156.双頭の蛇
大変申し訳ございません。
ここでの赤い玉に関しては後の重要アイテムなのですが、描写が間違っていた為修正します。
双頭の蛇
【砂国】の命を吸い尽くし、焼き尽くしたとされる伝説の蛇
命を吸えば吸うほど成長していく為、復活したら早めに倒す事が望ましい。
過去には術士と異邦人が二人で力を合わせて倒したとされる記録も残っている。
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ログインすれば既に街は静かに静まっている。
廃墟と言うにはまだ生活感が残る街に、人の気配の無いこの感じは渓谷の避難以来だが、なんとも独特の雰囲気がある。
蛇がどちらから出てくるかも分からなければ、どこで戦う事になるかも分からないうちから罠の張りようも無く、まあ、そもそも自分に罠を張るようなスキル自体無いがね。
装備だけは現状最強の物へと思いブーツは羽蛇の時のものに替え、
調べてもらった蠍ドロップ品のうち、赤い玉はよく分からない。
そして蠍のハサミだが、
〔巣蠍の爪〕握力補正
これは小手扱いらしい、グローブとは干渉しないので、剛猿の腕輪を外し装着すると、左手がハサミだ。ハサミを開けば左手も使えるがなんともバランスが悪い。
しかし装備スキルに<掴み>が入っている上<掴み>の能力上昇もある為、悪くも無いんだよな。
戦闘用ということで、今日のところはつけておくかとそんな所。
とりあえず、腹ごしらえかと
今日のところは軽めにこの辺りで買える中が空洞のふんわりしたパン、
パセリとトマトを刻んでオリーブオイルとレモンで和えただけのサラダ、
そしてこれまたこの辺りで買える羊のチーズ、これはちょっとだけ焼き目をつけて食べる。
なんかちょっといい朝ごはんみたいだが、これから戦闘でお酒飲む気にもなれないし、こんなもんだろう。
いつ蛇が来るかも分からず、ご飯も食べた。手持ち無沙汰で、オアシスを眺めに行く。
ゆらゆらと揺蕩うオアシスに反射する光を眺めて思うのは、水筒まだ買ってなかったなあとかその程度、自分に詩心など無い。
そんな時、一瞬ざわっとした気配を感じる。
人のいないはずの街に何故そんな気配を感じるのか正体を探ろうと、オアシス沿いを気配の方向に向かうと。
いつだかに見た角の長い白い牛が、蛇に襲われている。
頭を丸ごと食いつかれ、暴れる牛、数秒もしないうちに干からびて動きが弱くなる。
そして、頭を離した蛇はその尻尾で牛をはたけば、そのまま光の粒子になって消える牛。
小さいと聞いていたが、どうなんだろうか、確かに今までと比べれば大分小さいが、それでも、人間くらいなら丸呑みする程度にはでかいし、太い。
オアシスを背に眺めているとこちらに気がついたのか、ずるずるとうねりながら、近寄ってくる。
なんだかんだ街中で遭遇しなくて良かったなと、割と広めのオアシス沿いの広場で蛇と相対する。
鎌首を高く上げ、威嚇してくる蛇。ダメージの無い衝撃に士気低下攻撃であると分かるが、
今は集団戦ではないので中和する事は出来ない。
しかし自分も戦闘に入った瞬間から士気が上がる装備や士気低下を軽減するスキルを持っているため、いきなり恐慌状態に陥ることは無い。
落ち着いて、蛇の出方を見ていると口を大きく開いて頭上から自分に向かってくる。
右に転がって、かわす。そして蛇が地面に顔をぶつけたところを横から切り付ける。
『ギャッ』っと一声鳴き、体を揺らす蛇。ちゃんと効く様だ。
体の向きを変え再び、自分に正面に相対する蛇、次は突進か頭を低く構えこちらに向かってくる。
一瞬ブロックかとも迷ったが、最初の一撃の感触から、そのまま真っ向に斬りつけることにする。
大きく振りかぶり衝突の瞬間を狙って、切り付ける。
と、何も感触が無い。思わずたたらを踏み、バランスを崩すのと同時に視界が真っ暗になる。
何事かとパニックを起こすと全身に痛みが走る。真っ暗な状態で、全身のダメージ、
しかし、噛み付かれたとか斬りつけられたとかじゃない、本当に全身にダメージが入っている。
感覚で言うと全身の皮を引っ張られているかのような感触だ。
どうしたものかとりあえず剣を振るが、手腕に力が入らない。
ポッという音と共に視界に光が戻ると、目の前に蛇の頭がある。
さっきの牛の光景を思い出し、尻尾が来ると身構えたいが力が入らない。
チラッと視界に入る左手の生命力の赤いバーがなくなっている。
瀕死状態に気がつき、力が入らない手で、首のチョーカーを連結させる。
力が戻りすぐ、勘だけで剣を構えれば、太い尻尾が飛んでくる。
中途半端な体勢ながら、剣で受け跳ね飛ばされる。
少し、距離を置いて蛇を見れば、いつの間にか頭が二つに分かれている。
自分から見て左が青黒い頭の蛇、どうやらこいつに吸われた様だ。
右が赤黒い頭の蛇、こいつはまだ何をしてくるのか分からない。
鎌首をもたげる蛇、切り込むに切り口が見当たらない自分、ちょっとした膠着状態。
ふと、赤黒い頭が、息を吸い込むモーションをとる。当然、何か吐き出すのだろうと身構える。
吐き出した瞬間、相手の向きから察して左に飛ぶ。
が、しかし広範囲攻撃だったのか、光に一瞬目がくらんだと思った瞬間に全身にダメージを食らう。
次の瞬間には体が焼け付く感覚を覚え、目に映るオアシスにそのまま転がって落っこちる。
オアシスに落っこちた事で、頭が冷える。
多分範囲の熱線か熱波攻撃だろう。青黒が吸収、赤黒が熱線範囲攻撃。
なるほど命を吸い、焼き尽くすって事ね。まあストレートだわ。
にしても、生命力を一気に吸い尽くされ、連結した精神力まで今ので持っていかれたんだが、どうやって戦うか。
いずれにしてもいつまでも水に浸かっている訳にも行かないか。オアシスから縁を掴み半身を出しつつ、回復液を飲む。
足を一歩外に出すと同時に癒丸薬を飲む。
まだ、火傷の継続ダメージが入っている為、包帯を巻きたいところだが、蛇に睨まれている。
とにかく避けながら、回復を続ける他無いか?
中々苦しく、打開できる方法も思いつかない。
サイズが小さいから何とかなるとか、全然そんな事無いわな。