172.海賊の事情
■ 壁陣 ■
<戦陣術>の一つ、兵科【重装兵】が習得できる。
横隊と相性がよく、防御力の上昇、状態異常への耐性上昇、ノックバックの軽減。
と前戦を維持するのに非常に有効な術である。
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捕縛した海賊ボスを連行して【兵舎】に向かう。
この島の【兵士】達は【兵舎】に軟禁されていた。
やはり領主の息子を人質に取られていたようだが、実際は逃げているなどと思っていなかったそうな。
取り合えず島全土を解放する為に【兵士】達が出かけていく。
正規兵なのだから、任せておけば大丈夫だろう。
そして、領主の館で詳しい話を聞くことにする。
「さて、コレで船を出してもらえるって事でいいですかね?」
「すみません、それは出来ません」
「え?何でよ?海賊のせいで、船が出ないって聞いたから手伝ったのに」
「それは海賊がこの島を占拠した事にもつながるのですが、厄介な奴が出たとの事で」
「出た??」
「さっきも言ったが俺達も好き好んで島を占拠したわけじゃない。普段の俺達の仕事は海賊とは言うものの海の魔物を倒し、倒せないものは避け、航路を確保し、通行料をいただく事だ。後は交易なんかもするな」
「じゃあ、何で賊なのよ」
「元々が賊だった事と他所からの賊に対抗する為、宮仕えが嫌いな事、そんな所か」
「ふ~ん、で、何が出たの?」
「幽霊船だ。魔物は出る場所が決まっているか、季節ごとに移動するから、それにあわせた航路の確保で済むが、幽霊船のやつだけは、何の前触れもなく現れて俺達の航路を塞いじまう」
「でも『俺達の海』なら自分で何とかしないと」
「そうは言うが、俺達のような賊でどうにかなる相手じゃない。だから、幽霊船が出た時は都の【兵士】を頼るんだが、なかなか応援が来ないんで、俺達も食い詰めて、こんな次第だ」
「はあ、そういう決め事があるなら、逆に何で【兵士】派遣しないの?」
「別件で、評議会が手を取られているらしいです。何でも魚人島が騒がしいとか、詳しい話は流石に僕では」
「マンボーさんどういう事?」
「詳しい事は言えんが、邪神の尖兵の件だろうな。その件で私も来たのだ。何でも宝剣を持つ者がそろそろ【海国】に来ると言う事だったのでな」
あ~これ完全に自分の関連だ。
「なっ邪神の尖兵??!!スライムが出たと言うのですか!」
「おい!落ち着け!小型の物なら稀に魔素溜まりに出ると言う噂もある。まず詳しい状況をだな」
「うん、皆落ち着いてくれ。それで、邪神の尖兵を倒せないとその幽霊船はどうにかできないの?」
「いや、そんな事はありません。100人率いる者がいれば、討伐に向かえます」
「いや、都なんだから、中隊長位いるでしょ?」
「一度でも倒した事がある者が近づくと不思議と消えてしまうのです。そしてまた離れた場所に現れ、逃げ続けるのです。とは言え、100人率いれる程の階級の者をずっと海上で待機させ、幽霊船避けにするわけにもいかず」
「100人率いれても、幽霊船倒したことが無ければ、いいんですね?」
うん、フラグ立ちまくりじゃん。自分だよな~。
っていうか、幽霊船も自分なら、邪神の尖兵も自分。行かない訳にいかないじゃん。
「分かりました。自分が幽霊船討伐に向かいましょう。しかし操船は出来ませんよ?」
「それに関しては船と【兵士】はこちらでご用意します。戦闘指揮だけ取ってくだされば、結構です」
「海賊に占拠されたばかりですけど、100人も連れ出して大丈夫ですか?」
「おかげ様で、衛兵達が戦力になるので、大丈夫ですよ」
と言う事で、幽霊船と戦う事になったので、準備はお任せする。
そして、時間があるので一旦海岸に行く。海を眺めていると
「悩みか少年」
「マンボーさんに言わなきゃいけない事があります」
そう言って背中の宝剣を抜いて差し出す。
「そうか、少年が宝剣を持つものか」
「ええ、まあ、こっちの任務はあまり大っぴらにするものじゃないので」
「そうか、詳しい話はまたするが、私の住む場所は大陸から遠き海にある魚人島。その奥に存在する世界を管理する一柱と共にあるのが、我らである」
マンボーさんについていけば宝樹に会えるって訳か。
「邪神の尖兵とは自分が戦いますが、一先ず、幽霊船を倒すのを待っていただいても?」
「うむ、あまり放置していいものではないが、慌ててどうにかなるようなものではないのも確かだ」
「もしかして、邪神の尖兵って、スライムから形変化してます?」
「私がこちらに来る時には魚型になって泳いでいたな」
「水中戦ですか・・・」
「よし、こうなったら時間が惜しい!泳ぐとしよう。少しでも泳ぎが巧みになれば、それだけで戦いやすくなる筈だ!」
「え?今からですか?」
「その通りだ。例え海が許しても、私は母なる海を汚すものを許さない!少年もそうだろう!目を見れば分かる!さあ!いくぞ!」
そう言って、海に思い切り投げ込まれる。今回は随分と高く投げ上げられ、頭から海に落ちれば、一気に水中深くに沈んでいく。
まあ、まずは幽霊船退治。船を用意するって言うことは海上戦か。