117.ピンクの師匠から赤の目的
■ 擒拿術 ■
<掴み>スキルを持っている状態で習得可能
<掴み>が<擒拿術>に変わるため、他の<掴み>関連術は習得できなくなる。
相手を掴んだ状態でのみ発動可能の術、掴んだ部位や掴む相手の状態により発動する術が変化する。
ダメージを与える事は可能だが、比較的デバフ中心の術である。
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「よう、ちょっといいか?隊長」
「いいわけないね!何言ってるの!お兄さん今ドスケベになるために真剣よ!もうすぐ次の術覚えるんだから邪魔しちゃ駄目よ!あっち行くね!」
すごすごと立ち去る赤騎士と黒騎士
「まったくどこのむっつりスケベね!【訓練】中に話しかけてくるなんて常識がないね!やっぱりオープンスケベじゃなきゃ駄目よ!」
「確かにヒトって自分がスケベな事認めてから始まるみたいなところありますよね」
「そうよ!流石ドスケベの才能に溢れるお兄さんよ!じゃあもう一個くじ引きするよ!」
そう言って差し出されるまた三本の紐
適当に一本引くとまた黄色に塗られてる。
「またハズレよ、でもお兄さんなら大当たりよ!ドスケベの彼方を目指すお兄さんにはうってつけね!
擒拿術 蛇結茨ね!これは服や装備のみを掴んだ時に瞬間硬直にする技ね!どんなメリットがあるか分かるね?スケベだものね!」
「蛇結茨→猿捕茨のコンボが使えることですかね?」
「そうね!でもそれは応用ね!先走りすぎちゃうのは駄目よ!心は熱くでも冷静にね!異性は焦らず丁寧に扱うものよ!
硬直デバフのメリットはそれまでの行動を一回解除できる事よ。相手の武技や術をキャンセルさせると、再入力しようとしても一度発動しかけたから当然再使用まで時間かかるね。
まあ、硬直中は意識が残るから別の行動入力なら解け次第始動できるから硬直解除直後は注意が必要だけどね。
類似の気絶系デバフなら解除してからの入力になるからちょっと余裕あるんだけどね」
「似たようなデバフでも色々気をつけないといけないわけですね」
「そうね!後は条件の問題よ。触媒や精神力以外の物を消費するタイプの術と違って、お兄さんの氷剣術みたいに特定の装備や条件さえ整えていれば使用可能な術は使用条件があるよ。
猿捕茨なら硬直中の相手にしか使用できないし、蛇結茨なら相手の服や装備を掴んでいる場合しか発動できないの!魔物の毛や尻尾は掴んでも発動しないからね。
逆にある程度使い慣れて熟練度が溜まった状態で別の条件を試すと別の術を習得できちゃうかもね」
「蛇結茨って魔物相手じゃ使い道無いんですね・・・・流石ドスケベ術」
「そうね!一言で術って言っても色々ね!お兄さん才能はあるよ!生命の営みと繋がりの守護者たる真なるドスケベを目指してがんばるね!今日はこんなところよ!
さっきのムッツリスケベのところ行ってあげるといいね」
「ありがとうございました」
相変わらずのデバフ追加ばかりでなかなかダメージソースは増えないが、硬直系が増えるのは自分の戦い方に合ってるし別にいいか。
相手動けなくして一方的に急所に斬りつける自分のスタイルって確かにドスケベなんかなぁ・・・・
ところで赤騎士は何処にいるんだか?【訓練】中に話しかけてみたり、探すといなかったり全く困ったやつだ。
そんな事考えながらうろついていると、集落内の焚き火の近くでぼんやり佇んでいたので声をかける。
「なんだ?師匠に怒られてしょんぼりしてるの?ムッツリスケベ」
「いや、これからどうするか考え中だっただけだ。ドスケベ」
彼とは何度かこの集落で顔を合わせるうちに何となく打ち解けたので会話もこの通りだが、黒騎士とはまだ話したことも無い。
「んで、用があるの?」
「ああ、何度か聞こうと思ったんだが、あまり迂闊な事は聞けないしな。うちのクラン本部と連絡とって、ようやっとある程度俺に任せてもらえることになったんでな」
「何か回りくどいな。聞きたいことがあれば聞けばいいのに?」
「ああ、隊長の個人のスキルや秘匿情報に関わるなら言わなくてもいいからな。
もしかして隊長は多人数指揮のスキルとか持ってるのか?
先に言っておくと【王国】の【兵士】職の俺たちはパーティを率いるスキルを持ってる」
「何を今更・・・・もってるよ。ていうか騎士ってパーティしか率いれないの?階級的にもう少し率いれそうなんだけど?」
「そうか、んじゃもっと情報開示しても良さそうだな。士気についても分かってるんだろ?」
「指揮の基本だからね、あの大会の時だって、恐慌にならなかったってのはそっちも士気管理できてるからでしょ?」
「ああ、とはいっても俺たちじゃ開幕早々に相手を恐慌状態にするなんて到底無理な話だがな。
なんかすっきりしてきたぜ。俺たちより多人数指揮で先行ってるのは間違い無さそうだし、その辺の事で相談がある」
「別に構わないよ」
「おう、実は今うちのクランでレギオン狩りの話が出てる。て言うのも、某大手クランでレギオン狩ったっていう噂が立って、そっちに有力プレイヤーが流れてるからなんだがな。
そうはいっても、そもそもレギオンなんてそうそうお目にかかれるもんじゃない。
出現条件が全然わからねぇんだ」
「んじゃ、狩りようがないじゃん?」
「まあ、待て。本当に一体も見つからなきゃ、そもそもレギオンボスなんて名前から出回らないだろうが。
一応フィールドボスのようにそれらしい存在は何体か確認されてるんだが、遠目で見れる程度で、近づくのすら困難な場所にいるのが大半なんだよ。
氷の海のど真ん中だの、どこぞの山の近くを飛んでる大鳥だの、深海や砂漠の流砂の底の地下空間に住みついてる等々の噂や、偶々遠目で確認できた程度の存在なんだよ。
ただ【馬国】のレギオンボスだけは普通にフィールドを歩いてる。
案内できるやつさえいれば、辿り着けるんだ。そして今まであらゆるやつらが挑戦して、開幕から即恐慌で全滅、うちは奇跡的に数人恐慌にならなかったが次の全体攻撃であえなく全滅」
「勝ち目がないね。レギオンって言うからには100人で戦うのが本当にベストなのかね?」
「多分な。【馬国】はユニオンボスが当たり前のようにフィールドを闊歩してやがるんで、昔大人数で囲めば狩り放題じゃないかっつって、20人どころじゃなく集めて狩りに行ったら、速攻で他のユニオンボス引っ掛けてな。逆にユニオンボスに蛸殴りにされるって案件があってだな・・・・
多分適正人数じゃなきゃ戦えないはずなんだ。
んで他の魔物引っ掛けない範囲とかもろもろ何度と無く全滅を繰り返しながらレギオンで間違いないだろうと」
「ふむ、一発目が威嚇系だとしてそれはユニオンにせよレギオンにせよセオリーだし、防げなきゃ次は無いわけだけど、二発目の全体攻撃がネックだよね。
放射系攻撃みたいに距離や遮蔽物によるダメージ減が期待できれば、何とかなりそうなんだけど、ほんとに二発で全滅なの?」
「くっ、流石に読みがいいな。さっきのは表向きの情報だ。実はちゃんと何人か生き残った。防御系バフをかけた状態で防御できれば生き残れる。
全体攻撃もボス魔物中心に吹き出すタイプだから、前衛が生きていれば、距離が遠くなるごとにダメージも減じるだろうな」
「んじゃあ、自分は防御向きの術が多いし多分初撃は耐え切れそうだね。その後は?」
「流石に一人二人生き残った程度じゃ、あっという間に全滅するから分からねえ。隊長は初撃耐えられるって言うが、バフや回復なんていうのは一人づつしかかけられねぇし、50人を支援術使いにするにしても全体の士気を上げなきゃどうしようもねぇだろ?」
「ん?いや、だからそこを自分に何とかしろって話じゃなかったの?」
「???隊長は俺らより指揮できる人数が多いんだろうからせめて20人恐慌にならないように出来ないかって相談のつもりだが?」
「ん、分かった。なんか下手な探りあいしてるから、訳わかんないことになるんだ。まずそのレギオン倒したってクランどこよ?」
「嵐の岬だな」
「バルトのところか、アレだろ死と再生の蛇。自分の任務でプレイヤーが必要なんでアンデルセン経由で頼んだやつ」
「ちょっと待て!隊長もアレに絡んでんのか!おいおい隊長もあっち側なのかよ・・・・」
「あっち側とかそっち側とか知らないけど、やる気があるなら手伝うよ。単体のレギオンボスは蛇だけだけど、大量の部下率いるタイプなら他にも何体か倒してるし、
何より自分は100人率いれるから。
後、バフ系だけど指揮系の術、自分は<戦陣術>だけど、自分の隊なら一気に全員にかけられるから。
ちょっとその前提で考えて」
「ちょっと待て、ちょっと待て、おいつかねぇ・・・・隊長は100人率いても大丈夫な隊長で、100人同時に士気上昇できて、100人同時に防御バフかけられて・・・・じゃあ、前衛が壁として残るわけだから100人生存可能で、その状態で戦闘を続けられる?」
「まあ、そういうことだな。後強いて言うなら蛇の時は弱化アイテムがあったからな。魔物の特徴の調査と周辺住民への聞き込みをしたほうがいいだろうな」
「あ、ああそうなのか弱化アイテムな。どうなんだろうな。ありゃあ例えようの無い生き物だぞ。尾っぽの光る虫みたいな」
「蛍じゃん」
「でも電撃をばら撒くんだ」
「蛍の光は化学物質がなにやら混ざったやつじゃ・・・・」
「ああ、だから何か気持ち悪い昆虫型の尾が光って電撃を飛ばしてくるレギオンサイズのボスだ」
「ついにそういう訳の分からんタイプの魔物に会うことになるのか・・・・嫌だなぁ」
「まあ、そういわずに手伝ってくれないか、報酬は弾むぜ」
「いや別に欲しいものないし、お金にも困ってないし。まあいいよバルトだけ贔屓する訳じゃないし、取り敢えず聞き込みと弱化アイテム探しとそっちのメンバーとの顔合わせからかな」
「おう頼むぜ、こっちも切羽詰まってきてるしぐずぐず言うようなやつは置いて選抜するからよ」
なんとなく赤騎士と会話してたらレギオンボス倒す事になったけど、何で断らなかったかなぁ。
まあ、いいか。取り敢えず飯食って寝よう。