163.第1機関長
■ 第1機関 ■
【教国】は12の機関によって運営されている。
その中でも酒類を管理している機関となる。
祭事に必要となる重要な物資の為、独立した機関となっているが、
実際には揉め事になりやすい物資を管理している部署であり、
腕力に物を言わせるような機関に対しても毅然とした態度を取れる者しか機関長になることは出来ない
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「よう、うちの連中はどうだった?」
「いや、皆何かまじめないい人でしたよ。ただあの階は初めてだったみたいですけど」
「そうだな。資格のある者が行かないとあいつは現れないからな。食人鬼のみの階にしかならん」
「ほ~ところで、何か拾った錆びた武器とかアクセサリーとかこれ、どうします?」
「ああ、それは過去の神官やこの国の者の装備だな。そこまで朽ちてしまったら、装備としての価値は無いだろうから、こちらで受け取ろう。多少だが報償も出る」
そういうので、ごそっと渡す。
「おっこの杖なんかはそれなりの金額出るぞ。あの階の物だろう?」
「ええまあ、でもアレですよね、武器としての価値は無いってなら【教国】での弔いの為のそういうやつですよね?」
「まあ、物によっては歴史的価値って意味も有るがな」
「ああ、じゃあ、別に自分はお金余ってるんで一緒に行ってくれた【兵士】達の給金にでも上乗せしてくださいよ。もしくは寄付で」
「おいおいおい、どんだけ慈悲深いんだよ。まあ、お前さんがそういうならそれで構わないが、しかしまあ、これから同僚になるかもしれない奴が、俺と同じで鉄血畑の人間で、しかも慈悲深いと来れば、歓迎する気持ちしか湧かないな」
なんか、空を仰ぎながらこんな事言うのだが、この国好感度上がりやすすぎじゃない?
「ところで、二つ程聞きたいんですがね」
「ああ、何でも聞くといい、蛇の件なら俺も良く分からんぞ、何故か復活するんだ。この国にも伝説はあるが、今のところ気配すらないな」
「じゃあ、一個でいいです。世界樹の跡って見てもいいですか?今の自分の任務それ関連なんで、でもそれなりの立場の人じゃないと相談できない事かと思ったんで」
「ん~、世界樹の跡地の大穴な~。元々外から見る分にはただの聖地でありつつ、観光地でもあったんだがな。隠しようが無い大穴だからな。ただここ最近第12機関の連中が封鎖しててな~」
「第12機関は何の機関で?」
「開発だな。対邪神兵器やなんかの開発局だ」
きな臭いわ~なんか行きたくね~
「それよりもお前さんならアレだろ第1機関の方が楽しいんじゃないか?俺が他所で用事があったらそっちが来るはずだったんだ」
「第1機関ですか?なんか一番偉そうなんで、出来れば嫌なんですけど」
「いや、そんな事無いぞ、酒関連だ。酒ばっかりは本当揉めるからな~」
「宗教的にお酒飲んじゃ駄目とかそんな事無いんですね?」
「何でだ?神が与えてくれた恵みに駄目も何も無いだろう?お前さんが各国巡りながら、酒の収集してるのは噂になってるぞ」
「どこからそんな噂が漏れるんですか。まあ好きで飲んでるだけですけど」
「そりゃあ、各国にうちの者がいるんだから、噂はいくらでも入ってくるし、しかもちょっと尋常じゃない量動かしてるんだろ?そりゃあ、金も余るわな!HAHAHAHA!別に責めてるわけじゃないぞ!そもそも輸送できる奴が少ないのが問題なんだ。邪神の動きも活発になってきてるしな~」
「まあ、でもそんな機関があるならきっとこの国にも銘酒があるって事なんでしょうね」
「よしっ、行くか!お前さんに便乗させてもらおう」
うん、まあ、いいか!きな臭い事も浮世の苦しみも酒さえあれば全部解決だ!
アル中の発想だと思うかもしれないが、自分は兎に角楽しそうにお酒を飲む事を信条としている。
何故なら幼い頃お酒を楽しそうに飲んでる大人を見て、自分もいつか飲みたいなとずっと思っていたからだ。
はっきり言って大分しょうも無い話だが、でも不景気だ災害だと何かといえば嫌なニュースがあっても、大人たちは夜にはお酒を飲んで楽しそうにしているのだ。
大人が楽しそうにしてないで、どうやって未来に希望を持てというのだろうか?
まあ、何であれ、自分はお酒を飲むぞ!
というわけで、機関長と連れ立って、都外縁のブドウ畑まで来る。
そして、そこには石造りの砦というか城というか、堅牢な建物がある。
「ああ、驚いたか?昔ブドウが不作だった時の名残でな。神事に欠かせない酒を最低限しか造れなくてな。まあ暴動があったらしいんだわ」
「よくそれで、お酒禁止の戒律が作られなかったですね」
「戒律はあるけど、要は程ほどに飲めよってやつだ。ちゃんと働いて程ほどに飲めよと、いつもいつも酒に溺れて酔っ払ったままじゃ駄目だぞってなもんだ」
「まあ、一仕事するからさて飲むかって言う気持ちと満足感があるもんですからね」
「そういうこったな!おう!客人連れてきたぞ!」
と、もう何の遠慮も無く砦に入って行き、中で働いているやや気難しげだが、小さな丸眼鏡をかけエプロンをした男性に話しかける。
畑の中の醸造所?の割に綺麗にしている辺り、神経質なのだろうが、多分品質に妥協も無さそうな雰囲気に自分の気持ちは高鳴る。
「ふう、連れてきたぞ!じゃないですよ全く、まあでもよく連れてきてくれましたね。私が第1機関の長です。気負わなくていいですよ。もう本当にあなたの持っている各国の貴重なお酒を供出してくれれば、それでいいのです、ふふふふふ」
「おいおい、他所の酒は俺も飲みたいけどよ。ただ出せなんてそれは許せないだろうよ」
「当然です!幸い今年は中々いい出来ですからね、私のほうからも出しますし、何なら買い付けてくださっても結構ですよ」
「他所のっていっても、大した量はないですよ。量があるのは【砂国】の最奥の町で買ったアラック位ですかね?」
自分のその言葉に表情が引きつる第1機関長
「ふ、ふう、ちょっと落ち着きましょう。その最奥の町というのは蜃気楼の街と呼ばれる場所ではないですよね?」
「いや、その街ですね。都で買えなかったのでそっちで買い付けまして、バッグに入るだけ買ってますけど」
「な、な、な、分かりました。いたしかたありません。幻の街と呼ばれるあの街の銘酒を出されてしまっては、金に糸目はつけられないですね。いい値で買いましょう」
なんか不穏な事を言い始めるが、別に自分はそんな外道をするつもりも無い。
「いや、適正価格でいいですよ。自分で飲んだり贈答用は残しますし」
「何という、何という慈悲!!」
唐突に天を仰ぎ始める第1機関長。だからこの国好感度上がるの早すぎるだろう。
そうしてサクサクと売買交渉をし、お金貰いすぎてもあれなので、一部は【教国】のぶどう酒にしてもらう。
そして・・・
「神の恵みに感謝してカンパーイ!」
そんなんでいいんだ?と思わないでもいいが、3人で酒盛りを始める。ここにいるうちの二人が機関長なんだが【教国】それでいいんだ?
ちなみにワインのあては鴨の赤ワイン煮
別に戒律で肉食を禁じられてる訳でもないらしいので、アイテムバッグを圧迫するジビエから鴨を取り出し、
皮目に切れ込みを入れて塩を振って焼き、適当な香草と食べやすいサイズに切った鴨を突っ込む。
煮込む出汁はスープの青瓶と隠し味に蜂蜜を少々、後はワイン。
今日も楽しくお酒が飲めそうだ。