134.クラーヴンなりのレギオンボス討伐
「まあ、全員ボスの姿は見たことが有るという認識で、話を進めていく」
「大丈夫なのいつも黒の森から観察して、いずれ倒す為に準備してきたの」
「じゃあ、質問だが、何故今まで手を出さずにいた?」
「理由は二つ、一つ目はあいつに攻撃を当てる手段が無いから。地道に射程は延ばしてきたけどまだまだ。
もう一つはあいつを撃ち落した後に倒しきるまで攻撃を加える当てが無かった事。
後者は今回は嵐の岬に任せるって言う事でクリアできるの」
「そんなところだろうな、そして前者の為に超射程バリスタを作った。これで解決だ」
「作ったの?」
「ああ、作った。ただ問題がある。かなり無理のある兵器なんで、一発しか打てん」
「じゃあ、一射で決めるの」
「いや、念のために3基作った」
「作ったの?」
「ああ、作った。もし壊れたらまた作るから仕切りなおそう」
「そう、大丈夫なの。1射で決めるの」
「そうか、じゃあ、行くぞ!!」
「おぉぉぉい!クラーヴン!それじゃあ隊長より雑だぞ!もうちょいちゃんと説明しようや~」
「そう言われてもな俺は戦闘は専門外だからな、何も文句無いから任せるぞ」
「任せておくの」
「おい、隊長で慣れてたつもりだが、【帝国】のプレイヤーは皆こんな感じなのか?アンデルセン」
「まあ、こんなもんだぜボス。でももうちょい詳しく説明していくか」
「今回の狙いはアレ!あの遠くに見える巨大怪鳥、尾の長いそうアレだ!」
と言ってアンデルセンが指をさす。
「で、だ!クラーヴンが超射程バリスタとやらを作ったから、それでビエーラの嬢さんが撃ち落す。俺らがボコボコにする。
今回の発起人クラーヴンは今度のイベント用素材。
それ以外の特典やなんかは手に入れたもん勝ち、素材は売って金に換えるか使いたいやつは金で買い取る。んで皆で分配だ」
「アンデルセン・・・・お前も大分毒されたな。そもそもそんな超距離射程バリスタ本当に作れるもんなのか?」
「作った」
「そしてあんな上空に飛ぶ魔物に当てられるものなのか?」
「当てるの」
「そうか・・・じゃあ、問題はどこに待機するかだな。ある程度分散するにしても、最低限味方が集まるまで、時間稼げるだけの戦力は固めないとな」
「それなら誂えたような広場があるのそこで全員待機してれば、そこに落とすの」
「いや、当てるまでは分かるがよ。ピンポイントで落とすとなるとな」
「任せるの、どれだけこの国のこの森の風を見てきてると思うの?」
「そうか、任せよう。で、カバリーは奥さんのサポート、ソタロー君はうちで何人か率いてくれると」
「微力を尽くします」
「んじゃ、その広場とやらで、罠でもはって、怪鳥が落ちてくるのを待つとするか。とにかく一度落ちたら、体張ってうちの連中で、再び飛ばないように殴り続けるのみだ」
そう、バルトが締めてそれぞれ配置に就く。
嵐の岬及び【帝国】【古都】新参のソタローは広場に。
バリスタを設置するクラーヴン、射手ビエーラ、フォローカバリーはビエーラが指定する丘に。
クラーヴンが手早く設置を終えると少しの間ビエーラが瞑想する。
「うん、そろそろなの。そろそろ上昇気流に乗るために羽ばたきを止めるの、自然の力に任せる一瞬が狙い目」
そう言って、目に補正のかかる薬を飲み込み、うつ伏せで超射程バリスタのトリガーに指をかけ構える。
それまで長い尾をなびかせ羽ばたいていた巨大怪鳥が、羽ばたきを止め羽を広げたままゆっくり旋回し、
浮き上がる瞬間
「ここ」
空気の層を突き破り、太く長い巨大な針を思わせる矢が放たれる。
そしてそれはそのまま巨大怪鳥に突き刺さり、怪鳥が風に運ばれながら落ちていく。
「行くの」
そういって、カバリーの後ろにすぐさま騎乗するビエーラ。
|
|
|
その頃、怪鳥が落ちてくるまで、罠やら設置が終わった嵐の岬の面々はポーの作った食事に舌鼓をうっていた。
バフつきの食事でボス戦を有利にする為<簡易調理>を手に入れたポー。
思わぬ質のいい野外食に喜ぶ嵐の岬の面々。
しかしそんな時間は続かない。
あっという間に影がさしたと思ったら広場の中央に矢が刺さった巨大な鳥が落ちてくる。
すぐさま我に返ったバルトが、指示を飛ばす。
「おい、とりあえず景気づけにファイアーボールだ!」
言うが早いか怪鳥とその周辺に火花が咲く、そしてそこに巨大な音が連なる。
【狩人】が使う罠の一つで、大ダメージを与える火薬樽に引火したのだ。設置式で投げつけたり出来ないのだが、巨大な魔物と戦うには有効な一手だ。
そして、爆発が終わると同時に飛び掛る嵐の岬近接攻撃部隊の面々。
負けじと矢の雨を降らす遠距離攻撃部隊。
単体補助術や、まだ取得者は少ないが複数人への戦術系補助術が飛び交う。
鳥は飛んでこそ強いもので、あっという間に生命力を削られる怪鳥。
突然一鳴きすると、同時に士気を高める術で士気低下を中和しようと目論む嵐の岬。
しかし、それは士気低下攻撃ではなく、全方位に圧をかけて攻撃の手を一瞬止めさせるものだった。
大きく羽を広げ、足を曲げ勢いがついたところで、
体が動き出す嵐の岬。
そこで、間一髪もう一つの罠。巨大落とし穴を発動させ、飛び立たせないことに成功。
また、たこ殴りに殴り始める。
時折抵抗し、羽で叩きつけてきたり、くちばしでつついてきたりするが、お構い無しに全方位から殴りまくる。
すると今度は大きく息を吸い始める怪鳥。
そして、自分の真下に青いブレスを吐く。
するとその勢いで体が浮き上がり、羽ばたき始める。
嵐の岬の面々はといえば、ブレスの余波に巻き込まれ、凍傷及び凍結のデバフが出ている。
万事休すと言うタイミング。
そこに、どこからとも無く、細長い光が走ったかと思えば、怪鳥の左目に矢が突き立つ。
「遅くなったの、でも私の矢からは逃れられない。この距離なら虫の左目でも射抜くの」
急所に矢が刺さった怪鳥は再び地に落ちる。
距離が離れていてデバフの症状が軽かった遠距離攻撃組みは、もてる限りの攻撃を加え。補助組は近接組の回復に専念する。
一人また一人と戦線に戻り、怪鳥にダメージを与え続ける事で、ついに口の中に魔石が露出する。
近接職数人で、魔石に攻撃を加える事で、破壊し、巨大怪鳥討伐に成功する。
クラーヴンが欲していたのは巨大怪鳥の[尾羽]
ファーストアタックはビエーラ。装備品ではなく素材、真っ直ぐ伸びる巨大怪鳥の骨。中空になっており軽い、それでいて巨体を支える丈夫さを持つそれは、より長射程のボウガンの銃身になるだろう
ラストアタックはバルト。精神力を使用し、45度の弧状に凍傷のバフを含んだ術に順ずる範囲攻撃起こす肩当。クーリングタイムは長め、ダメージは低め
MVPはビエーラ。雪の結晶が浮く透明な涙型の宝珠。
一日に一回のみ使用可能、戦っている戦闘フィールド上の敵魔物全体に寒冷系ダメージ。確率や相手の耐性により凍傷や凍結バフが発生する。
ただし、道端の中小魔物相手に使用すれば、わらわらと集まってくることは想像に難くない。
後は巨大怪鳥の素材は買い取られ、お金を配分する。