159.第13機関の話
■ 第7機関 ■
【教国】は12の機関によって運営されている。
第7機関は戦闘を主体とする機関即ち軍隊である。
邪神との戦いの為の組織である【教国】の中心的機関の一つでもある。
象徴は獅子となっている。
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
都の中央は随分と大きな建物だ。大きすぎて、よく分からない。
正面と思われる門から入ると、何万人と並べそうな広場、
その周りにも囲むように建物があり、背の高い柱が等間隔で並んでいる。
地面には色の付いた石が並び、何かの象徴だろうか?まあ、人も多いし良く分からないが。
正面は宮殿になっている。
色彩こそ落ち着いたベージュのような色を基調としているが、よくよく見れば、精密な彫刻がされている。
宮殿に正面から入るのも恐れ多いのだが、受付が見つからない。
宮殿入り口のプレートメイルの【兵士】に声をかけてみることにする。
自分も【兵士】だし、少しは話になるだろうというしょっぱい自己保身である。
もう、建物が大きすぎる時点で、びびってるのよ。しょうがないじゃん。
「あの、呼ばれて来たんですけど、受付はどちらになります?」と聞くと
「どういったご用件で?所属はどちらです?一般の方にしては装備が物々しいようですが」
物腰の柔らかい人だった。多分一般人の相手もしてるからなのだろうな。ちょっとほっとした。
「嗚呼、ドレスコード武器鎧不可でした?一応蛇の件て事でいいのかな?」
そこまで言うと急に態度の変わる【兵士】
「これは大変失礼いたしました!【帝国】の【上級士官】の方とは知らずとは言え、大変失礼いたしました!応接室にてお待ちください。すぐに案内の者をお呼びします」
いや【特務上級士官】なんですけども、そんなに構えなくても・・・
そんな事を思っているうちに別の【兵士】の人が現れて、案内してくれる。
宮殿を正面に見て広場の右側の建物に案内された。
光が入り、明るい廊下には絨毯が敷かれ、天井には空を表すような透き通る水色に色んな人物が描かれているが、何か歴史や物語があるのだろう。
そして似たような扉が沢山並んでいるということは、応接室と一言で言ってもいくつも部屋があるのだろう。
一つの部屋に通される。
中々に広い部屋に意匠を凝らした椅子と机が置いてあるが、少々触るのが怖いので、適当な場所に突っ立ってる。
部屋の中にも絵があったり、ちょっとした置物の意匠も凝っている為眺めてて飽きないので、ぼんやり時間を潰していると。
プレートメイルにロマンスグレーの紳士というにはややワイルドであるがしっかりした体格の人物が現れる。歳を言えばおじさんだが、歴戦の風格がある。別に顔に傷があるとかそういうことではないが、雰囲気を感じる。
「おっ待たせたな、あまり硬くならなくていいぞ、俺はそういうの苦手だ。一応名乗っておくと第7機関の長だ。第7機関は要は【兵士】の事だ」
機関の長って、アレだよな、かなり偉い人だよな?
「すみません、自分も詳しい話を知らずに来てしまったのですが、わざわざ機関の長の方にお手数掛けてしまって」
「別に気にしなくて、いいぞ。他のやつらもお前さんの事は気にしてたが【兵士】同士の方が良かろうと俺が来ただけだからな。それに蛇の件は皆知っているが詳しいことは本当に一握りの人間しか知らないし、その辺の話について責任を持てる人間じゃなきゃ話せないからな」
「にしても、いきなりそんな階級の方が出てこられなくても」
「ああ、本当に堅苦しくしなくていいぞ。それにお前さんだって【上級士官】じゃないか、十分に階級高いじゃないか、外の衛兵がびびってたぞ」
と高笑いを始める機関の長
「それにな、蛇の件が、もしこのままいくと俺たちと同じ機関長になるかもしれないんだから、そんな事言ってられなくなるぞ」
「いや、自分【帝国】所属なんですが」
「はっ関係ないな。この国はそもそも都一個しかないんだ。大抵の人間はどこかの国で働いてるんだ。どの国所属かなぞ関係ない」
「そうですか、ところで蛇の第13機関てどんな機関なんです?」
「まあ、そこだよな。今は無き機関で詳しいことは分からないが『死者蘇生』に関する機関だと言われてる」
「んな、またヤヴァそうな」
「ああ、ヤバイな!大昔、大真面目に研究されてたらしいぞ」
「いや、無理でしょ?そんな」
「それが、そうでもないから研究されてたんだろ。お前さんの倒した死と再生の蛇をはじめとする蛇を全て倒す事で、手に入るとされる、死と再生の秘術。
本当はうちで研究するつもりで、特派員を送ったんだが、瘴気の所為で乗り込めないうちにお前さんが倒しちまったわけだ。あきらめろ」
うへ~宝樹様の頼みとは言え、失敗したかな、心の奥底から面倒くさそう
「まあ、とは言えまだ道半ばだ。力を付ける為にも一本行っとくか?」
「【訓練】ですか?何か最近身体能力上がったみたいなんで、出来るなら助かりますけど」
「そういうのはお前さんの師匠に言え。俺みたいなフルプレート装備の戦い方は合わないだろう」
「じゃあ、何を行っとくんですか?」
「地下墓地の不死者を浄化しに行かないか?っつうことだな」
「何で、こんな聖堂のような所の地下にそんな物が」
「そりゃあ、墓の上に建てたからだな。一つは」
「一つは・・・って言う事は」
「聞いちゃうか?」
「いや、聞かないです。一本行っときましょう」
「いや、言っておくか、地下の墓は邪神との戦いで逝った者達の墓だ」
「何で不死者になっちゃうんです?人が死ぬとこ見たこと無いですけど、基本は霊子に変わるんじゃ?」
「大量の瘴気を浴びると、肉体だけ残っちまうんで、それらを埋めたのが、始まりだな」
「なるほど、その鎮魂のためと」
「もう一つはその事を利用して、魔素を使用してあえて死体を残した時代があるんだよな」
「何のために?」
「そりゃあ、復活する為に肉体が必要だろうと考えたからだな」
「嗚呼、死者蘇生」
「そうだな、その研究が進めば肉体のある限り、何度でも生き返れると考えた連中がいたんだよ」
「自分がその研究やらされるんですか?」
「いや、そりゃ無いだろう。その研究に無理があったから第13機関は解体されたんだろうし」
「じゃあ、自分も機関長にならなくていいですよね?」
「さあな?何せ死と再生の秘術については失伝してるからな」
なんか妙にぞわぞわする話を聞かされたなぁ。