124.重宝樹
■ 重宝樹 ■
世界を支える一柱
世界樹の子にして重力を司る象徴
世界の穴と言われるどこまでも続く深い穴に根付く宝樹
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再びログインして、村まで案内してくれた犬人族と歩くのは岩場
村までは木々が生えていたが、それより奥は崖と岩、非常に悪い足場を慎重に歩く、
時折崖の隙間から見える景色はあまりにも広く雄大で、落下するような怖さは感じない。
すると周りの岩場から切り出したような一つの石造りの祭壇があり、大きな柄の布がはためいている。
その中央に大きな洞穴がある。
「ここだよ!行ってらっしゃい!」
犬人族に促され、穴の中に入っていく。
正直に言うと祭壇て、神の居場所のようなイメージで祭壇に登る事すら抵抗があるのだが、仕方なし
いつものパターンならこの穴の途中で、広間があって、きっとあいつが待っている。
自然と背中から宝剣を抜き、グリップを確かめ、呼吸のリズムを整え、緊張のバランスをとっていく
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一向に広間が現れずに、寧ろ穴の終わりが、外の光が漏れる出口が、見えてくる。
出口に立つと目の前には巨大な樹
よく見渡せば、四方を壁に囲まれ頭上は空まで円柱型に抜けた空間、下は真っ暗どこまで続くか分からない大穴
壁に突き刺された根で、その大きな姿を支えてる。
そんな大樹
『ふむ、こんな瘴気に満ちた空間に現れるとは、神に選ばれた特別な存在のようだ。宝剣も持っているようだし、任せるぞ』
と一方的かつ偉そうな提案だが、まあ宝樹様だし仕方なし、
いや、声が口調に似合ったオーラのある女性の声だったので、寧ろありよりのありってやつだ。
自然とその人の下にあることを受け入れられるようなそんな声、落ち着きつつ責任感を感じさせつつ、自然と人を従わせられるような。この人の為なら自発的にやるかって気持ちになるような。
本当に自分はそんな人の元で働きたい、自分の会社の社長と来たら、ただ自分を崇めろみたいな雰囲気をかもし出すどころか口に出しちゃう小物ぶり、他者から認められたくて仕方が無く、自慢どころか自分がどれほど苦労したかの聞くに堪えない話ばかり、
いっそお前が若い頃他人から相手にされなかったの自分の人間性の所為じゃないの?って言いたくなるような・・・・・
うん完全に思考がそれた
足元を見れば、宝樹の太い根が、ちょうど良く張っていて、立つ事が出来る。
穴の中央の宝樹を中心に集まるように根が張り巡らされている。
ゆっくり根の上を歩き宝樹の幹に近づいていくと
突然揺れを感じ、しゃがみながら周囲を見ると、遠く右奥のほうで、根が落っこちていく。そしてそこから大きな黒い塊が走り、宝樹の幹を辿り登り、そして自分のいる根に飛び降りてくる。
もう一度揺れ、根にしがみつくように耐えて、相手の姿を良く見ると
蜘蛛のように八本の足をもつ黒い塊
蜘蛛のようだが、頭も胸も腹も無い、黒い塊に足が八本
見ていると、黒い塊の目が開く
不規則に配置された目が一斉に開く、集合体恐怖症の他人なら、叫んでしまうかもしれない。
しかもその開いた目が、また不規則に塊の上をヌルヌルと動いていく。
そして、動き出す。自分に向かって一直線に走ってくる。
近づけば近づくほど、大きい
パーティボス程度の大きさか?今までは精々人間と大きさが変わらない程度だった筈だが、随分成長しているようだ。
相手は、向かってきているが、左右は穴であり、逃げ場は無い、隣の根に飛び移るにはもっと宝樹の近くまで行かねばならないだろう。
慎重に相手の動きを観察しながら、いつでも走り出せるように構え、そして溜める
幸い体の大きさの割りに足は棒のように細い、覚悟を決め、八本の足の隙間を走り抜ける。
冷や汗が吹き出す。いつものパターンなら、ちょっとでも触れれば取り込まれる。
走り抜け、<疾走>の効果が切れるまで宝樹に近づいていく
振り向けばいつの間にか方向転換し、自分に向かってくる瘴気生物
隣の根に移ろうとした瞬間、瘴気生物の動きが、止まり前足二本を振り上げ自分に突きたててくる。
足の間を抜け、振り向きざま斬り落とせば、瘴気の臭いと共に消えていく
そして、隣の根に飛び移る。
瘴気生物は足を再生させ、自分が飛んだ距離を普通にまたいでいく。
その緩慢な動きの隙を突いて、またいだ足を切り落とすとバランスを崩し隙間に体が落ちる。
してやったりと、思わず笑みが浮かぶが、残念ながら元の根に残っていた足が根に巻きつき、すぐに根の上に体勢が戻る。
相変わらず、形の変化が柔軟だ。やはり元はスライムなのか。
お互い違う根に陣取り睨み合うと突然脚を思い切り曲げ高く飛ぶ瘴気生物
姿を視界から切らさないように目で追いかけていると、自分の真上に落ちてくる。
すぐさま距離を取るべく走りかわす。
そして、着地と同時に走り出してくる瘴気生物、
避けるべく、集中し待ち構える。
うまく抜けられる隙間が見つけられず、前足を一本切り落とす。
バランスを崩しながら二の足をこちらに向けてくるのでそれも切り落とす。
そして、体勢を崩し、今度は胴体が自分に降ってくる為、走りだすと
不意に動く後ろ足、バランスをとる為だろうが、最悪のタイミングで向かってくる後ろ足
反射で避けようと横に飛ぶと
そこに足場は無い。
スローモーションになる世界で、重力に引っ張られ穴に体が落ちていく、いつの間にか空の方を向き
宝樹の隙間に漏れる陽の光をみる