171.海賊討伐LAST
■ 後詰 ■
<戦陣術>の一つではあるが、隊形による補正が無い。
前列と後列の入れ替えが可能であり、また入れ替えと同時に攻撃する術である。
効果としては隊列変更であり、ステータスの補正と言うよりは
<戦陣術>を使用した集団戦の隙を無くし、連携を高める術と言える。
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町二つの占拠はあっという間だった。
流石に25人ずつ装備を整えて動かせば、十分すぎた。
一つの町では片手斧、鈍器と利器、両方の性質を持つ武器だ。そして回復液だ。
もう一つの町では毒薬と麻痺薬だ。相手に投げつけるような武器に塗ったりするらしいので、弓使い達に持たせる。
そして60人、街とは言えども圧倒してしまった。一応自分も付いていったが、何もすることが無い。
そして、一つの街では長槍。コレは両手で扱う専用の武器だ。そして衛兵用長槍術 一斉突撃
もう一つの街ではチェインメイル。言わずもがなの防具だ。そして衛兵用共通術 奮闘
そして、装備を資金いっぱいまで整える。都奪還の為の構成はこうなった。
中盾+片手斧+チェインメイル+グローブ+ブーツ+回復丸+回復液+解毒丸+解痺丸 20人
小盾+短槍+チェインメイル+グローブ+ブーツ+回復丸+回復液+解毒丸+解痺丸 20人
小盾+片手斧+チェインメイル+グローブ+ブーツ+回復丸+回復液+解毒丸+解痺丸 20人
長槍+チェインメイル+グローブ+ブーツ+回復丸+回復液+解毒丸+解痺丸+癒丸薬 20人
弓+チェインメイル+グローブ+ブーツ+回復丸+回復液+解毒丸+解痺丸+癒丸薬+毒薬+麻痺薬 20人
こんなところだ。ちなみに短槍持ちは最後に仲間になった衛兵なので、カットラスを腰に差していない。つまりちょっと弱めだ。
にしても、装備品だけならいっぱしじゃなかろうか、自分が最初の頃なんて支給品の防具だけだったものだが。
何はともあれ、都の門を落としにかかる。
相手は街のボス級。指揮官1人と20人の海賊。
対してこっちは100人。圧倒的である。
わっ!と囲んでお終いである。一応20人の経験の低い衛兵に出来るだけ譲るように動かしたが、一瞬過ぎた。
そして、門が開き、さあ入って巡回潰しかと思っていたら、海賊がぞろぞろと出てくる。
そして一人の海賊が話しかけてくる。多分ボスだろう。
赤い羽根の刺さった帽子、羽の根元には宝石が輝いている。コートやズボンも綺麗な柄の織物である。
内着もシルクの様な光沢を放つシャツに大振りのネックレス。十字架ではないがロザリオに似た雰囲気をかもし出している。
「お前さんが近隣の街を解放している者か、流石にこの人数でやりあったら、住民に被害も出かねない。外で決着を付けよう」
「そりゃあ、ありがたい提案だけど。そこまで人の事考えられるのに、何で占拠したの?」
「食っていく為だってうちの連中は言ってなかったか?」
「言ってたけど、その為に領主さんは評議会に出向いてるんじゃないの?」
「俺達にも限界はあるからな。今しかなかったんだよ」
「何があったのさ?」
「それは俺達の面子に関わる問題だ。悪いが余所者に言える様な事じゃないな」
「じゃあ、勝ったらと言う事で」
「いいぜ、負ければ面子も何も無いからな」
そう言って、門の前で別れ、向かい合う。
中盾隊を最前に小盾短槍隊、長槍隊、小盾片手斧隊、弓隊の順で5列横隊を作る。
相手の布陣は海賊ボスを一番後列に楔形陣形を組んでいる。
相手有利な部分としては20人長が5人組み込まれている。
対してこちらは自分しか指揮官はいないので、一人で全体を見る必要がある。
そして、双方準備できたところで、ぶつかり合う
「この一戦で決まるぞ、気を抜くな『行くぞ!』」
戦陣術 激励
戦陣術 方陣
自分は基本に忠実にスタートを切る。
相手は一斉に突撃してくるが、なかなかに足が速い。こちらはチェインメイル装備にしてから、少々足が遅くなっている。
もし堪えられないと混戦になる可能性があるので、先制の一撃をくれてやる事にする。
「弓隊!毒薬と一斉射撃だ!」
衛兵用弓術 一斉射撃
毒に浸された矢を抜き、そして全一斉に呼吸を合わせ、矢が飛ぶ。タイミングを合わせる事で、密度が上がり、食らう相手がちらほらでる。
敵の中ほどに着弾し、最前はぶつかり合いが始まる。
勢いはあったが、続く者がいないせいで、圧力が溜まらず、中盾隊は維持できている。
逆にこちらが密度を上げ2列目の短槍隊を中盾隊に密着させ、隙間から攻撃を開始させる。
うん、押してる。こちらはほとんど動いてないが、状況は有利だ。
「弓隊!麻痺薬と一斉射撃だ!」
衛兵用弓術 一斉射撃
敵後列が徐々に詰まってきたところに、今度は麻痺矢を浴びせる。
敵が回復に力を割いている内にどんどんせめて行きたい。
「うし、このまま押す!長槍隊準備しろ『行くぞ!』」
戦陣術 激励
戦陣術 後詰
衛兵用長槍術 一斉突撃
中列にいた長槍隊を前線に出しつつ、そのまま攻撃を仕掛ける。
両手で真っ直ぐ相手に槍を向けたまま走り出す長槍隊。いかんせん装備が重くて足はやや遅いのだが、集団で槍で突かれれば相当なダメージが出るだろう。
「あまい!投網だ!いけ!」
敵指揮官が指示を出すと空中で網が広がり、長槍隊が絡めとられる。
ほとんど不発に終わった。
敵味方の中央に投網に囚われ蠢く長槍隊。
仕方ないので、左に中盾隊・短槍隊、右に小盾片手斧隊、中央に弓隊を配置して、弓隊で長槍隊の上を通して攻撃を開始する。
しかし、相手もこちらの動きを察して、左右に分ける。
序盤押していた分が、長槍隊を行動不能にされて、イーブンになった。
相手は近距離の剣使いばかり、
隊列組めばこっちの方が有利だが、混戦になれば相手のほうが有利か。
戦陣術 戦線維持
一先ず、コレだろう。柔軟に対応していくしかない。
左翼は中盾隊で、押し込まれないように支えつつ、短槍隊でちくちく粘る。
問題は右翼だ。徐々に混戦状態に飲まれていく。
剣に対してダメージは多いが振りが遅く、しかも相手は軽装なので避けられる。つまり完全に不利
弓隊に関しても中央は最早狙える相手がほとんどいないため、機能しない。
となれば、やることは一つだ。
弓隊を右翼に合流させる。
「右翼は武器を捨てろ!混戦に入るぞ!」
衛兵用共通術 奮闘
右翼の兵たちは一斉に武器と盾を捨て、腰のカットラスを引き抜く。
そして、海賊たちとぎりぎり膠着状態を保てるようになる。
防御力のある衛兵、すばやさのある海賊、武器性能は変わらず。一進一退だ。
両翼のバランスを何とか保ったところで、敵ボスがいつの間にか長槍隊を飛び越え自分に向かって歩いてくる。
「うん、このままだとお互いジリ貧だろう。俺たちで決めないか?」
「已む無しだね」
半身で構え、腰から細身のサーベルを引き抜き、軽く左右に振り、自分の喉に向けぴたっと止まる剣先。
自分も半身だが相手とは逆に剣を持つ手を後ろに引き、剣を持っていない手はいつでも相手の剣をつかめるように軽く開きのどの前に構え、元々抜いていた剣を腰の辺りに構え、いつでも一息で突ける様に体を緩める。
相手の剣を持つ手の肘が内に捻じられる様子に、螺旋状の振りで斬りつけてくるイメージがうまれ、そのイメージに従い、
すぐさま、剣を突き出し、螺旋の内側に差し込む。
お互いの剣がぶつかり合い、螺旋を巻いている分横から打ってきた相手に剣を弾かれる形になる。
だが、弾かれつつも、肘を折る事で、次の攻撃の溜めを作る。
相手は逆に自分の剣にぶつかった反動を使い、逆水平に斬りつけてくる。
隙の無い切り返しに、ギリギリ剣を頭上に引く様にたて、相手の剣を受ける。
剣先を肩で支えて、受け止めれば、ブロックが成立し、相手が硬直する。
すぐさま突きたい所だが、相手は腕を伸ばしきり、剣をこちらに突きつけている体勢だ。
つまり懐が深い。突くよりも次の攻撃に繋がる動きをしようと、剣を左手に持ち替える。
持ち替えながら、出来るだけ懐に入ると、硬直が解け、バックステップで、逃げる相手。
逃げながら、今度は大振りに剣を払ってくる。
身を縮め剣を避け、頭上を通り抜ける相手の剣。
そのまま、相手の着地に合わせて首を突けば、体を半回転しギリギリかわされる。
そして、お互いの剣の間合いよりも近い超接近状態。
空いた右手で、相手のやはり空いている左手を掴む。
吸う右手
相手は引いた剣で、こちらを強引に突いてこようとするが、剣を割り込ませ滑らせ、突ききった腕に自分の剣を持った腕を絡め、動けなくする。
接近同士で、お互いうまく力を入れられない状態で、相手が急に頭を引く。
そして、その体勢で、溜めたと思ったら、頭突きを入れてくる。
冑の上からだったが、ノックバックがあるのか、絡めていた左手が、離れる。
掴んでいた右手はまだ掴み続けている。
そのままの状態で、急に剣を捨てる相手。懐に手を伸ばし、大振りのナイフを引き抜く。
一瞬遅れて、自分も剣を捨て、ダガーを引き抜く。
超接近状態での突き合い、お互いぎりぎりの間合いで、剣先をぶつけ絡め、刺されないように耐える。
しかし、ダガーの戦闘では相手に一日の長があったのか、ダガーをはね飛ばされる。
そして、トドメとばかりに、思い切って突いてくる相手。
自分は即座に右手を離し、後ろに飛ぶ。
追いかけるように、突きこんでくる相手。
突き放すように相手の顔に左手の平を向け、
吐き出す左手
熱閃が相手の顔を焼く。
視力を失った相手の後ろに回り、剣を拾い、後ろから心臓を突き刺す。
そのまま、急所を突き、倒しきる。
海賊ボスが捕縛状態となったことで、戦闘が終了する。