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152.砂漠最奥の町

 ■ 蜃気楼の街 ■


 砂漠の難所、蠍の巣を抜けた先にある街、

 普段は蠍達が幅をきかせていて辿り着く事すら難しい。

 砂漠の中にポツリと存在するその立地から幻の街といわれる事がある。

 基本自給自足しなければいけない土地柄ゆえ、孤立した街の割りに色々と物産が存在する。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 大蠍を倒した後は魔物が出なくなり、サクサクと進める様になった。


 そして、日々形を変えるであろう砂山でも特に大きな物を登りきった時、


 彼方に街が見える。


 砂山と砂山の間に忽然とあるオアシスを中心とした街。


 本当に砂漠にぽつんと現れるあまりにも不自然な光景。


 いっそ幻でも見たかと思ったが、副長に確認すれば、間違いなく目的地としていた街らしい。


 そのまま、街まで辿り着けば、


 「さて、隊長。俺たちはここまでだ。ここで戦闘に倒れた者達の復帰を待つ。安心しろ、帰りまでここに滞在している」


 「そうなんだ。何とかあの蠍も倒せたし、助かったよ。ありがとう」


 「いや、仕事だからな、それに隊長からの臨時収入もあったしこちらも助けられた。またな」


 そう言って、砂漠を越えてきた仲間達とは別れる。


 次の目的地は【兵舎】ってことはないだろうな~だって今【兵士】達と別れたばかりだもの。


 そうなるとオアシスに近い大きな家だろうな~


 ということで、街の様子を見ながら歩いていると結構食材が売っている。


 茄子、スパイス、ヨーグルト、練りゴマ、薄焼きのパンを買うことにする。

 後干したナツメヤシの実をおやつのつもりで買って行儀悪いが食べながら歩く。


 そして見つけてしまった!お酒だ!!


 完全に忘れていた・・・都で買うはずのお酒!いろいろあって買ってなかったじゃないか!


 すぐさまお店に飛び込み交渉する。


 アラックという蒸留酒らしいが、さっき買ったナツメヤシを原料にしているらしい。


 試飲すれば、水で割ると白濁する不思議なお酒だ。悪くない。


 砂漠も奥地にあるこの土地だと人の往来も少ないらしく、それなりの量をまとめて買い付けることが出来た。 


 そのまま、お酒でも飲んで休憩してしまうかと思ってたら、一人の男性がにこやかにこちらを見ている。


 「あっどうもこんにちわ、今日も暑いですね」


 「そうですね、ところでこの辺りでは見かけない方ですが、目的があって来られていますね」


 「ええ、まあ、ただ行き先が分からないので休憩しようかと」


 「それならば、ご案内しますよ」


 と、にこやかな男性。


 うん、完全にこちらの正体分かってらっしゃる。


 そのまま付いていけば、オアシス沿いの一際大きな屋敷


 庭の草木は手入れされ、ベンチには柔らかそうなクッション。

 オアシスに面して涼しさを感じ、

 遠くの砂山に、ここは砂漠の合間の楽園だと、より一層強く感じさせる。


 玄関を入れば、いきなり大きなホール。


 磨かれた大理石のような床に幾何学的な模様の壁。


 しかしその部屋はすんなり抜け、廊下に出ると中央を流れる水。廊下まで涼やかだ。


 小さなアーチ橋を越えて一つの部屋に入ると


 そこは落ち着いた雰囲気の綺麗に手入れされた黄土色の壁と厚手の絨毯、そして対面する一人掛けソファが一対。


 片方のソファに座るように促されると、にこやかな男性は対面に掛ける。


 この男性こんな大きな屋敷の主人なのに自ら案内してたのかと気がつくと


 「先だってはうちの娘が迷惑をかけたようだね」


 「嗚呼、そういうことですか、特別迷惑と言うことは無いですよ」

 

 「そう言ってくれるのはありがたいがね。ここは少々厳しい土地柄なのでね」


 「実際にここまで歩いてきた上で言うと、相応の体力が無いと、途中の休憩地までももたないでしょうね」


 「うむ、私も家族とは会いたいが、この国ではオアシスがあれば人が集まる。管理する者がいなくなれば無法地帯になってしまうからな」


 「それは責任ある立場といえど、辛い事でしょうね」


 「うむ、しかし君が巣蠍を討伐してくれたおかげで、当分は人の往来も増えるだろうし、うまくすれば、家族と会うことも叶うだろう」


 「そういうもんですか?」


 「うむ、巣蠍が倒されると次の巣蠍が育つまで、蠍達は大人しくなると言われているからな」


 「ところで、自分の目的の方なのですが」


 「うむ、ここの宝樹様は自らの力で、訪れるものを選別している。君は他の宝樹に頼まれたのだから、資格は十分にある。会ってきたらいい」


 「結構簡単に会えそうですね」


 「うむ、この先は常に砂嵐の吹き荒れる地となる。その嵐の中進み続ければ、資格の有る者なら自然と辿り着ける」


 「嗚呼、それでも砂嵐の中を歩くわけですか、やってみます。ありがとうございます」


 そうして、お暇する事にする。


 宝樹への道は分かった。しかしこのまま進めば当然強敵が待っている。


 今日のところは休憩しよう。休みって大事!


 と言うわけで、さっき買ったアラックに合うつまみを作ることにする。


 まず、茄子を丸焼きにする。皮がシワシワになったら皮を剥く


 そしてその茄子にスパイス、ヨーグルト、練りゴマ、塩、オリーブオイル、ニンニクを混ぜて、全部潰す!


 ちぎったパセリを振れば、茄子のディップだ。


 これをさっき買った薄いパンで掬って食べる。


 そして水で割ったアラックを飲む。


 最高に幸せだ。


 やっぱり休憩って大事だな。リフレッシュして、次ログインした時は宝樹に会いに行こう。

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