161.食人鬼
■ 法術 ■
本ゲームでは創世神を神と称するが、その神の力を借りる術とされている。
主に回復を得意とし、支援術士として重宝されるだろう。
回復手段として最も優れていると言って過言ではない。
また、魔物化した死体に特効の術を使用可能である。
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レギオンボス用としか言い様の無い大広間
床は土で、今のところ魔物の一体も見えないのは、つまりそういうことだろう。
広間に入り準備が整えば、そこらじゅうの土がボコボコと盛り上がり始める。
今まで、腐った死体、半透明の人、包帯男と来たのだから、もう後はアレでしょ!骨でしょ!と心の準備をして、土から出てくるのを待つと。
腐って無い人が這い出してきた。
頭髪は無く、肌は血の気が無く真っ白、目も真っ白で、瞳孔が無い。
そこらじゅうから同様の人が現れ、みっちりと囲まれる。
「『行くぞ!』」
戦陣術 激励
一先ず士気を上げ、様子を見ていると、一斉に飛び掛ってくる敵
そして、噛み付いてくる。
ちょっとでも露出している部分は噛み千切られ、【兵士】達に動揺が走る。
戦陣術 戦線維持
一先ず防御力をあげてみる。
「くっ、話に聞いていましたが、この階の者達の圧力は一筋縄では行きませんね」
「話にってことは、ここに来るの初めてだったんだ?どんな風に聞いてる?」
「ここでは大量の食人鬼が現れると、闇雲に襲ってくるのではなく、食欲という本能のみに従って、非常に能動的に襲い掛かってくると」
「んで、死んでるから、死ぬ事も恐れずに自分達を食べる事のみしか考えてないと」
確かに動きは何を考えてるわけでもなく、ただ、群がってくる。斬られても殴られても構わず、仲間を踏みにじろうと生身の部分に向かって噛み付いてくる。
あまりの圧力に陣形を組み替えられる気がしない。
「なにか、打開策ってある?」
「それでは、使わせてもらいます」
法術 ライトシフト
薄暗かった地下に光が満ちる。光源は分からない。
そして、光を浴びた食人鬼達は動きが鈍り始める。
そのまま、食人鬼を振り払い始める【兵士】達
「よし、そしたら横隊に組もう。前線にいてダメージを多く食らったものは内側に!」
そうして、大よそ四角く組んだところで、
戦陣術 方陣
群がってくる敵にはやっぱりこれが安定する。
因みに今回の【兵士】達の構成はフルプレートのイケメンである。
皆細身の剣を持ったイケメンである。
槍も鈍器も弓も持たないイケメンである。
もう、特徴と言えば綺麗過ぎる顔面位だもの。
何というか、さっきの光と方陣だけで、かなり余裕が出てきた。
皆同じ構成だけあって、前後入れ替わっても戦闘力は変わらず安定するし、剣に光を纏わせれば、それだけで、特効だもの。
しかもダメージを受けても、法術はどうやら回復が得意のようで、あっという間に回復して戦線に戻れるので、そりゃあ余裕も出るだろう。
うん、今までで一番楽かもしれん。
大分食人鬼が減ってきたかなと思うとフロアの奥のほうで、二箇所土が大きく盛り上がる。
這い出してくるのは腰巻一枚の半裸の鬼
身長は自分より頭3つは大きく、筋肉が異常なほど発達している。
そして、地下墓地の他の魔物と違う事が一つ。武器を持っている。
太い木の棍棒だ。手元から先に掛けて徐々に太くなっている無骨な棍棒。
「ぐぅぉおん」と二体同時に叫び始める。
相手の様子を見ていて一瞬遅れたが、「『行くぞ!』」
戦陣術 激励
士気低下攻撃を間一髪で中和する。
そして、ずんずんと向かってきて、方陣の端の【兵士】を一撃で殴り飛ばす。
どうやら殴るだけで、強いノックバックがあるのだろう。
さらに斬りかかった【兵士】の剣を筋肉で受けとめ、そのまま頭に噛み付けば、それだけで戦闘不能になる【兵士】
一体は自分が受け持つしかないかと、前線に出て片方の筋肉食人鬼に向き合うと。
「隊長殿危険です私の後ろに!!」
と自分の前に割り込んでくる【兵士】
しかし、軽々と振られる棍棒に、あっという間に吹き飛ばされ、
「ああああぁぁ」という声だけ残して飛んでいく。
そして、次から次へと割り込んできて、叫び声だけ残して、飛んでいく。
もうきりが無いので、自分が棍棒を受ける。
ずしっとくる衝撃に一瞬体が止まるが、相手も硬直がかかり、お返しとばかりに切り返す。
筋肉に刃を取られない様に表面を切り裂いていく。
自分が一撃受け止めた事で、割り込んでくる【兵士】はいなくなったが、後ろを振り返る余裕が無いので、状況がよめない。
「隊長殿受け取ってください」
法術 ホーリーブレス
自分の剣に光が宿る。
そして、目に見えてダメージ量が増える筋肉食人鬼。
一撃耐え、一撃入れる。ブロックの上から入るダメージもそれなりの物だが、これでもかという程、回復支援が、入ってくるので、ずっと生命力が満タンである。
少々時間はかかったが、一体倒しきる。
そして、周りの様子を見ると何とか、もう一体も抑えているようだ。
吹っ飛ばされた【兵士】も走って戻ってきてすぐに戦列に戻る。
とにかくフルプレートの防御力と法術の回復による粘っこい戦い方だ。
キライじゃない。
ただのイケメンじゃなかった。みんな必死で戦う泥臭いイケメンだ。
自分がもう一体の前に立てば、皆後ろから自分に支援術で後押ししてくれる。
乙女ゲーに迷い込んだんじゃないかと言うような、違和感はもう無い。
今皆一体になって戦っている。そんな気持ちに浸りながらもう一体倒しきる。
すると部屋の中央の土が、今までで一番大きく盛り上がる。