11.【北砦】の【整備】任務
また、地味な日常に逆戻りです。
■ 整備 ■
【兵士】の主要クエストの一つ
生産系技能を育てることが出来る 国・地域によって 生産が得意な兵科も用意されている
必ずしも受注しなければならないクエストではないが このクエストを受けているとその国に所属するNPC【兵士】兵装のレベルにボーナスがある。
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西棟に着くとどこからとも無く カン!カン!という高い音が聞こえる。
聞きなれた音だ。鍛冶というよりは凹んだ装備を叩いて直しているときの音だ。自分も受けたことがある。
入ってすぐのカウンターには、眼鏡の【兵士】にしては、ひょろっとしたおっさん・・・・
もとい、おじさんがいた。
ひょろっとはしてるが、なんとなく隙がないし、立ち方もしっかりしている。
舐めてかからない方がいい。そう自分の勘が告げている。
いや、戦うわけでも無ければ、舐める気も無いけどさ。雰囲気だよ。
後、こういった後方任務の時は特に兵装はしてない、ゲーム仕様の普通の服だ。
ちなみに自分の装備は
布の服(初期装備)
布のズボン(初期装備)
支給品の長靴 (ノーマル)
以上だ。
アイテムバッグに関しては装備に含まれないみたいだ。
防御力とかは表示されない。鑑定系のスキルがあると品質や状態が分かるらしい。自分の<生活>(元は<基礎知識>)だとこんなもんだ。
「こんにちは、任務受けに来ました。コレ、任務票です」
「ああ、なるほど【熟練兵】が増えたばかりで、手が足りなかったんだ助かるよ。 人は増えたんだが、あまりこちらの任務につく者が少なくてな。
早速だが、この帳票を預けるから、一番奥の部屋の物資と照らし合わせてくれ。ずれがあった場合はこちらの紙に何が、いくつ、ずれているか書き出してくれ」
と冊子が一つに紙束と鉛筆を差し出してきたので受け取る。
「とりあえず一番奥の部屋を見終ったら、一回戻ってくれば良いんですかね?」
「ああ、一番奥だけでも見終わるなら助かるよ」
なぜかその言い回しに不吉な予感を覚えながらも、一番奥の部屋に向かう。
すると、とにかく、箱!箱!!箱!!!だ。
棚はあるのに、床に箱が積んであったり置いてあったりするだけだ。帳票を見るとどうやら、生活に必要な物資のようだ。
一旦カウンターに戻るとおじさんがニヤリと笑いながら、
「もう、終わったのか?」と聞いてくる。
「いや、帳票の確認って事ですけど、箱開けちゃっていいんですよね?場合によっては、中身を棚に出したいんですけど大丈夫ですか?」
「ああ、許可する。というよりそうして欲しい。運び込まれた物資の帳票をつけるだけで、中身も確認出来て無いし、整理も出来てない。まずいのは分かってるが、どうにもならないのだ。頼むぞ!ある程度のことは任せる」
そう言って、バールみたいなものを渡してくる。
コレで箱開けろってことだろうな。
自分はバールを装備した。
「後小さい台か机借りて良いですか?帳票開いておいておきたいんで」
といったら、笑いながら、あっという間に腰より少し高いくらいの高さの台と文鎮を貸してくれる。
奥の部屋に着くと早速、扉の横にスペースを作り、机と帳票を設置する。
ぱっと見ただけじゃ、帳票のどのページとどの箱が、合うのか分からない。
幸い紙束は沢山あるし、箱を開けてどのページと合うのか見ながら紙を挟んでいこう。
まずは、箱を壁際に寄せて棚に物を載せられるスペースを作ろう。
それだけでも、結構な時間が経つ。幸い持ち上がらないほど重いものは無かったが、なんかすでに気力が萎えてきた。
いや、ダメだ。こんなのリアルと比べれば単純作業じゃないか、一個づつやれば良い、一個づつだ。
そう思って、まず一個棚よりの箱を開ける。
当たりだ。大きさが均等の瓶のようだ。コレなら並べやすくて助かる。
一個引き抜いてラベルを見るとお酢のようだ。帳票のお酢を探すと、三箇所あった。
どれと対応するかはまだ分からないが紙にお酢左一番上の棚と書いて三箇所に挟んでおく。
このやり方でどこまで出来るか分からないが、あくまで、何が、いくつ、足りないかだ。
どのタイミングで誰が持ってきた物資が足りないかを調べる必要が無いだけ助かる。
リアルで、日頃使用している副資材を急にカウントしろといわれたときを思い出す。
どうしても数が合わないので最後にカウントした日を事務の人に聞いたら、
半年前だという、そんなのいつずれたか調べてたら、他の仕事が進まないと思って。
社長に進言したとき「そうやって誤魔化して楽をしようとするな!」って言われた時は、一体自分は何を誤魔化そうとしてるのか教えてくれって思ったもんだ。
挙句の果てに社長に日頃の管理を怒られた事務所の人に、「あんたが毎日カウントすれば良いじゃない」
と言われた時は事務所の人が、自分の仕事投げ出してるだけじゃないのって思ったもんだ。
っとまた悪い方に気持ちが持ってかれた。
とにかく今目の前にある仕事を片付けよう。無理を言われてる訳じゃないんだ。一個づつだ。
こういう時は最後までを見通すより、目の前の箱の山を崩していくことを考えた方が、なんだかんだいつの間にか終わってるもんだ。
そういうもんだ。
箱の中身を棚に並べて次の箱を開ける。またお酢だ。それもそのまま並べる。
一箱1ダース入ってるようだから、二箱で24本。
合致するページがあるな。多分コレだろう。
他のページはそれぞれ12本づつの納品となってるし、残りも並べられるだけのスペースを棚に作り、次の箱を開ける。
毛布?うん、緩衝材とかじゃなく毛布しか入ってない。これは、保留だ。
どこに並べたらいいか、まだ、イメージが固まらないこういう時は、蓋から釘を全部抜いておいて、蓋を載せて端に寄せておく、後で分からなくならないように毛布と書いた紙を上に置いておく。
なんとなく、リズムが出てきた。この調子だ。
それからどれだけ経ったか、何とか一部屋片付いたので、帳票と合わない物資を紙に書き出しておく、中には、帳票より多いものがあったので、紙を2枚に分けておく。
帳票・過不足リスト・使用してない紙束・いらなくなった紙束・鉛筆・台・文鎮・バールをカウンターに持っていく
「一応コレがリストになります。後、メモ取る為に結構使っちゃった紙束です」
「使用済み紙束は火着け用に使うからいいぞ、炭に一度着けて乾かしてから使うから機密も漏れないしな。しかし、思ったよりは早かったな。これからも頼むよ。まだ、何部屋もある」
絶対に逃がさないという笑顔でこちらを見てくる。
つい表情がひきつってしまう。
すると
「とりあえず、今が時期的に忙しいだけだ。山場を越えれば大丈夫だから、安心していい」
「じゃあ、自分は、戻ります」
とだけ言って、中央棟でクエスト完了報告をし、東棟に戻って食事をしてログアウトした。
予定時間3時間を2時間オーバーしていた。目覚ましを一個多くかけて寝るとしよう。