110.輪の蛇
■ 溶解 ■
魔物の中には『溶解』を得意とするものがいる。
主に強酸攻撃などだが、装備耐久値を下げる効果がある。
戦闘中に装備を失うのは非常に危険である為、十分な用心が必要。
一部耐性のある装備や無効のイベント装備等も存在する。
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ひたすらに続く階段を上り続けると出口らしき外の光に近づいている。
どうやら蛇は外にいるようだ。
どんどん上って行き、まぶしい光に備えるように自然と目が細くなる。
そして一気に外に出て周りを見ようとした瞬間
足場が無い・・・・
表に出た瞬間落ちた。幸いにそんな高さじゃなかったのかとふらふらと立ち上がれば
目の前が真っ暗になる。
めまぐるしく変わる目の前の状況に混乱し、
死に戻りか?と一瞬疑うも体が明らかに転がっている感触がある。
自然と勢いが落ちて止まると、ゆっくり立ち上がる。
暗いが、目以外の感覚をゆっくり感じ取ると明らかに足場から電車のような揺れを感じる。
一呼吸入れて、冷静に考えると
蛇が現れて、抉られた地面に落っこちて、そこが偶々尻尾と口の間で、そのまま食われて、蛇の腹の中
そんなところだろう。運がいいやら悪いやら
さて、確か酒場のマスターから聞いた話だと心臓を刺せばいいんだろうが、蛇って生活している場所で心臓の位置が違うって言うし、今自分が蛇のどの辺りかもわからないし、そもそも魔物の蛇の心臓が普通の蛇と同じ位置にあるかも分からない。
つまり何も分からないので、とりあえず蛇の進行方向に向かうことにする。
少なくとも口までは行けるだろうというそれだけの理由で、歩き始めた一歩目
ジュッ!
何か嫌な音がした?何となくすぐ分かったが、それでもそうでないことを祈り、もう一歩踏み出せば、
ジュッ!!
明らかに足元から音がした。
ここは胃か!胃酸が下に湧いてる。しかし立ち止まったままならいずれ溶かされてしまうだろう。
いっそ駆け出す。とにかく胃から抜け出さないと絶対にマズイ
すると今度はすぐ耳元で音がする。右肩に当たったようだ。
どうやら天井からも垂れてきてるらしい。
とにかく息を詰めて一気に走り続けると何回あの『ジュッ!』を聞いたか分からないが、一瞬からだの周りが明るくなる。
自分の体から霊子が飛び散った光だ。
そのわずかな明かりで周りを確認できたが、結構な量の胃酸が天井から垂れている。なんかうまく避けるとかそんな事は無理そうだ。ただ走り抜けるしかない。
ふと、何で自分の体から霊子が飛び散ったのかと自分を見ると、軍狼の外套が無い。
何となく予想はしていたが、装備の耐久度を減ずる効果のある酸らしい。
一層気合を入れて走る。
だが、既に結構耐久度の減っていた肩当や腿当に腹巻なんかはあっという間に崩壊する。
その都度少しだけひかり、先が見えるがどこまで進めば良いのか見当もつかない。
それでも、走り続けるとついに軍狼の冑が逝く。特典で士気上昇効果があったのに、残念で仕方ない。
すると何となく先の方の様子が違い、途中で床の胃酸が途切れているのが、目に入る。
あそこまで行ければと力を振り絞ると唐突に転んでしまう。
靴が溶けてしまった。そして床に手を突きすぐに立ち上がったが、同時に手袋も消滅してしまう。
裸足に胃酸ダメージがひりひりと入るが、もう少しの辛抱だと思えば何とか走りきり胃から脱出する。
思わず膝を突き四つんばいでうなだれるが、今度は床や壁が震え始める。
そして再び自分の体を胃まで押し込もうとしてくる。
抗うように何とかまた走り始める。
走ると言っても床が波打ち、時に坂になれば手を突いて上り、下りは転げ、何とかバランスを取りながら這い進む。
どこまで進んだか、ただひたすら進むことしか考えられない状況で、ふと気がつくと前方に床が薄ぼんやりと光っている場所がある。
よく分からないがとにかくそこまで、進み。
何を考えるとも無く宝剣でその床を突き刺すと
そこには魔石があり、宝剣で刺し貫いていた。
一瞬突風のような風を感じたと思ったら、大量の霊子が舞い上がる中で地面に転げ落ちていた。
すると例の如くファンファーレとアナウンスが頭に流れる。
クエスト発見者
討伐者
ボーナスが貰えるらしい。
一つは輪っかで中央がくり貫かれたような形のメダル。手の上に現れたので眺めているとすうっと消えてしまう。
この前のモグラの時もそうだったので、別に驚かない。
そしてもう一つはやっぱり輪っかだが、腕輪にしては太い?足環?
蛇を模した輪っかだ。
腕輪のことを踏まえていじっていると、やはり頭の部分が少し稼動するようだ。
どうやら頭の部分が尻尾と繋がったり分かれたりするようなギミックらしい。
まだ効果は分からないが。むしろ何処に装備すればいいかすら分からないが。
しかし、疲れた。何かもう一日で集団戦やって邪神の尖兵倒して蛇倒してって、やりすぎでしょうよ。
蛇が這いずった溝から何とか這い上がり周りを見れば尖った山から外周の街がある山までちょうど一本道になっている。
もう、何も考える余裕が無いので、街までだらだら歩く。
そして初めて知るが、フィールドを裸足で歩くと微妙にダメージがあって、歩行を軽く阻害してくる。
先ほどまでの血が引けるような焦りは無いが、何となくストレスを感じながら歩く
多分走ったりしたらもっとストレスになるだろうから、
「もう~今日はなんにもしな~い」
誰も居ない一本道で一人呟きながら街へと歩く。
【鉱国】ボス三連戦はある一日の出来事だったのですが、
だいぶ、間が空いてしまい申し訳ございませんでした。