139.ダンジョンアタック-セカンドトライ-2
■ 肉 ■
本ゲームでは時間経過と共に食材の品質が変化する。
基本的には古くなると使用不可、またはデバフ効果が現れる。
しかし、肉については適正期間放置すると徐々に品質が上がる。
一定期間過ぎると品質が一気に下がる。
即ち、腐るぎりぎりまでは熟成として扱われ、
保存状態を良好に保つ道具や施設なども存在する
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「騎士殿は今のところ余裕ありそうだけど、まだ行けます?」
「うむ、問題ないの。隊長殿は少々きつそうじゃの」
「まあ、攻撃力やなんかが魔物相手だと不足しがちなのはいつもの事なんですけどね」
「今までのところなら罠やなんかに集中してもらって、良さそうじゃがの」
「ん~とりあえず、進んでみましょうか。無理そうなら、考えましょう」
ちょっと休憩した後、ダンジョンアタックを進めていく。
次の階は 鹿
肉ダンジョンとは聞いていたが、何かジビエとでもいうのか、牛豚鳥じゃないのな。
鹿は何が厄介って、角がある事。
角をこちらに向けて走って来られるだけで、避けることが、非常に困難だ。
ブロックも、とげとげした角のどの位置を受けたらいいのか、かなり集中力を削られる。
それでも何とか、自分がブロック、騎士殿が攻撃で役割分担をして進んで行く。
そして、罠の種類がさらに増える。
まずはここで来た定番落とし穴、<索眼>で見ると落とし穴の縁取りが、ちょっとだけ温度が変わって見える。
さらに棘の蔓、試しに触ってみると、痺れて麻痺が起こったので、すぐに薬とテーピングで処置する。
それまでより罠の数自体が大分増えたところに、同時に鹿も現れる。
自分が罠を外したり、片付けている内に鹿が現れ騎士殿が倒すが、
2匹同時に出てきたら自分も戦闘に加わらずにいられない。
時にやむを得ず罠にかかり、時に数体の鹿に囲まれダメージを貰いながら、戦う。
回復に費やす時間や物資も増え、徐々にきつくなっていく
そんな折、鹿ゾーンだと思って油断していたところに、上空から攻撃をくらう。
殺気を感じたが、相手の姿が分からず、思わずダメージを食らってしまう。
食らって初めて、相手の姿を確認できたが、
精悍な顔をした鳩のような鳥。
「クソ、何だこの鳥!」
小さく小回りが利き、かなりの至近距離を飛び回りながら、しつこくつついてくるので、つい声が出てしまう。
「こりゃ、鶉じゃの」と言いながらウズラを両断する騎士殿
「すみません助かりました。ウズラってあの卵のやつですよね」
「そうじゃのその鶉じゃの」
「卵は好みなんですけど、落ちるのはやっぱり肉か」
「うむ、やはり少々苦しくなってきたようじゃな」
「ええ、自分がちょっと足引っ張ってますね」
「ん~しかし、罠や何かを任せておる以上、本来はわしが護衛しなければならないのだが、足りてないのを感じておるわい」
「まだ<解除>のスキルも取得したばかりだし、せめてもう少し上の階でスキル熟練度を上げて、罠はずしやなんかにかかる時間を短縮していければ、もう少し進めますかね」
「うむ、見たところ隊長殿も戦闘力自体は低くは見えないからの、ちゃんと【訓練】を積んでおるのだろうの。武器の種類によって相性や不得意な相手もいるもんじゃからの」
「まあ、話ばかりしていても解決はしないでしょうし、上階に戻って熟練度上げ行きましょうか。宝箱も出たら楽しいですがね」
そう言って、兎階、猪階で魔物を狩り、罠を外し宝箱を開けて回った。
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時間の許される限りダンジョンを歩き回ったが、只管肉が手に入り、たまに金貨が手に入った。
もっと装備品とか素材とか手に入るんじゃ無いかとこっそり期待していたのは内緒だ。
肉ダンジョンだと言われていただけあって、アイテムバッグを圧迫する大量の肉。
「騎士殿、肉いります?」
「ふむ、悪くならないようであれば、肉の魔術師につなぎを取ろうか?」
「肉の魔術師???」
「そう呼ばれておるプレイヤーじゃよ。どこか拠点を通して売買すれば問題なかろうの」
「自分のアイテムバッグは食材であれば保存機能付いているので、売れるなら助かりますね」
と言う事で、騎士殿のおかげで大量の肉については何とかなりそうだ。
戦闘から何から頼ってばかりだ。
ふむ、もう少し探索に寄せたスキルセットで行くか、もう少し戦闘に寄せるか。
はたまた、誰か誘うか・・・・自分知り合い少ないしな。
なめてたつもりは無いが思ったよりきついな。
まあ、でも先に進むためにもこつこつ行くしかない。
この日以降、時には騎士殿と時には一人で、ダンジョンに篭る。
全然進まない自分のダンジョンアタックに付き合ってくれる騎士殿には感謝しかないが、
正直ここまで腕の立つ人ならどこに行っても引く手数多だろうに、申し訳ない気持ちになってしまう。
そして、肉と宝箱で只管お金だけが増えていく日々、全くお金に困っていない(ゲーム内だけなら)自分には停滞感と焦りだけが、つのる日々が続いた。