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129.大霊峰-水路-~-滝-~-滝-

 ■ 霊水 ■


 大霊峰山頂にて採取できる水

 万病に効き、寿命が延びるとすら言われる

 残念ながら、採取すれば数日で普通の水に戻ってしまう。

 この水は世界の端である大霊峰の先にある聖なる存在の力を受けていると云われている。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////



 足元は氷、すぐに割れることは無いのだろうが、透き通っていて、その氷の下に水が流れているのが見える。


 両サイドは壁だが、凍りついている。


 しかし、落ちてくる前も氷だった。


 普通氷の下には水があるだろうと思ったのに、水の下は何も無く水路があるのみ


 先程まで戦っていた氷フィールドはどうやって作られたのだろうか? 


 一先ず上流に向かって進んで行く


 時折、雪が再度固まったような場所は光が差し込み、足元の氷が光を照り返している。


 多分頭上に裂け目があるのだろうが、登れるような壁ではない


 黙々と歩いていく。


 そして、辿り着く終着点、ちょっとした小部屋のようになっているが


 正面はただ壁があるのみ、抜け道があるのかはたまた正面の壁を登れるのか、周りを見渡しながら、


 適当に壁をペタペタ触っていると


 地響きが起こる


 周囲を警戒していると小部屋中央の床の氷に罅が入り、白くなっていく。


 罅割れが徐々に大きくなっていき、足元すら危ういので、念のため部屋の外に出て、中を観察していると


 何度か目の地響きで、床を突き抜け、氷の下から生える鋏


 そして、完全に小部屋の氷が割れ、這い出してくる大きな蟹


 正直この小部屋で戦えるサイズじゃないのだが、次の動きを見ていると


 巨体の上の小さな目を動かし、自分を見つけるとこちらに向かってくる。


 ゆっくり後ずさりすれば、それに合わせた様にじわじわと近づいてくる。


 そしてもと来た道に潜り込んできて、一拍の間があったと思ったら、こちらに向かって走り出してくる。


 咄嗟にブロックしたが、あっさり吹っ飛ばされる。


 転がりながら何とか立てば、容赦なくもう一度跳ね飛ばされる。


 このままではまずいので、すぐ起き上がり逃げるべく走り出す。


 さっきまでとは逆に水路下流に向かって全速力だ。


 付かず離れずの絶妙にいやらしい距離感で追ってくる、蟹


 そしていやらしいまでの一本道、曲がりくねりはしても、迷わないし、撒くことも出来ない。


 只管走って逃げる。


 そして、進行方向に外の光が見える。


 速度を落とすわけにも行かずにそのままの勢いで、飛び出すと


 下は滝だった。


 底の見えない程高い滝、所々岩に当たって白い水しぶきを上げている。


 そして、落ちていく蟹


 自分も投げ出されたはずなのに、落ちていく蟹を上から見ていることに気づき、


 自分の状態を確認すれば、どうやら飛び出したときに何かの蔦が絡まっていたらしい。


 蔦を伝って、飛び出した水路洞窟入り口の上まで登りそのまま、壁をつかみ登っていく。


 途中で、邪魔になった蔦は切り。


 別の蔦を掴んで、登れる場所もあった。


 そうして、ようやっと足場のあるところに出ると、崖周りに人一人分が通れる小道になっている。


 そのままその小道を進み続ける。


 よくよく考えたらいつの間にか吹雪が止んでいるのだが、一体ここの高さは如何ほどなのか


 しかし、まだ薄暗さは残っている。


 吹きすさぶ風が冷たいが、体力にダメージを食らうほどではない。


 かなり進み、足場が大きく広がっている場所に出ると、焚き火がある。


 セーフゾーンだ。


 とりあえず、休息を取る。食事をし、体力を回復させ冷静に自分が今どこにいるかを考えるが、ちょっとよく分からない。


 絶壁を登り、雪原に降り、雪原を抜けて、氷のフィールドから落ち、地下水路を下り、水路の水が滝を作る場所から、壁を登り、足場についてからはやはり登っている。


 再出発し、細い足場を只管に行く、


いつの間にか、本当にいつの間にか辺りが明るくなっている。


 そして、小道が終わりぽつんと滝がある。


 小道の他は絶壁に面したところにそれなりの範囲の空間


 よく見れば真ん丸い空間、半分は空に面しているとしか言えない下に絶壁が広がるだけ


 半分は壁、まだ上がありそうだ。


 壁の一部から水が流れ込み滝になっている。


 滝の落ちている場所は池になっており、随分と綺麗な水のようだ。


 滝の池の隅に一段高くなっている場所があるので、


 登ってみれば、少し壁が抉れ、セーフゾーンがある。


 さっき休憩してからは歩くのみで、ダメージも無いので、もう少し周りを散策する。


 ふと気がつくが、大分標高が高いはずなのに、温かい。


 試しに外着の雪山系防寒具を脱ぐが、全然平気だ。


 長靴も軍靴に替えて、動きやすい格好になる。 


 そして、周囲をよくよく観察してみれば、どうやら自分が登ってきた崖側の道の他、


 一つは壁の内側から登ってくるルート


 一つは雪原から登ってくるルートもありそうだ。


 しかし、いずれも登ってくるルート。


 つまり登頂するには壁をよじ登るしかない


 はっきり言って今回は晴れてるし、どこまで登ればよいのかも見えている。


 ここまで来た自分からすれば、ちょっと行ってくる程度のものだ。


 登りやすそうな岩肌を見つけ、滝の横をするする登る。


 何の不安も無くただあと一息だと登りきれば、


 滝に水が流れ込む川


 何も無い土道


 川につながるのは果てしなく広がる海


 「確かにこりゃ海だわ」


 と、声に出てしまう。


 遥か彼方にぼんやりと何か見えるが、本当に彼方だ。


 泳いでいくなど到底現実的じゃない。


 しかし、それ以外は何も無いのだ。登頂した筈なのだが、何も無い。


 再び、壁を降りて滝の前に佇み、どうするか考えるが、


 一個だけ気になった。


 本当にどうでもいいような事、もし海の水ならこの滝の水はしょっぱいのかな?と


 試しに池の水を飲んでみる。綺麗だし、所詮はゲームだから体に害がある訳でもなし、


 飲んでみると、普通のおいしい真水だ。


 ちょっと甘さすら感じるような甘露


 体の奥がスーッとして、あらゆる疲れが抜けたような気分だ。


 いや・・・なんか本当にそういう効果があるような感触だ。回復の泉か?


 そんな事を思うと頭上から大きな影が、


 滝のあるこのフィールドを覆うような巨大な影が、自分の背中側、空に面した側から落ちてくる。


 「嗚呼、なるほどこの池の水を飲むのがトリガーかよ」思わず一言呟く。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コツコツとした進み具合がこの作品の魅力だと思ひます。
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