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160.地下墓地

 ■ 浄化 ■


 魔物化した死者を倒す場合、浄化と称する場合がある。

 死体であっても魔素によって魔化した存在である為、倒すことは本ゲーム内の世界観において倫理的に問題はない。


 寧ろ、普通に魔物を倒す事となんら変わりはない。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 というわけで地下に潜っている。


 【教国】では、地下墓地が戦闘用のフィールドになっているようだ。


 しかし、変な話を聞いてしまったおかげで、地下墓地に行くのが憂鬱になってしまった。 


 もちろんゲーム上の設定なのは分かっているし、普段はなんとも無いんだが、ゾンビの背景が分かってしまうとそれをもう一度殺すってのは、なんかしんどい。


 「あの、やっぱりやめておきません?死者をもう一度殺すなんて」


 「隊長殿はお優しいですね。しかし魂を失った者が、魔素によって魔物化し肉体を弄ばれていると思えば、浄化して差し上げるのが慈悲であると、我々はそう考えております」


 悩ましげな表情で語る金髪の青年。まさに白皙の貴公子とでも言ったところか、第7機関長に付けてもらった副官はちょっとイケメンすぎるというか、乙女ゲーにでも出てきそうな風貌だ。


 別に乙女ゲーに偏見があるわけではないが、このゲームはじめてから地味でいかついおっさんばかりに囲まれてきた自分には、ちょっと眩しすぎる。


 キラキラとしたエフェクトが出ない事が逆に不自然にすら感じられるほどだ。


 因みに後ろに続く【兵士】達も何故かイケメンぞろいだ。自分が知ってるゲームとなんか違う!


 嗚呼、でもルークもイケメンていうか可愛い系だったし、こういうデザインもあるのか・・・極端だろ【教国】


 「死者の浄化ってことですけど、初めてなので注意点とかありますか?」


 「ご安心ください。隊長殿には指一本触れさせませんよ」


 白い歯を見せ、微笑むイケメン。台詞も格好いいが、自分はいつヒロインになった?


 地下を行けば、長い白い階段。


 最初のフロアには土とずっと並ぶ墓。


 警戒して、進んでいるとついに現れるゾンビ。


 手を前に伸ばす男性の腐乱死体が、ゆらゆらとこちらに向かってくる。


 剣を抜き、どのタイミングで戦闘に入ろうかというタイミングで、今度は自分の右側の土が盛り上がり、死体がもう一体現れる。


 ちょっと、左に避ければ、今度は左側の土が盛り上がり死体が増える。


 ん~何だろうこれ。


 「ごめん死者に対して申し訳ないけど見分けがつかないんだけど」


 「ええ、魔物ですので」


 マモノデスノデ???


 「えっと、三つ子だったのかな?」


 「いえ、魔物化してしまったので、同じ見た目です。魔物としての種類が変われば見た目も変わります」


 うん、そうだよね~そりゃあそうだ。魔物一体一体書き分けなんか出来ないよね。無限にPOPするんだもの。


 うん!自分殺れる! 


 さっと自分の前に出て、細身の長剣を抜く副官。


 剣に光を纏わせて三閃、あっという間にゾンビを倒してしまう。


 自分が倒さなきゃいけないんじゃなかろうか??


 「お優しい隊長殿に苦しみを負わせる訳には行きません。どうか私の後ろに」


 いつ自分は優しくなったのだろうか?う~んどうしたもんか。


 しかし、その後もそのフロアは副官と【兵士】達が何か光を纏わせながら華麗にゾンビを屠っていく。


 次もまた白い長い階段。


 次のフロアは地下にも関わらず、植物の生えているゾーンだ。


 出てくるのは、吸血蝙蝠、ゾンビ犬、ゾンビ鼠、ゾンビ兎、ゾンビ狐、浮遊する目玉


 どれも、秒殺である。慈悲ってなに???


 あっという間に次の階


 出てきたのは半透明の人。


 うつむく男性、上を向く女性、遠くを見るドワーフ、どこを見ているのか分からない犬人族等等、おびただしい数の半透明の人が、棒立ちになっている。


 「死体じゃないね。まさか死して尚縛られる魂じゃ・・・」


 「死体です」


 またもや剣を光らせて切りかかる副官。


 ついていく【兵士】達。半透明の人達を片っ端から斬っていく。


 流石に三階層目だけあって、相応に抵抗してくるが、多分あの剣の光は死体に特効なのだろう。負ける姿が想像できない。


 よくよく見れば、確かに同じ種族は同じ見た目である。

 

 にしたって、情けとか容赦とか、もうこんなの浄化じゃないよ!虐殺だよ!


 ちなみに人型の魔物は大体お金を落としていく。


 たまに持ち物らしき、錆びた武器やアクセサリーなんかも落としていく。動物系は目玉や毒、牙などだ。

それらの錆びた装備は後で、機関長に渡して欲しいとのこと。


 そして、次の階は定番、マミーって言うのかな。包帯男だ。


 「どうする?燃やす?」


 「それはいけません。ここは地下ですので、空気の流れが悪いので火はやめてください」


 そこはリアルなんだ。


 「【鉱国】の地下道は火を使っても大丈夫だったんだけど」


 「あちらの国では山中に住まう文化ですので、独自の給排気システムが有ると聞いております」


 嗚呼、ドワーフ的なアレね?


 ということで、包帯男達を殴っていく。自分も参加しようとするが、副官が自分の肩に手を置き、悲しげに首を振る。


 「ご無理をなさらないでください。どうか我らをあなたの剣としてください」


 う~ん、いつのまに自分の好感度MAXになった?


 「付いて来てくれたことはありがたいけど、なんて機関長に言われたの?」


 「隊長殿はいずれこの国の機関長のお一人になると」


 「いや、まだ分からないし、それに自分のようなぽっと出が上に立ったら、寧ろ申し訳ないんだけど」


 「何をおっしゃいますか!初めて訪れた土地で貧しきものの為に、完全に無償で、誰に頼まれたわけでもなく炊き出しをなさる。そのような慈悲を持たれる方にこそ機関長になっていただきたい!」


 嗚呼、それか、手持ち無沙汰に料理しただけで、評価上がりすぎじゃん。


 そんなこんなで、降りる事5階層。一フロアごとそれなりに広かったはずなのに、何かあっというまだった。


 そして、この階がどうやら集団戦百人長になる為の試練の間らしい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今までに無い、主人公が楽というまさかの展開。
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