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119.大光虫《フィロセリア》

 ■ バンシュタイ・ツァイ ■


 バンシュとは、羊肉のミンチを小麦粉の皮で包んだものである

 噛む度に出てくるバンシュの肉汁がミルクべースのスープと合いまって噛むほどにおいしくなり

 食べた後はじわじわと汗をかくくらい体が温まる。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 ここのところ逗留していた集落から歩く事数時間


 「いや、自分は歩くのが仕事みたいなところあるし慣れてるからいいけど、戦闘前から皆疲れきってくたばってるじゃない?」


 「騎乗したままじゃ戦力が半分になっちまうんだから仕方ないだろうよ。最寄があの集落なんだ。寧ろ歩きで辿り着けるところにレギオンボスがうろついてるだけありがたいだろうよ。もうすぐ最後のセーフゾーンだ。そこできっちり休憩してレギオン狩りとしゃれ込もうぜ」


 ゲーム内で適宜休憩挟みながらとは言え、数時間歩くってのは流石につらいと思うんだが、なんだかんだ歩ききるこのクランのメンバーは大したものなのかもしれない。

 自分だけならセーフゾーンで一回ログアウトするところだが、やっぱりトップクランのモチベーションの高さと言う事なのか


 ボスの最寄のセーフゾーンと言う事で大休止にして、全員装備を点検し始める。

 道中大型の魔物は避けて歩いたにしても少々の小型の魔物との接触はあったが、それは騎士団のメンバーに任せていたので、自分は特に何も消耗していないので料理に取り掛かる。


 取り出したるは、まずミルク!白黒のホルスタインではない、小柄だが野性感のある毛の長い茶色い牛を集落で飼っていた。

 そして何か点心みたいなやつ!小麦粉で作った生地で羊肉のミンチ包んだだけ小ぶり水餃子みたいなものと言えば分かりやすいか?ちょっとハーブっぽい葉っぱも入れたけど、それは集落で料理してる人に売ってもらった。

 集落にはお店など無いが外から来た人にはある程度必要なものを売ってくれる。


 スープの基本の味付けはやっぱり青い瓶の調味料。

 自分は料理のさしすせそで、一から味付けできるような腕は無いので、現実でも○○の元や創味○○なんていう出来合いの味付けを用法用量間違えずに余計なものを混ぜない事こそ料理に失敗しないコツだと思っている。

 

 青い瓶の調味料を溶かしたスープにミルクを入れて、別鍋で茹でて火を通しておいた点心みたいなやつを投下


 小さめ水餃子入りミルクスープみたいなやつ完成!


 みたいなやつってのは名前がよく分からなかったから。

 教えてくれた集落の獣人は『バンシャンチャイ』って言ってる様に聞こえるのだが、何回聞いても違うといわれて名前のことは諦めた。


 スープの味付けは多少自分好みだが、基本ミルクと肉の集落料理の中ではかなり食べやすかったので、これに決めた。


 どんどん皿に盛って回していく100人いると流石に手間だが、こんな時も呼吸が合っているというか、小学生時代の給食当番の経験が生きているというか、鍋からよそう自分の前にちゃんと列を作って無駄な動きも無く受け取っていく。


 配り終えれば、全員で一斉に食べ始める。


 「おいおいおい、隊長これ生命力と体力にバフついてるじゃねぇか」

 

 「そうね、この料理の効果みたいだね。血流改善と体力増強って集落で料理を【分析】した時書いてあったし、体力はアレでしょ?スタミナみたいな?ゲージは無いけど減るとお腹減っちゃうやつ」


 「そういうことじゃなくてな、携帯食料は食べてからボス戦に挑むようにはしてたんだが、まさか料理バフ付いたままってのは無くてな【簡易調理】うちでも取らせるか」


 「街で食べてから挑んでもボスに辿り着く前にバフ効果切れちゃうもんな」


 いそいそと食事をし、空いた皿は投げれば光の粒子になって消える。

 景気づけとばかりに地面に皆で叩きつける。

 何かのアニメでシャンパンのグラスを床に叩きつけて士気を上げるシーンを真似して


 セーフゾーンを後にする。


 一見ただのだだっ広い平原だが、そこを歩けば意外と起伏が激しい高地、背の低い草だけが生える荒野

 ふと視界が開けたと思った瞬間目の前にいるのは見上げるほど大きく、影をつくる


 黒い扁平な虫


 正直なところ自分は虫はあまり好きじゃない。子供の頃はそれこそ手でも触れたもんだが、今は無理だ。


 それでもじっくり全体像を確認すると昆虫で言うと腹に当たるところが妙に長く、末端に丸い籠状の物がついている。

 赤黒く脈打ついかにも生き物然とした不規則な形の籠の中に青白く静電気のような物がはじけて音を立てている。


 未だにこちらに気がつかないのか、遠くを眺めているように見える虫、

 ぞろぞろと一定距離を開けつつも隊列を使わずにおおよそ密集隊形に並び大盾重装を最前に

 回復、支援を含む術士を後列に

 近接アタッカーを中列と


 一塊になるように隙間を詰めて歩を進めていくと相手もこちらに気がついたようにゆっくりとこちらに向きを変える。


 虫がやや尾を下げるような動きに合わせて


 『行くぞ!』


戦陣術 激励


 同時に音はないが、虫を中心にやや空間が歪む様なエフェクトが発生する。


 士気低下攻撃を中和しつつ十分な士気を保持できたところで、


 「密集隊形!『防御だ!』」


戦陣術 岩陣


 ほとんど間もなく今度は尾を空に突き上げ籠状部から青白い電撃が放電し、その尾を振り回すとそこから地面を津波のように電撃の壁が迫ってくる。


 全員防御に専念し、話しに聞いてた最初の全体攻撃は凌ぎきる。


 よく見れば虫の尾の籠の中が暗くなっている。静電気が走るような音も消えている。

 一回打てば消費して、当分打てなくなる仕様なのかとあたりをつけて、この後の戦い方を練る。

 

 どれ位で回復するのかも予想できないし、観察と警戒を忘れずに密集隊形から横隊に変形していく

戦い始めまでですが、勘弁してください。

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