142.ダンジョンクッキング
■ アベンチュリン ■
アベンチュリンは石自体ではなく、本来アベンチュリンレッセンスと言うきらきらした光学効果に由来した名前である。
本来はグリーンアベンチュリンクォーツ及びグリーンクォーツライトと呼ばれる。
現実では、ピンク、ブルー、オレンジ等様々な色が存在する。
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スポットライトが照らし出す人影、ピンクの髪の少女が踏み台に乗って仁王立ちでこちらを睥睨している。
「あたしがこのダンジョンの主!ベルちゃんである!」
「はあ、帰らせていただいても宜しいですか?」
「駄目だ!このダンジョンをクリアしたければ、あたしが満足するような料理を出す事だ!調理台はこちらに用意している!条件は一つこのダンジョンで手に入れた肉を使うことだ!」
「はあ、それなら今度料理人連れてくるので、今日のところは帰らせてもらっても?」
「あきらめろ!この部屋の扉を開けた時点で料理が出来る奴がいることは分かっているのだ!大人しくうまいもんを提供するのだ!」
「でも、自分帰りたくなっちゃったので」
「なんでだよ~!さっきから帰る帰るって、そうやって聞き分けないこと言って!料理すればいいだろ!そうすれば、ちゃんと帰してやるって言ってるの!
あ~あ~もう、病んじゃった~もう邪神様から頂いたこの力を解放して、この一帯を腐った土地にして、何も作物が取れないようにしてやろうかな~、何も食べれないなら、もう死なば諸共だな~
このままだと餓死しちゃうな~あ~あ~」
「隊長殿、作ってやったらどうじゃ?」
「自分が作るのって、自分で消費するような簡単なものだけですよ?ちゃんとした料理人連れてきたほうがいいんじゃ?
下手すりゃまずいからって理由だけで死に戻りとかもあるかもしれないし」
「そんな事はないぞ!ちゃんと食べれるものなら評価してやるし、帰らせてやろう」
「それじゃ、ダンジョン最後の試練にならないんじゃ?」
「何でもいいから!食べるもの持ってこ~~い!!」
このままごねてても埒が明かなさそうなので、料理を作る事にする。
「元々作って持って来たものでもいいの?」
「ここの肉を使っていれば良いぞ!」
と言うことなので、つまみ代わりにスモークした肉類をとりあえず、出す。
「うっまーーーーい!」
叫びながら一瞬で皿を空にしていく。
仕方無しに作って持って来たスモークを適当に切って出していく。
一皿づつソースをかけて行くのも面倒なので、瓶でソースを出し、勝手にかけて食べてもらう事にする。
さて、何作るかな・・・ジビエなんて普段料理なんかしないからな~つまみ用のスモークしか分かんないんだが・・・
ん~まず猪は豚に似てるから『生姜焼き』かね。
醤油、砂糖、酒、すりおろした生姜につけて、玉ねぎと一緒に焼くだけ。
鹿は挽肉にして、玉ねぎと卵と混ぜて、パン粉をまぶして揚げれば『メンチカツ』の出来上がり。
兎はどうっすっかな~。骨で出汁とって、大根と炊いて、『兎大根』
熊は煮る一択だな。生姜とハーブと醤油と砂糖で『熊煮込み』
鳥は色々種類あってな、鴨にしておきますか。普通にスープにするだけで、鴨出汁でるしな。スープの青瓶と適当に葱突っ込んで、スープにする『鴨汁』
「自分に出来るのはこんなもんだけど?」
と出すが、もう皿に盛り付ける暇も無く、鍋のままひったくられて、全部食べられてしまう。
流石暴食のダンジョン
「うん、うまかったぞ!!褒美を出そうじゃないか!」
と言って、渡してくるのが、キラキラと内部に砂金が在るのではと錯覚するようなきらめきを内包した緑の宝石が付いた根付のようだ。
「これはなんですかね?」
と剣聖の弟子、やっぱり若いのか最近の子は根付なんて見たこと無いか
「ストラップみたいに引っ掛けて、この玉のところを帯に引っ掛けると落っこちなくなる代物かな。着物だとポケットが無いから小物を帯に下げるのに使うものだと思うよ」
「へ~なんかおしゃれですね。僕は刀使いだし、これは合いそうです」
「うむ!気に入ったか!その宝石の効果はずばり!内臓機能を高め、食事の効率を上げるのだ!緑の宝石は精神を癒す効果もあるぞ!」
ふ~む見た感じアベンチュリンかな?
自分は帯はしていないので、普通に腰のポーションケースにそれこそストラップのように下げておく。
「よし!では!奥の部屋に行くのだ!そこから地上に帰れるぞ!」
と言うと、奥の何も無いと思われた真っ黒空間に扉が現れる。
三人で、その扉をくぐると自然に扉が閉じる。
そしてその部屋の中央には真っ黒な板。
人工物としか見えない真っ黒な板。例えるならば、モノリスのようなものだ。あの何だか分からないが世界中に急に設置されたりするあの板。
『パーティ名を登録してください』
と急にいかにもな人口音声が聞こえる。
「ふむ、クリア者を登録するということですかね?」
「そうみたいだけど、どうする?」
「わしは何でも良いわい」
「自分も何でもいいかな」
「僕もこれと言って意見はありませんね」
「隊長殿が始めたダンジョンアタックじゃ、隊長殿が決めたらええ」
「う~ん、あまりこういうセンス無いんだよな。折角三人だし『三銃士』とでもしておきますか、ダルタニアンはいないけど」
「わしは嫌いじゃないぞ。誰一人としてレイピア使いはおらんがの」
「僕は変な名前でなければ、かまいません」
『三銃士で登録されました。それぞれのイベント用ダンジョン最初のクリア者は次回イベントの参加権を得る事となります。詳しい内容は後日となります』
ふーん、イベント用ダンジョンてそういうことなのか、つまりダンジョン攻略が実質予選みたいな。
しかし、ラストがご飯作るだけで終わったんだが、それでいいのか???
そんな疑問をよそに、ダンジョン前へと転送されるのだった。