154.気宝樹
■ 宝樹 ■
全部で六柱存在する
現在開かれているワールドフィールドの外周に存在している
そのためいずれも辺境の地に在ることが多い
宝樹が存在する国は【帝国】【鉱国】【馬国】【砂国】【海国】【森国】である。
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砂嵐は止まったが、周りの光景はと言うと、
夕暮れに赤く染まる砂漠、視界は広く、地平線に沈む太陽が妙に大きく見える。
そして目の前には一本の木、低いが、横に大きく広がる木
「こ~に~ち~わ~、げ~ん~き~?」
やたらと間延びした声が聞こえる。まあ、目の前の宝樹だろう。しかし、今までの心に直接話しかけてくるような、距離を超越して届くような声ではない。
「どうも、こんにちわ。なんか他の宝樹様と話し方が、違うみたいですね」
「ほ~か~の~こ~、し~って~る~の~?」
「ええ、まあ氷宝樹様に頼まれて、様子を見に来たので」
「じゃ~あ~、ほ~か~の~こ~と~~お~な~じ~に~は~な~す~」
「自分は構わないですけど」
『やあ、私は気宝樹。神より気の運用を任された存在だ。どうやらこの辺りを荒らしまわっていた邪神の手のものを倒してくれたようだね。澱んだ気に参ってしまったよ。ところで私の兄弟に頼まれてきたとか?』
うん、いきなり流暢に話し始めるし、しかも口調違うじゃん。
「ええ、他でも邪神の尖兵と呼ばれてるスライムが出ていまして、更に連絡が途絶えているとか。それで直接様子を見てきて欲しいって言うのが今回の依頼です」
『ふむ、そうだったか。それはご苦労だったね。まだ他の宝樹も周るようなら力を貸そうじゃないか、私の根に宝剣で触れるがいい』
そう言うと、地面からボコッと根がむき出しになるので、宝剣を当てると剣内のグラデーションや結晶、針金のような模様がゆらゆらと流動しだす。
「ありがとうございます。ところでさっきまでなんであんな話し方だったのですか?」
『うむ、そちらに合わせて、大気を振動させて話していただけだ。気を操る私なら容易いことだ』
「嗚呼、気と言うのは大気のことでしたか、それで空気の層を作って蜃気楼を見せるとか」
『間違ってはいないが、足りないかも知れないな。気と言うのは不可視で流動的でありながら確実に存在する。そう言ったものだ。どこにでも存在し、エネルギーであり、物質でもある。触れていながら、掴む事は出来ない。そう言ったものを気と称している』
うん、空気の事にしか思えないけど、もっと違う何かがあるのだろう。まあ理解できないものは仕方ない。そういうものとして受け止める。
「ところで、宝樹さまに会う度に聞いてることがあるんですけど?質問しても?」
『うむ、構わないよ。何かを疑問に思うと言う事はいいことだ。成長するにも、自らを知り、自分という存在の芯を作るにも必要な事だろう』
「じゃあ、遠慮なく、大昔に大戦があって世界中の根が失われた話について聞いているんですけど」
『私の親の話か、この世界の大地を管理していた者だ。
今は我ら宝樹が分割して治めているがな。
我ら宝樹の丁度中心に存在していた。
そこは今空洞になっている筈だ。
私達兄弟はその空洞を伝ってお互いの状況を把握していた。
その空洞内はきっと我らの力が渾然と貯まっていることだろう。
世界樹は根を使い切った時に我ら六柱を生みだした。
残念ながら今その場所に世界樹の姿は無い。
そして世界樹と共にかつて神の尖兵と呼ばれた種族も姿を消した。
そんなところだろうか?』
うん、既出の情報もあったが、一気に教えてもらえた。
「ありがとうございます。ところでその中心てどこにあるんでしょう?」
『そなた達の言い方で言うなら【教国】となるだろう』
へ~世界樹って【教国】にあったのか。まあ邪神と戦う事を使命としてる国だし、なんか謂れがあるのかもな。
「ありがとうございます。じゃあ、そろそろお暇しますね」
『まあ、待て。一つ頼まれて欲しいことがある』
スルーするつもりだったのにな。さっきまでの砂嵐で結構集中力削られているんだが、な。
『私のちからが、弱まった事で、蛇が復活した。是非倒して欲しい』
「まあ、そうなりますか」
『奴はかつてこの辺りを死の土地に変えた危険な生物だ。命を吸い、目に付くものを焼き散らして行ったのだ。放っておけば危険な事になる」
「そんな、危険な相手どうやって戦えば?」
『うむ、奴はまだ復活したばかりで、小さい。そなた一人でもうまくすれば倒せるだろう』
「え?小さいんですか?今まで大きいのばかりだったから、それは助かる」
『うむ、しかし放っておけばすぐに大きくなるぞ、命を吸いすぐに成長するのだ。私のところに辿り着く事は出来ないだろうが、近くの生命力を感じるもののいる場所に現れるぞ』
「え?ここら辺で生命力のある場所っていうと、オアシスですかね?」
『そうなるな、ここから戻ったら、街の者に警告してやるといい。そして成長する前に倒すべきであろう。
ちょっと行って倒してくるがよい」
はい、いただきました。ちょっと行って倒してこいと。
まあ、今回は小さいらしいし、何とかなるかね?