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162.死祭 

 ■ 死祭(ガダベルパーストル) ■


 【教国】の上級神官の死体が魔物化したもの

 補助術を得意とし、使役する動物死体の魔物を媒介に様々な攻撃手段で、襲ってくる。

 本体となる上級神官を攻撃しなければ、埒が明かないが、動物死体の魔物の上に陣取っている為、

 なかなか勝負をつけることは難しいだろう。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////



 はじめに地上に現れたのは、ボロボロだがかつては立派だったであろうローブを着た死体。身長は自分達と変わらない程度だ。


 這い出すと言うよりは直立不動で、土の中からぽこっと出てきた。


 しかし、土はそのまま盛り上がり、天井ギリギリまで上がりきり、見上げるほどの高さになると、盛り上がった土が滑り落ちていく。


 すると黒いブヨブヨとした塊から、黒いロバ、犬、猫、鶏の頭が不規則に突き出し、生気の無い白く濁った目で、それぞれに周りを見ている。


 足はそれぞれの動物の物が下のほうから適当に生え巨体を支えている。


 その黒いぶよぶよの上に立ち、どこを見ているか分からない、ローブの死体。


 見ようによっては動物たちの体が溶け合っているようにも見える。


 何をきっかけとしたかは分からないが、動物の首が一斉に仰け反る。


 そして、一斉にそれぞれの動物の鳴き声が発せられるが、どこか絞り出すような悲鳴にも聞こえる。


 「はじめるか『行くぞ!』」


戦陣術 激励


 士気低下攻撃を中和する。


 姿が姿だけに攻撃手段が読めない。


 「一先ず、5列横隊で行こうか」


 20人づつ5列に並びなおす。


 しかし、先の戦闘で既に何人か欠けてしまっている為、後列は人数が少ない。


 今までの戦闘で【教国】【兵士】の特徴は掴んだ。皆同じ装備ゆえポジションの代わりがきいて、尚且つ防御力と回復力による粘り強さがある。じっくりやれば事故は無いかと思いつつ警戒する。


 次はローブを着た死体が、右手に持った杖で黒い塊を殴ると、黒い飛沫が飛び散る。


 すると鶏が一声「コケー!!!」と鳴き、折角明るくなったホールがまた薄暗くなる。


 そして、ズシッズシッと重量を感じさせる足取りで、近づいてくる。


 これは、足を潰して動きを止めるべきか?


 と、足が絡み転ぶ黒い塊、そのまま転がり、前線を押し潰す。


 そして、自分は見てしまった。ゴロゴロと転がる黒い塊の上を器用に走って玉乗りするローブの死体。


戦陣術 方陣


 一瞬遅れたが、攻防を高めて攻撃を開始する。


 前線で潰された者達はすぐに下げ、回復させるが、数人は即戦闘不能になってしまった。


 黒い塊から生えた動物達の首がずるずると位置を変え、ロバは逆さまのままその長い首で地面に頭をぶつけるように、振り、地震をおこし足止めしてくる。


 犬は首から黒い紐が生え塊につながり、頭だけで、噛み付いてくる。近距離だとかなり大きい頭が、【兵士】の上半身を咥え、振り回し、噛み潰し、戦闘不能にしていく。


 猫は「にゃあ、にゃあ」鳴いている。


 鶏は寝ている。


 兎にも角にも直接的な攻撃は限られている為、避けながら攻撃を加えていく。


 しかし、時折ローブの死体が杖を掲げると黒い光が黒い塊に降り注ぎ、ダメージを修復しているように見える。


 さらに攻撃を回避する為に徐々に横隊が崩れていく。


戦陣術 戦線維持


 一旦隊形の関係ない術を使用する。


 そして、ローブの死体も動き出す。杖の石突を黒い塊に突き刺し、なにやら術を送り込む。


 すると猫の目が光り、口から黒い塊が、吐き出される。


 しかし、勢いも何も無い。黒い軽そうな塊。


 ふわふわと転がるので、避けていると自然と止まり、空気の抜けたような音と共に爆発する。


 ふわふわと舞う何かの黒い繊維が降り注ぐ、


 そして、徐々に動きが悪くなる【兵士】達、そして自分も体が重くだるくなってくる。


 どうやら衰弱が出ているようだ。だが効果には個人差があるらしく、ダメージを食らうものや震えている者、動かないものもいる。


 広域ランダムデバフという所だろうか。


 「状態異常回復は、何か方法ある?」


 「ありますが我々の術では全ての異常に効くわけではないので、症状にあわせた術の選択が必要になります」


 「分かった。とにかくこのままじゃどうしようもないから、どんどん治していこう」


 最初に自分を治してもらい、噛み付いてくる犬に対応する事にする。ロバの起こす地震が自分の動きを邪魔してくるが、タイミングを覚えれば、何とかなる。


 口を大きく開けてくる犬。咥えられれば、戦闘不能の可能性が高い為、噛み付かれるタイミングで、ジャンプし、鼻スジに剣を突き立てる。


 すると犬は嫌がり、暴れだす。


 自分は剣を突き刺したまま持ち振り回される。


 自分を叩きつけるでもなく、闇雲に振り回した挙句、上に振り上げられ、剣が抜けてしまう。


 剣を掴んでいた自分もそのまま上空に投げ出され、ローブの死体の真上に落ちていくと


 杖で突いてくるローブの死体。


 しかし、空中でも術士の突きはブロックする。空中ゆえに足場もなく押し戻されるが、ブーツに精神力を込め、もう一度ジャンプし、


 今度は自分から能動的に切りかかる。


 ローブの死体のブロックは間に合わず、一太刀浴びせるとローブが裂ける。


 ローブの中には別の死体の顔がいくつも蠢き瞳孔の無い目で恨めしげにこちらを見ている。


 足場の少ない黒い塊の上で、超至近距離戦となったが、こっちは近接戦闘職、相手は術士


 結果は明らかである。


 そして、ローブの死体の意識を自分に集中していた所為かいつの間にか回復を完了した【兵士】達が、丸く綺麗な円状に取り囲んでいる。


法陣術 サンクチュアリ


 円の内側に柱のような光が立ち登る。


 苦悶の声で鳴き始める動物達、そしてローブの死体とその胴体にくっつくいくつもの顔


 ここぞとばかりに、ローブの死体を滅多切りにすると胸部から魔石を露出するので、そのまま破壊する。


 黒い塊はずるずると溶け崩れ、落っこちる自分。


 ローブの死体は古びた杖をドロップする。


 いつものファンファーレが鳴ると


クエスト発見者

ラストアタック


 の二つだ。一つはいつものメダルが手の上でスゥッと消えていく。


 もう一つは、とぼけた顔の黒い鶏の人形


 普段は鑑定してもらってから、いじるのだが、何となく本当に無意識で人形のお腹の所を押すと、間の抜けた「ぐぅぅわぁぁ」という音が想像以上に大きく鳴り響く。


 今回は運とイケメン達に大分助けられ、思った以上にすんなり倒せてしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ソヘイラ様に続き強NPCの援護が続くのは仕様なのかそれとも隊長の行いのおかげなのか
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