147.四聖PK兄弟
■ 煙幕 ■
視界を潰す方法はいくつかあるが、目への直接攻撃や状態異常系攻撃は薬で治すことが出来る。
しかし、煙幕や濃霧は状態異常ではない為、スキルで見通すか、煙や霧を吹き飛ばす必要がある。
煙幕は専用アイテムの使用。
濃霧は天候操作や氷精や水精の術で使用可能である。
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
何だかよく分からんやつに絡まれ、若干イライラしながら、【兵舎】を離れ、一度【教会】に寄り、戦闘用のスキルに付け替え、
人通りの少ない路地に入っていく。
すると背後から声がかかる。
「よう、さっきの見ていたぜ」
来た来た、やっぱりかと思惑通りに事が運んでいる事に、にやついてしまう顔を強引に無表情を装い振り返れば、
坊主頭の偉丈夫が4人
う~ん4人かそういうこともあるか・・・さっきのアホのけつもちか何かが絡んでくるかとは思ったが、まさか4人か。
ゲームの中でガチな悪人が幅を利かせるなんて事は出来ないだろうから、てっきり腕が立つ奴が一人いるか、どこかの大手クランにでも絡まれるのかと思っていたんだがな。
「ふん、掲示板や賞金サイトでは見たこと無い顔だな」
「だが【ジオマンシー】のT.O.をあっさりやるんだから、すぐにでも有名になるだろうよ」
「じゃあ、今の内に狩って、賞金首になったところで、即動画公開と行くしか」
何の話してるんだかな?賞金サイトって事はPKなんだろうが、4人同時にかかられて、いけるか?
「とりあえず、俺から行くぞ。前もその前も順番が回ってこなかったんだからな」
「いいよ兄ちゃん。名乗りも任せるわ」
「よう、最近噂の四聖PK兄弟とは俺たちの事だ。今日やられたら、噂するといい、助けを呼ぶがいい、人数集めて討伐しにくればいい。そういう奴等を食って、俺たちはまた更に強くなる。いざ」
ん???ただのPK?
「あっちょっと質問」
「ちょっとならいいぞ、時間稼ぎは許さんが、質問位は答えてやる。何故なら俺は意外と話好きだ」
「それなら俺も話好きだから答えてやろう」
「おい!今日は俺からだと言っているだろう!」
何か坊主達が喧嘩している。
「誰が答えてもいいけど、さっきのアホな術士とどんな関係?」
「何も関係ないな、獲物のつもりだったが、あっさりやられやがって、だからお前を狙う事にした」
な~にも思惑通りじゃなかった。あのアホ野放しにする輩に一言文句言ってやりたかったのに
「質問が終わったら武器を抜け、俺は四聖が次男、青龍!その名の通り青龍刀使いだ」
と柄付きの大振りな幅広の刀、自分世代なら『関羽が持ってるやつ』で伝わるやつだ。
相手はPK問答無用だろうと腰のショートソードを抜く
「・・・お前・・・初心者か?」
「え?」
「ショートソードは剣を使いたい奴が、序盤に使う武器だろ。大振りな武器を使うほど力が無かったり、当てられるほど、器用に武器を使えないうちに使うものだ。
まさか初心者に絡んでしまうとは、これは出直したほうがいいか」
「兄ちゃん、初心者があのT.O.倒せるわけ無いじゃん。油断させる罠だよ」
「なっ!ふう、危ないところだったぜ、頭のいい弟がいて良かった。だが卑怯などとは言わないぞ!勝つためにあらゆる手段や工夫を凝らす事に俺は肯定的だからだ」
「はあ、別に油断させるとか無いですけど、普通に自分のメインウエポンですよ」
「そうか、ではいざ!」
言うが早いか、両手で思い切り青龍刀を振りぬいてくる。
が、遅い。軽くしゃがみつつ避け、踏み込む。
青龍は振りぬき、隙のできた体勢のまま強引に左足で、ステップ、体の回転で今度は青龍刀を切り上げるべく刃を返す。
しかし、全体的に遅い動きに、
振り上げようと力を込め、青龍刀が浮き上がる瞬間に刃の付け根を踏み体重をかける。
すると思った以上の重さに耐えかね膝をつく青龍。
すかさず、首にショートソードの刃を通す。
急所判定硬直が出たところで、青龍刀の柄を掴む手指を狙い、柄に沿って削ぎ切る。
硬直が解けると同時に、青龍刀を取り落とす。部位破壊が出たようだ。
そのまま、目を削ぎ、盲目が出たのであろう。顔を背け限られた視界の中に自分を探そうとしているのが、見えるが、今度は喉を突く。
またも急所硬直が出たところで、後は適当に急所になるだろう場所を滅多切りにし、青龍を光の粒子に変える。
「兄ちゃ~~ん!次は俺が相手だ!四聖兄弟、四男白虎だ!武器は無い!この拳が武器だ!俺の拳が真っ赤・・・」
一人づつ相手してくれるなんて随分親切なPKだなと思いながら、
行動は容赦なく一つ飛びで、喉を突く。
天に向け拳を突き上げた体勢で動きが止まる。
意味が分からないので、とりあえずこいつも適当に滅多切りにする。
時々硬直が解けて動き出しそうになるが、自分は只管急所しか狙わないので、すぐに再度硬直がかかり、動かなくなるのみだ。
そして、また光の粒子に変わる。
「俺が四聖兄弟、三男玄武!鉄壁の盾使い。いざ!尋常に勝負!」
体全体を隠す大盾を構え、名乗る。
様子を見ていると、盾に姿を隠したまま突撃してくる。
まあ、盾持ちなら常套手段。寧ろ盾持ってるのに武器振り上げて体見せてたらアホだ。
常套手段てことは返す方法も確立しているわけだが、
まず、軽く上部を叩く、ブロック判定にならない程度、思い切り切り込まず、ノックする程度だ。
そのまま、肩甲骨で腕全部を回すように足元に剣を滑らせる。
まるで、タイミングを合わせたかのように盾を持ち上げる玄武。
多分頭上から力ずくで殴られると予想したのだろうが、そこは小回りの効くショートソード、足首に刃を通すが、グリーブが金属製なのか弾かれる。
また、盾を構えなおす玄武。
今度はこちらから走り寄り、相手の横を掠める様に飛び、空いている左手指で盾の縁を引っ掛けながら相手の後ろに回りこむ、金属のまとっていない部分を一瞬で見定める。
脇を下から突き上げる。
振り返ろうとしたところを腰の鎖帷子を掴み
擒拿術 蛇結茨
擒拿術 猿捕茨
の硬直コンボで動きを止める。
今度はゆっくり相手を見定める。
よく考えたら、頭が坊主で剥き出しだった。
鎧のネックガードが邪魔だったが、強引に上から後頭部に剣を差込、そのまま剣を根元まで突きこむ。
そのままの体勢で、只管かき混ぜれば、玄武は光の粒子に変わる。
「さて、最後の一人か、出来ればその撮影アイテムを渡して欲しいんだけど?」
「ふん、俺が四聖、長男の朱雀、支援回復役だ!さらば!!」
そう言って何かを地面に投げつけると煙が充満し、視界が真っ白に塞がれる。
<索眼>があれば、熱源探知で追えた筈だが、今日は外していた。
あっさり取り逃がす。変な映像が流れなければいいが。
しかし、なんか、変な日だな。イライラは収まったが、なんともいえない気持ちだ。
飯食って寝よう
2話に渡ってしまいましたが、じいちゃんや剣聖の弟子といったトッププレイヤーには魔物狩りでは譲るものの、集団戦能力や対人戦能力では既に普通のプレイヤーを鎧袖一触にするレベルだと言う描写です。




