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120.<戦陣術>奥の手

 ■ 看破 ■


 通常自分の状態は手の甲に表示されている。


 しかし敵対する相手や自分以外の者の状態を見るには専用のスキルが必要となる。

 何種類かスキルは存在するが微妙に見ることの出来る範囲が異なる

 <看破>は敵対する相手の状態を見ることに特化し、<隠蔽>等のスキルにも対応できる


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 ダメージも十分許容範囲に抑えられたので回復と平行して、虫との距離を詰めていく


 「さて、相手の攻撃はしのいだし、次はこちらのターンなわけだけど、当然有効な攻撃方法は?」


 「分かってないな、何の情報も無い」


 「だよね、まあ当てられるところに試していくしか無いか」


 「おう、じゃあこいつに指示出してくれよ」


 と赤の横に黒い革装備と見られるプレイヤー

 ゴーグルにスカーフで顔は分からない、スリムな雰囲気の体にぴたっとした装備から何となく【偵察兵】っぽさを感じさせる


 「よう!隊長よう!俺の隊のやつ貸してやるんだからちゃんとやれよ!まじで外部のやつの手を借りるとか騎士団(うち)の連中もプライドってのもんが無いぜ!まあ、一度は俺倒してるお前だから一回は言う事聞くけどよ!次はねえ!」


 と黒騎士が煽って来るのだが、今まで散々黙ってたのになんなの急に


 「悪いな。黒のやつは士気上昇して気持ちが高ぶらないとしゃべらないんだ。それはそうとこっちのゴーグルのは相手の状態や生命力残量なんかを見破るスキル持ってるから、うまく使ってくれ」


 「それは、心強いね、よろしく」


 何も言わずうなずくだけのゴーグル。黒の隊ってしゃべらないの???


 一先ず、近接攻撃から試していく、長柄の武器を持ってるプレイヤーでも届くのは足だけだ。

 接近すればかなり高い場所に胴体があり影を作ってる


 斬る、突く、叩くと試していくが、ゴーグルに都度訊ねると


 首を振って「微小」


 ほとんどダメージになってないようだ。


 寧ろ、緩慢な動きだが時折足を振り上げて落としてくる。上を見ながら落ちてくる場所を見定めて避けるが、それなりの範囲に衝撃が走り、直接当たる者は今のところいないが、近い者はノックバックで飛ばされ、多少離れていても地面が揺れて一瞬身動きが取れなくなる


 重装備や大盾もち、タイミングよく防御できる自分はかなり近寄ってもそこまで大きな影響は出ないが一瞬の硬直だけは避けられない


 次に頭、腹、尾の先の籠と試していく


 「ところで何で弓使いいないの?あれだけ大きいんだから、遠距離攻撃絶対有効だよね?」


 「悪いが騎士は弓系のスキルが出ないからうちのクランには取得するやつがいないんだ」


 「ちょっとまて【王国】って【弓兵】いないの?」


 「【弓兵】はいるが騎士じゃ伸びないんだ。<騎乗>系のスキルは騎士がよく伸びるがな

 基本うちのクランじゃ騎士取得目指すから、弓使いがいない」


 「いくらなんでもバランス悪く無いか?」


 「まあ、馬上で術使うタイプの騎士がNPCにもいるからそっち目指すやつはいるぞ」


 「分かった」


 一先ず手の届かない位置にある虫の各部位に様々ダメージになる術をぶつけていく

 近接武器の使い手も<精霊術>と武器を合わせた中遠距離攻撃持ちは参加する。

 攻撃術は<精霊術>がほとんどのようだが、一気にエフェクトが派手になっていく、ぶつかった瞬間に広がる爆炎、薄緑色の刃が連なり、水球が叩きつけられ・・・・


 <風精術>がちゃんとエフェクトで攻撃確認できる事を知れたのはありがたいな。あのスピードなら避けるなり防御できそうだわ


 「して、ダメージは?」


 「頭、尾、多少」


 うん、どうにかして頭と尾を攻撃していかないとな。


 そのまま攻撃を加えていると急に全ての足をまげて胴体が近づくにつれ影が濃くなり、

 踏み潰されるのかと慌てて体の下から抜けだすと同時に

 虫が跳躍する

 何十メートルだ?とにかく大きくジャンプした虫は遥か彼方まで一息で飛ぶ、攻撃を嫌がって距離を取られたのか。

 十分視認できる距離だが弓や術が届くような距離ではない

 とにかくまた距離を詰める為に、虫に向かって走り出すが、同時に虫もこちらに向かって走り出してくる。

 離れている間はよしよしと思っていたが近づくに連れてその大きさ、足回りに発生しているエフェクトから絶対吹っ飛ばされると確信し、進行方向を変えて虫にぶつからないようにずれていく


 何とかすれ違いつつ方向転換し、再度虫に向かって走っていくと虫は勢いを落とさずに90度直角に方向転換し走り続ける。虫を追いかけるように走り続けるが、全く追いつかない。


 一旦諦め、止まって虫の様子を見ていると。虫もある程度で止まり。何をするでもなく停止する


 「回復」


 いきなりゴーグルに告げられる。


 どうやら距離を取った虫は自然回復してるらしい、今度こそ走って虫に近づき攻撃を加える。


 するとまた同じようにジャンプして逃げ走りまくる虫


 「このままだと埒が明かないぞ!隊長。私に策がある!」


 と白が急に策とか言い出した。まあ自分もこのままじゃ駄目だろうと思ったし、聞いてみると


 「足が速い者と遅い者を分ければ今より攻撃できる時間も増えるだろう!」


 なるほどね、足の速い者でとにかく少しでも早く近づいてダメージ蓄積を増やすと悪くは無いが


 「足が速いのって基本的に軽量近接だよね?足の攻撃の衝撃で飛ばされまくるのがオチじゃない?」


 「避ければどうと言うことは無い!いくぞ!!!」


 「いやだから範囲に効果があるんだから避けるんじゃ無理でしょ?耐久・・・行っちゃったよ」


 駆け出す黒と白の隊それに軽量近接アタッカーたち

 自分も軽量なので、比較的足の遅い重装備と術士は赤に任せて虫に近寄る


 案の定飛ばされまくってる。それでも中遠距離持ちは頭を狙い近接しかないものは足を叩く


 中には瞬間硬直やノックバックと同時に起こる転倒で逃げ遅れ踏み付けをくらい大ダメージを負うものもいる


 しかし、白と黒だけはヒットアンドアウェイでくらう効果を最低限にして攻撃し続けている。


 『行くぞ!』


戦陣術 激励

戦陣術 戦線維持


 取り敢えず陣形も何も無いがこれで多少は効果やダメージを抑えられるか


 そうこうしているうちに追いつく重装備と術士、攻撃を加えているとまたすぐに逃げられる


 だが、今回自分は気がついた。さっきまで陰になってて分からなかったが明らかに前足が赤くなっていた。

 多分相対した時の角度的なものだろうが一番攻撃を加えていただろう左前足


 「次はあの左前足に攻撃を集中してみようか」


 とその場で全員に通達


 虫を追いかける


 軽量組みだけのダメージでは何も起こらないが再度追いついた重装、術士組みが追いついて攻撃集中し始めて間もなく

 虫が足を折っていよいよ頭部が近接でも届く場所に下りてきた。


 さあ、ここでダメージを与えられるだけ与えていくぞ!と勢い込んだ矢先


 虫の尾の籠の放電が高まる。


 何気に少しづつ回復していたのは気がついたが、戦闘スタート時ほどではなかったので、気にしていなかった。


 尾を高く上げた瞬間何の気構えもしていなかった自分は緊張で一瞬フリーズしてしまったが、


 尾からは最初の雷撃の波ではなく、雷球が射出される。


 動けない虫に変わりゆっくりな動きながらもふわふわと不規則に動き回る雷球


 虫に攻撃しつつも雷球を気にし無くてはならない。

 何人かはうっかり触れては大ダメージを負っている。

 すぐに回復してはいるが、なかなかにいやらしい


 するとダメージ蓄積チャンスタイムは終わったとばかりに再び立ち上がる虫

 足は元通りになって、ジャンプで逃げていく虫、また遠方で回復しだす。


 その後は何も打開策が見出せずに時間ばかりが、経っていく

 寧ろこちらが削られもう何人が死に戻りしたか

 

 もう何度目逃げられたか、おおよそ虫の戦闘フィールドの広さも把握しちょうど今真ん中辺りにいるが、完全に千日手の状況にみんなやけになってるのか集中力が切れたのか少々投げやりだ

 こういう時は一呼吸置いて


 「仕方ない!今まで温めてたあの術を使うとするか。奥の手」

 何気に【帝国】にいた時はちゃんと任務で【座学】を続けて取得していたこの戦陣術、今が使い時だろう


 「あん?そんなのがあるのか?」


 「ああ、取り敢えず全員集合」


 全員を自分の前に横隊で並ばせて術を使用する


 「今回は無理『撤退だ!』」


戦陣術 退却


 自分の移動力速度が大幅に上がり、さらに自分の隊を全員自分と同じ速度に出来る術

 ただし攻撃も防御も術使用も出来ない。薬は飲める


 全員で揃ってフィールドの外に向かい始めると急に虫が全力で走り出し追ってくる。

 ジャンプで逃げたばかりで距離があったはずなのにぐんぐん詰めてくる。

 自分もそれなりの移動力があるはずなのに、元のサイズが違いすぎて一歩一歩の距離が違いすぎる。


 ひたすら一直線に逃げ、ギリギリ元来た道に駆け込むと

 虫はまた自分のフィールドの真ん中にのそのそと戻っていく


 「おい隊長・・・・」


 「いやこのままじゃ無理だわ。でも色々分かったろ?帰り道また何時間かあるんだ大反省会としゃれ込もう」


 「そうだな、休憩して飯食って反省会しながら帰るか。何時間も歩くのが面倒なやつは死に戻りしてもいいぞ今日はこれまでだ」


 取り敢えず簡単に食事を取りながら話す。


 「まず、どう考えても馬だろうな」


 「そうだな。ほとんど走ってばかりで、攻撃チャンスが少なすぎる」


 「重装備を前面に出して防御専用術を使えば一発目はしのげるわけだけど、重装備と馬ってどうなの?」


 「騎士はまさにそれだからな。重装騎兵、後は一撃離脱の軽騎兵、機動力のある術士の術騎兵。そんなイメージだ」


 「弓騎兵も欲しいよな【馬国】に伝は無いの?なんかいかにもいそうじゃん?草原の民みたいなの」


 「いるな。馬上短弓使いがいるはずだ」


 「まあ、大して追い詰められなかったし、相手の攻撃パターンもまだ色々隠されてるんだろうけど、人数による攻撃圧力よりも広いフィールドをどうやって移動しながら攻撃加えるかっていう感じのボスみたいだし、全員騎乗で固めていいんだろうね」


 「となるとまずはうちの連中に騎士とらせて【馬国】のクランに伝を作って話し合うところからか、騎士取得のハードルがな。だがバルトのところはぼちぼち取ってる奴がで始めてるしな・・・・」


 「バルトのところが何やってるかまでは分からないけど、最近はちゃんと任務やってるみたいだよ。まずそこからやって情報集めてみたら?」


 「強くなりたければ任務をやりましょうか・・・・やるしかだな。

 それでも前はあっという間に全滅してたんだ大分進歩があったぜ、ありがとう。またな、隊長」


 「また機会があったらね」


 そうして話しながら集落へと帰ると、族長のお使いの方が集落の入り口で待っていて、呼び出される。

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