107.鉄鼠 Last WAVE
■ NPCの戦闘不能 ■
基本的に特殊なストーリークエストなどが無い限りNPCの死亡は無い。
集団戦などで、戦闘不能になった場合気絶扱いとなり、ゲーム時間で数週間復帰不可となる。
衛生兵で救護を行い、戦闘フィールドから退避させた場合は数日での復帰となる。
プレイヤーがNPCを害することは不可能であり、クエストで賊等を倒した場合は捕縛扱いとなる。
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さて、回復しながら敵陣を見やれば、嫌な予感しかしない。
先程までのただごちゃっと集まっていた状態とは違い、明らかに意図のある塊になっている。
理由は明らか、奥の門際に一際大きなモグラがいる。明らかにボスだろう。
色は灰色のようだから無属性なのだろうが、サイズが明らかに違う。
そして、他の色と動きが違う黒いモグラもいる。サイズこそ変わらないが、属性が分からない。妙にいびつですばやい動きに異質を感じる。
「あのもしかして・・・・」
「ああ、あの黒いのが仕掛けでも倒せなかった新種だ。そしてでかいのがボスだな。今までの無秩序とは一味違うぞ」
「なんだかんだ、結構消耗してるんですけどね」
「まあ、無理に倒さずとも仕掛けさえ発動できれば、黒い奴以外は倒せる。ちなみに仕掛けは向こうの門上のレバーを右から二本引けば、いい」
つまり、何とか道をこじ開けてレバーさえ引ければいいのか、なるほどね。
とはいえ基本は大盾兵で防御からか
横隊で、大盾兵から大槌兵、術士兵、支援兵と並べていく
そうこうするうちに一気に緊張感が高まり、戦闘が始まる。
・・・・敵は明らかに整然と進んでくるが、隊列がおかしい
自分から見て左に茶色の防御力の高いモグラが2列になっている。
次に灰色のごく普通のモグラ達
そして、術攻撃もちの赤と青
2列づつ縦列に並んでいる。
層になるように組まず、左から順に隊列を組んでいる。
一番左は防御型だけあって、膠着状態だ。
普通の灰色は押せそうで、数でカバーされてやはりこう着状態。
術攻撃持ちはむしろちょっと押され気味か。
「大槌隊の術抵抗上げられますかね?」
「まあ、すばやさは下がるがそれなら『妨筋』だな」
大槌隊が一斉に横向きになり腹付近に曲げた左腕の手首を右手で掴み、胸筋を主張する。
サイドチェストだ。
一瞬の間の後、術攻撃持ちのモグラの前に並ぶように縦列で隊列を作り、
「大盾隊は左に寄れ!大槌隊が術攻撃持ちを削れ!『行くぞ!』」
戦陣術 激励
大盾隊が、茶色と灰色との完全な膠着状態を生み出し、大槌隊が青と赤のモグラの混成部隊を削り始める。
被害が無いわけではないが、収支は完全にこちら寄りで、徐々に削っていく。
赤と青の術使いが徐々に圧縮されていくにつれ、
戦場の右手側が広がり始める。
穴埋めに支援隊を右に寄せていく、支援隊は小さいながらも盾持ち、最低限の防御力はあるだろうという読みで隊列を変更していく。
すると今まで後方で待機していた、黒モグラが一斉に右側の空いた空間を駆け抜けてくる。
「『行くぞ!』まずは無理せず受けろ!」
戦陣術 激励
戦陣術 戦線維持
準備していた支援兵に防御支援をかけて様子を見る。
駆けてきた黒モグラと会敵、一撃目は勢いを付けての突進攻撃だったが、思ったより軽がると受け止める。
そして、個々に攻撃を仕掛け始める支援兵達、しかし当たらない、軽々と後ろに跳ねて避けられてしまう。
相手の攻撃によるダメージは少ないがこちらからは何も当てられない。
今まではさもドワーフの相手とばかりの鈍重なモグラだったのに、最後でいやらしいことこの上ない。
避ける相手に翻弄されて隊列が乱れ、乱戦になっていく。
その中で一匹抜けてきたため、自分が相対する。
すばやいとは言え、ドワーフや他の色のモグラに比べればと言う程度、自分にはむしろ遅い。
軽々と振りかぶってきた爪をブロックする。
硬直した瞬間、癖で相手の喉を突く。
はっとして反動を堪える為に手首に力を入れるが、思っていた以上にすんなり刃が入り、そして引き抜く。
「ヴヴ・・・ヴ」
モグラが声を上げるが、生き物の声じゃない?何か機械的な変な音だ。
先ほどから動きもなんかちぐはぐで、気持ち悪かったのだが、どういうことだろうか?
今まで現れなかった新種だという話しだし、何か理由があるのか?
そんな事を考えつつも刺せる相手ならとサクサク攻撃していく、正直あえてブロックせずとも避けて回り込んで、切りかかるのにそう難しい相手ではない。
さっさと、倒すとまた抜かれているので、積極的に自分が倒しに行く。
戦場は左側大盾隊の受け持ちは膠着状態だが、推移も緩やかだし、放って置いても当分もつ
中央の大槌兵の所は押し気味、このまま押して行くとしよう
右側が自分と支援兵で乱戦中、押されているわけではないが、ダメージの収支では今のところ向こう有利、自分が戦闘に参加してプラスに転じられるようにするべきだろう。
となれば、浮いている術士隊を左と中央の支援に回らせれば、こちらの戦闘に集中できるか
「左翼はこのまま膠着状態を続けろ!中央はこの調子で削るぞ!術士隊は左翼中央の支援だ。
自分は右翼支援に向かう。任せたぞ」
戦陣術 戦線維持
全体に防御支援術をかけて右側の戦闘に介入する。
ドワーフを標的にしている黒モグラを自分が後ろから斬り、隙が出来たところをドワーフが殴る。
敵の数が減るにつれて、こちらが有利な状況が加速する。
何体削ったか、ドワーフたちだけでも十分余裕をもって維持できる状態になった時少々迷う。
このまま全体で押して行っても多分勝てるが、むしろこのまま空いた右翼を抜けちゃえばいいんじゃないか?と・・・・
そんな事を考えていると
『ジゥ!!!ジゥ!!!!』
とボスモグラが叫び始める。
すると奥の門の向こうから増援がなだれ込んでくる。
「いや・・・まじかよ・・・・」
ほとんどは灰色で、減った中央部と左翼の補強だが、少しだけ混ざってる黒モグラがこちらを目指して駆けてくる。
増援は灰色と黒だけだし、押して押せないことも無いのだろうが、エンドレスならどこかで勝負をかけなければならない。
戦線を上げて敵地を圧縮して増援が入らなくしていくのが正攻法なんだろうが、今攻勢術をかければ、多分中央だけが進んで中央が囲まれる。
相手の縦列の隊形に乗らずにあくまで横隊で対応しておけばと、後悔するが今更どうしようもない。
一か八かをやるとする。
「決めるぞ!『行くぞ!』『死中に活を拾え』」
戦陣術 激励
戦陣術 背水陣
コレで、一刻の猶予も無い。
ステータスが跳ね上がり、ドワーフ達も一気に戦線を上げていく。
先ほどまでは捉えられなかった黒モグラたちにも攻撃が当たり始める。
そして自分は開けた右側空地を駆ける。
途中駆けてきた黒に突進されそうになったので、転がって強引に避け、また駆け出す。
爪を振りかぶってきた時はスライディングの要領で、つっ込んでみたら避けれた。付け焼刃の動きだが、小学生の時サッカーをやっていて良かった。次々と黒をかわしながら、門にたどり着くと
当然ながらボスモグラが、待ち構えている。
だが、ここは無視だ。
剣じゃダメージが通らないと分かっている相手に突っかかる意味なぞ全く無い。
ボスモグラが、まるで地面を削るように大きく弧を描いて爪を振ってくる。
しっかり両足を開き、がっちり受ければ、多少のノックバックでブロックできる。
ボスが硬直している間に脇を抜けていくと
自分の周りが一気に殺気の範囲になったので、大急ぎで走り、今度は野球のスライディングのように頭から飛ぶと、ボスが巨体を生かして倒れこみ攻撃をしてきたが、コレも何とかかわせた。
そして、門端の階段を駆け上がる。
またいきなり階段上に殺気を感じるとボスモグラが爪を大きく上に振りかぶっている。
渾身の力をこめて剣を頭上に横に構え、両手でブロックする。
重い一撃に、自分にも硬直が発生する。
それでもボスモグラより早く復帰して、門上を目指す。
門上にはレバーが三つ
右のレバーを引けば『ガラガラガラ・・・・ガーン』と門が閉じる。
真ん中を引けば、突如天井から大量の水が流れ込んでくる。
そして、モグラ達はどうやら泳げないらしい。水に沈んでいく。
戦闘解除され、支援効果もきれ士気も普通になり気分がニュートラルになると
嗚呼、これが仕掛けか~などと戦闘終了にほっとしたのも束の間
よく考えたら、ドワーフも泳げないんじゃ・・・と一瞬不安になり緊張するも何故か上半身が水上に見えてる。
水の勢いで偶々こちらに流されてきたドワーフがいるので聞いてみると
「ん?コレか?水に濡れると勝手に膨らんで浮くんじゃ!」
と門上に上がってきて胴体から外した茶色い浮き輪を見せてくれる。
すると突然水に浮いているドワーフ達の一人が叫ぶ
「いたい!いたいわい!尻を齧るな!」
思わず水に飛び込み水中で目を凝らすと黒のモグラが一人のドワーフに噛み付いている。
すぐに泳いで近寄っていき、剣で突き刺し倒すが、水中にはまだ黒モグラが結構な数いる。
急いで門上に戻り、一番左のレバーを引くと案の定、門が開き排水される。
残っているのはドワーフと黒モグラとモグラの死骸
ドワーフ達はいそいそと浮き輪を外している。
門をもう一度閉じ
下に向かえば、既に黒モグラとドワーフの戦闘が始まっている。
だが、床がぬかるんでいる為黒モグラ達はうまく避けることが出来ないらしい。
ドワーフと黒モグラがどちら有利と言うことも無く戦っているが、
逆に自分は足場の悪い戦場が得意だ。
基本に立ち返り、ブロックしてからの攻撃を繰り返すだけで、どんどん削っていける。
そうして、全ての黒モグラを倒しきると久しぶりのファンファーレとアナウンスが聞こえる
クエスト発見者
ギミック発動者
の二つらしい
ひとつは勲章だが、手の上に見えたと思ったら何故か徐々に半透明になって消えた。
もうひとつは毛皮の・・・・なんだろう。マントにしてはどうやって首に留めるんだろう?
丸くなってるからには体を覆うんだろうけど・・・・?
どっちもよく分からないので、後で街で聞いてみるとしますかと毛皮をアイテムバックにしまう。
ボスを倒してればもっといい物が手に入ったのかね?等と思っていると副官が話しかけてくる。
「お疲れ様だな。この門の向こうは一本道だ。進めばあんたの目的の場所へ行けるぞ」
「嗚呼、なるほど戦闘で結構しんどかったけど、もう一がんばりか。ところで精神力尽きたって聞いたけど何であのポージングの術使えたんですか?」
「あれは術じゃないし俺が使ったわけじゃない。兵たちの戦技だ。<身体能力>をもっていてこの国で【訓練】を受けると使えるようになる。ただし、指揮官の下で一斉に使うと効果を上昇する指揮官スキルがある」
「合成しちゃったんですけど、体幹あれば、自分も使えますかね?」
「種類は限定されるがな。【帝国】の【兵士】がこの国で【訓練】を受けられるかは分からんがな」
「まあ、それはそうですよね。ところでアイテムとか防具のことって分かります?」
「俺は暴れる方専門だから街で聞いたほうがいいぞ」
「ですよね。んじゃ、もう一がんばり奥地まで行ってきます。お世話になりました」
「いや、礼を言うのはこちらだ。世話になったな」
副官ドワーフと別れ奥に進んで行く【鉱国】の宝樹に会いに
すみません随分とお久しぶりになってしまいました。




