165.マンボー
■ <水泳> ■
そのまま泳ぐ為のスキル。
障害を越える為の移動スキルの一種である。
アビリティによって
潜水- 潜る能力の強化
泳力- 泳げる距離の強化
速力- 泳ぐ早さの強化
となっている。
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「海はいいな。海は好きか?」と突然に話しかけられたので、
「ええ、まあ」とあいまいに答えるほか無かった。
そして、
「悩み事か?少年」と隣に立つ人影
「いや、少年って歳じゃないですけど」
「うむ、言いたい事は分かる。だがな、母なる海の前では皆少年なのだ。どんなに自分が一人前だと気を張っていても、何かあれば、海に戻って来てしまう。
そしてそんな少年を海は拒絶することは無い。どんな罪も苦しみも悲しみも受け入れてくれる。
何故なら母だからだ」
ん~もやっとするが、よっぽど海が好きな人なんだなと、ちょっと顔を窺って見れば、二足歩行の鯨だ。
ひげは無いので、ハクジラだろうか?黒いハクジラが、遠い眼で海を見ている。
そして話は続く
「私も幼い頃には『魚類の中に哺乳類が一人!』などと言われたものさ。当人たちはちょっと冗談のつもりだったのだろうが、私は深く傷ついたものだ」
「それはお辛かったでしょうね」
「分かるか・・・それでも今の私があるのは母なる海のおかげだ。海は哺乳類だろうと魚類だろうと爬虫類だろうと受け入れてくれる。そう、海の中では皆平等なのだ。さあ、悩みを打ち明けたまえ」
「いや、悩みというほどの物は無いのですが」
「無理しなくて良い、私も同じ哺乳類だ。分かるぞ、その瞳に秘めた悲しみを、な」
「そう言われましても」
「そうか、そうだな名前も知らぬ相手にいきなり悩みなぞ、打ち明けられるものではないな。
私の名は『マンボー』」
え?マンボー???鯨じゃない???
「見ての通り、鯨の魚人である」
うん、鯨なのね。鯨なのに魚人とはコレ如何に?でも聞いたら哺乳類いじめなので、聞かないが。
「自分は・・・」
「少年よ!大いに苦しむと良い、悲しむと良い、そしてその全てを海にぶつけるが良い。もし、私が力になれることなら、力になろうじゃないか。同じ海を愛する哺乳類として!」
熱いな~いい人で間違いないんだろうがな~。
「じゃあ、一個だけ相談してもいいですか?」
「ああ、話してくれる気になったか、何でも相談するといい」
「海賊が出たらしくて【海国】に渡れないんですよね」
「なるほどな、話には聞いていたが、彼の者達も海を愛する者と聞いていたし、ちょっとした小競り合いかと思っていたが、まさかこんな場所で傷つく少年に出会うとは」
上を向くマンボーさん、涙を堪えているのだろうか。
「まあ、任務と【砂国】の荷物を届けるのとやる事があるので、悩んでいるといえば悩んでますね」
「な、そうか!使命を帯びた少年だったのだな。なれば、力にならない理由が無い」
これはもしかして、船を貸してくれるとか、一緒に海賊退治してくれるフラグか?
「ならば、話は決まった【海国】まで泳ぐとしようじゃないか!」
お・よ・ぐ?
「いや、ちょっと遠く無いですか?」
「任せるが良い!この辺りの島は大体把握している。さらに我ら魚人に泳ぎを習えば、どんどん泳ぎが得意になるぞ!」
「なにか、もうちょっと方法がある気がするんですよね~。輸送隊まで泳がせるわけにも行かないし」
「ならば、少年が泳いで【海国】に渡って、輸送隊を迎えにくればよい!」
「ああ、それはいい方法ですね!ちょっとポータルで行ってきます!」
さっと逃げようとした瞬間に肩を掴まれる。
「少年!少年の腕は何のために付いている?」
「何のためって・・・」
「そう!水をかく為!泳ぐ為だ!さあ行こう母なる海の身の内へ!己が根源に触れ、生まれ変わろうじゃないか!」
そう言って放り投げられた。
結構な勢いで鋭角に投げられ、水を切る事三回。海に落下。
服のおかげで泳ぎは可能なので、水面から顔を出して岸を向いて言う。
「分かりました。泳ぐので<水泳>付けてきていいですか?」
「いいぞ!」とサムズアップするマンボーさん。
逃げることも考えたが、まあ、いいかという気にもなったので、【教会】で<水泳>をつけて戻る。
因みにマンボーさんは武器に槍を持ち、革か甲殻の装備を身につけている。足は出ているし、サンダル風の靴だが、服のまま泳ぐようだ。
「さあ、まずはウォーミングアップだ」
脚がつらないように準備運動でもするのかと思えば、速攻海に入る。
「準備運動は?」
「何を言っているんだ?水の中は体を動かすには大変だが、膝などの負担は水の中の方が軽いから、水の中の方が怪我はしづらいぞ」
「そんなもんですか、じゃあ、泳ぎますか?」
「そうだな。だがその前にどれくらい潜れるのか見せてもらおうか!<水泳>を育てれば、潜るのもうまくなるからな」
と言われるので、海の底まで潜る。まだ浅瀬だ。すぐに海底に着いて、砂の底面を触る。
すると、急に手を噛み付かれ、驚いて軽くパニックに陥ってしまう。
だが、マンボーさんがすぐに槍で自分に噛み付いた何かに突き刺すと何か偏平な座布団のような物が、砂地に落ちる。
落ち着いて<採集>すれば、カレイだった。魚は何故か<採集>するだけで、切り身が手に入る。
また、バッグが埋まりそうだ。