174.幽霊船長
■ 突撃 ■
戦陣術の一つ 最もオーソドックスな術の一つ
楔形隊形と相性が良い、相手と対する位置を頂点とし、広がっていくような隊形であり、
先頭は最も戦闘に秀でた者がつく事になる。
攻撃力が上昇する陣形であり、シンプルゆえに使いやすい攻撃用戦陣術
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船の縁で待ち構えて何人落としたか忘れたが、敵が、減ってきた。
相手は素の状態でしぶとく、自軍は戦陣術の防御上げでそれなりにしぶとい。
とは言え、そろそろ動かねばなるまい。
途中適当な相手を右手で掴み、吸収し、一発熱閃を溜めておく。
取り合えず、数がいるだけの下っ端幽霊はサクサク海に落とし、隣の船に移る。
綱で繋がっているだけなので、バランスを取りながら、綱を渡る。
付いてくる敵がいたので、綱を斬り海へ落とす。
綱は何本もあるし、一本くらい良いだろう。
隣の船では、こちらの【兵士】が中央に固まり、幽霊船員に囲まれていた。
密集隊形だと岩陣だが、防御専門の陣だしな。
「反撃するぞ『行くぞ!』」
戦陣術 激励
戦陣術 方陣
横隊を組んでないので、本来の力は出ないが、徐々に押し返していく。
因みに隣から乗り込んだ自分にも向かってくるが、適当に海に投げ落としていく。
そして、自分とは反対の縁に幽霊船員を押し込み、落とし始めると徐々に力関係が逆転していくので、次に移る事にする。
次は、舳先からジャンプすれば、届いた。
乗り込めば、完全に混戦状態だ。取り合えず一体を斬り、一人の【兵士】を助ける。
さらにもう一体の敵を落とし、もう一人【兵士】を助ける。
そしたら、その二人に別の【兵士】を助けに行かせると流れを理解したのか、どんどん固まりが大きくなっていく。
常に敵より多い数で各個撃破していけば、どんどん有利になっていくので、ここも任せる。
次の船に移れば、船には真ん中に敵が一体。
自分より頭一つ大きく、いかにも海賊船長と言った服装の相手。
手は左手が蟹、右手は人の手に銛が握られている。
長いコートで、足がどうなっているのかは、分からない。
帽子の下の顔は裂けた様に広く口角の下がった口にぎざぎざの歯が生え、目玉が飛び出すように二つ。
どこを向いているか分からない。
多分深海魚の一種なのだろうか、非常にグロテスクな見た目をしている。
多分色んな魚や海の生物が混ざったような生き物なのだろう。にしてもそうすると右手だけが人間なのがなおさら気持ち悪い。
のろのろと揺れるように、こちらに近づいてくると、唐突に右手の銛を投げつけてくるので、避ける。
すると、一気に間合い詰め、今度はハサミで掴みに来るが、それも避ける。
避けると同時に脚の辺りを適当に斬りつけるが、結構硬い。
中身は甲殻類なのかもしれない。
そして、投げて甲板に刺さった銛を抜き再度右手に構える。幽霊船長。
今度は自分から近づき、銛が突き出されるところを斜めに避けながら懐に入り、飛び出した目を斬りつける。
音にならぬ声、空気の抜けるような、エラを擦り合わせるような声を出し、硬直する。
そして、首元を攻撃するが、こちらは剣が入らない。首も甲殻類なのかもしれない。
それから、硬直が解け銛で突いてきたところを横に避け、銛を引くところで、左手の蠍のハサミで捕まえる。
服の中に隠れている胴体を突いてみようと、真っ直ぐ剣を突き出すと同時に幽霊船長の服の前が開き、蟷螂の鎌のように内に折れ込む奇妙な腕が、出てくる。
殺気を感じると同時に剣を引き体の前に構えると
曲がった手が、目では捕捉出来ないスピードで伸び剣にぶつかり、体が思い切り吹っ飛ばされる。
うん、これは何となく分かる。蝦蛄パンチだ。たまに泥とかに手を突っ込んで怪我する人がいるやつ。
昔、海遊びする時気をつけるように言われた事がある気がする。
折角捕まえた左手が、外れてしまった。また間合いを詰める。
相変わらず、銛は単調な突き攻撃、いっそコレをブロック、硬直したところで、もう片方の目を潰し、更に銛を持っている人間の手を斬る。
両目を潰された幽霊船長は両手を振り回し、暴れ始める。
何がしたいのか分からないので、少し離れてみていると、
両手で頭を抱え、引っ張り始める。そして、ずるりと頭が落っこちれば、頭の下からなんとも言いがたい、目が現れる。
色の付いてない二本の触手の先端に丸い目のような物体。
どこからが顔ともいえない微妙な形。強いて言うなら虫に見える。
しかし、色合いだけならはだけたコートの内側の鎌のような腕と一体に見えなくも無い。
つまり、胸から上が蝦蛄になったのか。と納得するが、じゃあ、どうやって蟹と人間の手が生えてるのか、コートの下を想像したくない。
動きが、落ち着くと今度は相手から銛を投げつけてくる。と同時に間合いを詰めてくる。
銛を避け、近づいてくる相手に対峙しようと足のスタンスを広げて、構える。
ハサミ手の横薙ぎをしゃがんで避けると蝦蛄パンチが飛んでくる。見えない攻撃を殺気だけで感知し、剣で受ける。
また吹っ飛ばされ、船の縁壁にぶつかり、そのまま海に落ちかけるが、ぎりぎり縁から垂れたロープを掴み、落ちずに済む。
剣をしまい、大急ぎで縁に掴まれば、上から顔を出した幽霊船長にロープを切られる。
間一髪のところで、縁から船の内側に入り一回転、転がってからすぐに立ち上がる。
いつの間にか銛を拾い、その銛で突いてくる幽霊船長。
それを避け、何とか間合いを作ろうと横に回るが、すぐに向きを変え自分から正面に向き、殺気を感じる。
剣を抜く間もなく、左手の平を幽霊船長に向け、蠍のハサミも全開に開き、
吐き出す左手
熱閃を浴びせる。
するとよろめいた幽霊船長が、仰向けにそのまま縁から海に落っこちる。
すぐさま下を確認するが、既にドボンと水柱を立てて海に落っこちていた。
しかし、戦闘の気配は終わらず、喧騒も続いている。
他の船に移ってみようかと思ったところで、寧ろ他で戦っていた【兵士】達が、自分のいる船に集合してきた。
まだ、半数は残っているかという所で、甲板は結構手狭だ。
本当に狭いので、各々元の船に戻す。
そして自分も旗艦へと戻ると、船が大きく揺れる。
どうやら周りの船も同様だ。
あまりの揺れに繋がっていたロープが次々に切れ、動きを取り戻す。
どうなる事かと、様子を伺っていると、
唐突に敵旗艦のマストが折れ、甲板が爆ぜる。
舞い散る木片の中に巨大な影が現れる。