178.楽しいサバイバル
■ 火矢 ■
戦陣術の一つ 隊形による補正は無い
【弓兵】及び遠距離攻撃兵科で習得可能
攻撃力は並だが、火傷及び混乱のデバフを与える事が出来る
デバフ付与タイプの戦陣術といえる。
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とある祝日の事、ログインしようと思ったら、久しぶりに白い部屋にいた。
ここは初めてログインした時のキャラクター作成部屋。
正面にはどこかの港が写っている。
そしてアナウンス
『イベント予選通過者にのみにアナウンスされます。最後の確認ですが今回の実験における・・・・』
うん、今回はいつもと時間の流れが違う為、国の認可が下りたとは言え実験段階なので、一応承諾が必要みたいだ。
まあ、いいんじゃん?認可下りてるんでしょ?詳しいこと知らんし。しかも、何かあった場合の補償もあるみたいだし。
承諾すると
先程写っていた港にいた。
先にログインしている人達もそこいらをふらふらしている。
ほんとに小さな港だ。後ろも何があるわけじゃない。そこに知った顔がある。
「おっバルト予選通過したんだ?」
「ああ、隊長か。まあ、なんとかな。まあ、そっちは何となく通過するんだろうなと思ってたよ」
「へ~なんでまた?それとアンデルセンは一緒じゃないの?」
「いや、気のせいかも知れないが、ダンジョンの最後で隊長の声が聞こえた気がしたからな。アンデルセンは生産系プレイヤーと入れ替えで、抜けてもらって【帝国】に行ってもらった」
「ほ~【海国】って海産物が出たんだろ?料理人仲間にしたんだ?」
「その辺は今回の鍵になるんじゃ無いかと思ってるんで、あまり言いたくないが、隊長だけには教えておくか。うちは確かに海産物が出たが、最後はアクセサリー作らされたぞ」
「え~なんでよ。魚料理じゃなかったんだ」
「うちのダンジョンは嫉妬のダンジョンでな【鉱国】だったらキラキラしたアクセサリー作ってもらい放題だったのに!!って言ってな。まあ作らされたわけだ。真珠とか珊瑚とかで」
「は~なるほどね~一応うちは肉ダンジョンだったから、ご飯作っただけだったよ」
「じゃあ、隊長の分野じゃねぇか。戦闘職で生産も兼ねるとか相変わらず、ぶっ飛んでるな」
「皆そんな感じなのかね。サバイバルって言う位だし、生産が鍵になるんかね~」
「ま、そんなこったろうな。まあ、今の段階であれこれ言っても仕方ないだろう。楽しみにしてるぜ」
そう言って、距離を取り仲間と話し始めるバルト。
ふむ、ダンジョンによって必要な生産技能が違ったとするなら、サバイバルってどうなんだろ?アクセサリー作製技術でサバイバルってな?
そんな事を考えていると騎士殿と剣聖の弟子がログインしたのか二人連れ立って現れた。
「やあ、元気?」
「ええ、すこぶる元気ですよ。まだ奥義は会得していないので、再戦はまた今度で」
「うむ、元気じゃの。楽しいサバイバルが楽しみでしょうがないわい」
「うん、じゃあ良かった。ところで二人ってどこの国所属なの?」
「わしは【王国】じゃの、分かるとは思うがの」
「僕は【森国】ですよ。なにか気になる事でも?」
「いや、自分達【馬国】代表じゃん、一人も【馬国】関係者いないなって」
「まあ、仕方ないじゃろうの。それでも【馬国】のダンジョンクリアしてしまったのじゃ、全力でやるのみじゃの」
「そうですね。まあ僕は他人の恨みを買うのは慣れていますので、今更気にしてもと言ったところですね」
「そういや【森国】って日本刀習えるんだね」
「まあ、そこは来てみれば分かりますよ。森を尊び森に隠れ潜み森と共生する人達ですので」
そんなこんな話していると港に泊まる船に人影が現れ、仕切り始める。
『はい!予選通過者の皆さんそして本選参加者の皆さん、おめでとうございますそしてありがとうございます。
今回実験用フィールドとはなっておりますが、人体に影響が無いことは証明されておりますので、ご安心ください。
それでは早速ですが、皆さん乗船お願いいたします。皆様を楽しいサバイバルに相応しい土地にお連れいたします』
そう言うだけ言って、姿が消えてしまう。
そして、流石皆日本人、几帳面に整列して、サクサク乗船するのが凄い。
まあ、普通に最後尾に並び乗船する。
そして、自分以外の二人は有名なのか、やたら見られている気がする。
二度見するだけならまだしも、握手を求められるじいさん&剣聖の弟子。
剣聖の弟子はPKだぞ?いいのか?結構PKも人権あるのかね?
まあ、自分は他人のふりをしてやり過ごす。有名人と一緒とか何かいたたまれない。
そして、船に乗り込むと勝手に橋が外され、動き出す。
少しの間、海風に吹かれるが、ここ最近ずっと吹かれてた自分には感慨も無い。
髪の毛さらっさらの剣聖の弟子は海風に吹かれて、なんかキラキラしているが、自分の幻覚だろうか?
そうして、皆が油断したところで、突然船が揺れる。
波で揺れるというよりは、何かにぶつかったような感触、てっきり大型の海の魔物にでも遭ったのかと、剣を抜くが、
あっという間に転覆する船。
がんばって船の縁を掴んでいたが、水に浸かると同時に勝手に視界がホワイトアウトする。
どういうことだってばよ!自分泳げるのに何で死ぬのよ!などと考えていたら。
海岸で倒れていた。砂浜のようだ。そして、空にさっき船の上で話していた影が映っている。
『皆さん驚かれたと思いますが、皆さんは今無人島に漂着しました。気づかれた方もいるかと思いますが、皆さんあらゆる装備を失い、初心者服と簡易靴と初期状態のアイテムバッグとナイフだけの状態です』
「おい、俺の装備どうした!」
「そうだ!俺たちが心血注いで手に入れて強化した装備だぞ!」
「嗚呼、やっぱり、初心者装備が一番落ち着くな」
「素手のあたしがダントツ有利じゃないか、こいつはいただきだねぇ」
「サバイバルって事はまさか!これからがデスゲームの始まりだって言うのか!」
「この服可愛くないの」
『ええ、色々ご意見はあるかと思いますが、まず装備品はイベント後先程船に乗った状態を記録し、ちゃんと返却いたしますし、ログアウトも可能です。
ただし、今回の特殊フィールドではいつもより10倍早く時間が流れておりますので、一回ログアウトすれば、あっという間に時間が過ぎてしまいますのでご注意ください。
それではルール説明ですが、シンプルです。
楽しいサバイバルではこの島で何とか生き残り脱出していただく事が目的となります。
その為の生産職ではありますが、全てを一からということでは当然間に合わないかと思われますので、かつての住人が残した生活用品やそれを使う魔物を倒して手に入れて有効に使用してください。
また、プレイヤー同士の妨害は可能ですし、サバイバルですので、倒れたプレイヤーはアウトとなります。
ではゲームスタート!』
ゲームスタートと同時に光に包まれ飛ばされるプレイヤー達。
当然自分も飛ばされ、騎士殿と剣聖の弟子と共に川原に放り出される。