173.海戦
■ 雁陣 ■
戦陣術の一つ、縦隊と相性が良い。
斜めに敵を受け、相手の攻撃力を殺しつつ、自軍からの攻撃は当てていく。
攻守速と上がり、非常に優秀な術なのだが、効果時間が短い。
粘り強さは無いが、一瞬の隙を突いて前戦まで上がったりと機動力が必要な時に使える術だろう。
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それでは幽霊船討伐である。
てっきり1隻で行くものとばかり思っていたが、大型のキャラベル3艘で出る事になった。
自分が居る旗艦が4本マストの一番大型のキャラベル、他二艘が3本マストのキャラベルだ。
バルトのところで乗せてもらった船よりは結構大きい。それでも1艘に100人収容は無理なようだ。
そして、大砲は乗っていない。中世っぽい割にそこは無理みたいだ。
というわけで、戦闘は結局肉弾戦になるらしい。
【兵士】達の装備は、ロングの皮のブーツ、尻が隠れるくらいの長さのジャケット、腰にサーベル、三角帽子。
正直なところ海賊より小綺麗なだけとも言える。
この状況で、どうやって戦えばいいのか想像もつかない。
勝つとか負けるとかじゃない。戦い方が特殊すぎる。船の上で、隊列組むわけにもいかんしな~。
まあ、仕方ない。船に乗り込むと、戦場になるであろう甲板は結構広い。
しかし、自分に割り当てられた部屋は狭い。でも個室なだけいいだろう。
他の乗組員はぎゅうぎゅうみたいだから、かなり恵まれている。
因みに料理は自分が作らずともちゃんと持ってきてくれる。
今まで自分で作る事が当たり前になりすぎてたので、新鮮な気持ちだ。最近色んなところで楽させてもらえるが【帝国】が厳しいんか?
しかし、暇だ。自分乗り物向いてないのかもしれない。船酔いこそしないが、なにもやる事無いのに耐えられない。
甲板でも掃除しようかと思ったけど、やらせてもらえないし、調理室入れてもらえないし。武器防具の手入れも終わっちゃったし。
甲板に出て空を見たり海を見たりするが、何にも変わらない。いっそ泳ごうかな。置いてかれても困るしな~。
しかし、そんな暇も長くは続かない。
ふと、いつの間にか霧がかかる。
「きたぞ、奴が近くに居る」と船長
「霧が出ると幽霊船がいるなんて、いかにもですね~、どんな姿なんだか」
「まあ、会えば分かるさ」
そして、行く先に船影が見える。影はどうやら3艘。つまり数は合っているわけか。
徐々に距離が近づいてくる船影。そのままお互い直進する。
うん、船が急に止まれないのは分かるけど、正面から行くって何よ。
そのまま、お互い掠めるようにすれ違う。
そして、敵旗艦船首に立つ一回り大きい人影、手が明らかに蟹だった。
影だから、あとは三角帽子をかぶっていた事くらいしか分からなかったが、左手が蟹だった!
自分も対抗して左手に蠍のハサミを装着する。
しかし、敵ボスを倒すのが条件なら、敵旗艦に集中して攻撃すりゃいいんじゃないか?いやそう簡単にはいかないか。
船は少し傾き、右に回りに弧を描くように走る。面舵いっぱいといったところか。
相手も同じように機動して、お互い円を描くようにしながら、徐々に距離が近づいてくる。
そして、【兵士】達が、鉤付きのロープを用意して甲板の縁に待機する。
十分に近づいたところで、お互いロープを投げ込み、船を固定し合い、そして、敵船に乗り込む。
6艘がガチャガチャに組合い、海戦も何も無いんじゃないか。
嗚呼、これもしかして、自分が海戦分からんから、ただの混戦で力づくの戦いになっちゃったんじゃ。
そうこうしている内に敵もこちらに乗り込んでくるが、青ざめて生気を感じない人間にヒトデやらふじつぼやらが、まとわりついて、ちょっと湿っているというか、ねばねばしてそう。
怖いというより、やや不快感のある見た目の敵が乗り込んできたので、自分も出来ることを始める。
「よし、はじまった『いくぞ!』」
戦陣術 激励
戦陣術 戦線維持
と言うわけで、無難に防御上げだ。みんな個別に攻め込んでいるのに隊形も何も無いし、それは予想していた。
取り合えず、状況が動くまで、自分も敵を減らしにいくか。
まず、手近にやってきた、ヒトデが顔の真ん中にくっついてどうやってこちらを認識してるか分からないやつを蠍のハサミで掴む。
頭を丸ごと掴み、引きずって海へ落とす。
落ちた敵は上がってくる気配が無い。
船の縁から下を眺めていると後ろから切りかかってくる殺気を感じたので、剣を海と水平に頭上に掲げれば、ブロックが成立する。
相手も使う剣はカットラスだ。軽く受け止められる。
硬直したところをまた掴み海に引きずり落とせば、登ってくる気配は無い。
ただ、なんとなく、背中がぞわぞわする。
海を覗きこめば、船の下に何かいるような気がする。
残念ながら自分はスキル上殺気しか感じられないが、何か妙な波が立ち、人が落ちるたびに、うねる様子が見える。
再び殺気を感じるが、今度は二つ。
振り向き、確認すれば、右の相手は顔半分がふじつぼで埋まり、左の相手は全身わかめに覆われている。
左の相手は剣を振る手首を掴み、右の相手はブロックするまでも無く、首を突く。
幽霊船の船員の割にはちゃんと急所判定が出る。そのまま急所になりそうな場所を突きまくる。
左の相手が自分を振りほどこうとしているが、蠍のハサミはなかなか外れない。
ようやっと、右の相手が倒れる。どうやらしぶとさは、まあまあみたいだ。
面倒なので、強引に左の相手も海に落とす。
わざわざ生命力を削りきるより手っ取り早い。
こうなると船の縁で、敵を待ち構え、敵を誘っては突き落としていく。