフを突き立て<採集>すれば、
毛皮と牙を落とした。
そんなこんな川沿いで作業していると、騎士殿と剣聖の弟子が帰ってきた。
そして、もう、数えるのもめんどくさいほどの数の装備品と、
<採集>も<解体>もしていない死体をいくつも手に提げて持ってくるので<採集>するといくらかの毛皮とそこそこの量の肉になった。
さらにこの先に気になる場所が有るというので、手入れの手を止め、川から少し外れた場所に行くと
一見一帯不毛の地。半透明の茶色とピンク。もしかしてと<採集>すれば、ピンクの岩塩が取れた。
そして、近くには岩塩を採集する人が宿泊してたのだろうか?小屋が一軒ある。
そこには鍋と水筒があったので、二人に川に水を汲みに行ってもらう。
その間に自分は肉を一口サイズに捌く。味付けは現状塩と騎士殿が<採取>したハーブ類しかないので、
適当に下味をつける。香草じゃ!といって置いて行ったので、毒は無いだろう。
二人が水を汲んで戻ってくれば、その小屋の簡易的な囲炉裏に鍋を懸け、肉塩スープにする。野菜は無いが、野草たっぷりのスープだ。
とりあえず、食事にして、二人が拾ってきた装備品を手入れして夜が更けていく。