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1.おっさんのプロローグ

 ■ 古都 ■


かつて帝国が貧しい小国家群だった頃

魔物の多く出現する地にもかかわらず 近在の鉱山からの鉄鉱石の産出量が多く また大河にも接していることから交易の拠点としても栄えていた


今は無き都市国家


今では、交易の拠点から外れ

さらには隣国【ドヴェルヴン鉱国】 通称【鉱国】からの特殊金属の輸入により鉄鉱石の需要も低下

魔物の進入を防ぐ辺境の防衛都市として残るだけとなってしまった

寂れたとはいえ 防衛都市としては今も重要な拠点として軍学校および軍事施設などが設置されそれに伴い一般兵卒用の兵装の生産も行われている


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 窓から見えるのは一年を通してめったに晴れることの無いどんよりとした空。


 鉄錆とそれを取る為の油の臭い。


 寒い地方特有の密閉した建物にこもる澱んだ空気。


 にもかかわらず、どこからともなく隙間風が吹く。


 そんな少し薄暗い倉庫で、今日も自分は、鎧や冑を磨いている。


 これは、紛れも無く現代の話。それもゲームの話。


 ゲームで臭いだ、隙間風だとおかしな事を言っているのは分かっている。


 しかし、それを現実のように感じられるゲームがいつの間にか出来ていたのだ。


 もしかしたら、TVやなにかでニュースにでもなってたのかもしれないが、TVなど見ない自分は、全然知らなかった。


 TVのうそ臭い笑いや、オーバーリアクションを見ていると、ただでさえ仕事でささくれた心が血まみれになる。


 所謂フルダイブ型VRというやつだ。いつの間にか医療用として開発研究が進められたそれの、ゲームの中に自分はいる。


ゲームの中に今、自分はいる。


 きっかけはうちの祖父(じいちゃん)が、いつの間にか医療用のそれの治験に参加していたことだ。


 本来であれば、入手困難なゲーム機を唐突に買ってくれるというものだから、流石に遠慮した。


 しかし、よく話を聞くと祖父(じいちゃん)は、治験の為すでにそのゲームをプレイしているのだという。ちなみにその治験が所謂β版だったようだ。


 そして、一般公開を機に優先購入権を得られたということなのだ。


 最近疎遠だった祖父(じいちゃん)と、ゲームで遊んでみるのも面白いかもしれないと思い、購入権をもらって、自らゲームを購入した。


 だが、当初の目的は未だはたせずにいる。というのも祖父(じいちゃん)が、ゲーム内で知り合ったという親切な友人に


 「現実(リアル)の情報はゲーム内に持ち込まない、ゲーム内では現実(リアル)の情報を明かさない」


 と教えられたらしく、祖父じいちゃんが、どんなキャラクターで、どこにいるかも分からないのだ。


 まあ、うちの祖父じいちゃんが、この手のゲームをするなら確実に『騎士』で間違いないし、縁があれば会うこともあるだろう。


 ゲームの舞台は、所謂ファンタジーRPGなのだ。


 最新のフルダイブ型VRMMORPGで、しかも各所のデザイナーにかつての有名ゲームの制作者たちが絡むとあれば話題にならないということは無いであろう。


 かくいう自分もゲームを手に入れてからそのことを知り、学生時代を思い出して胸が高鳴ったことは隠しようも無い。


 久方ぶりの冒険に一つだけ縛りを入れることにした。


 それは「攻略情報は見ない」というもの。


 折角、現実(リアル)とは違うもう一つの世界に行けるのに、なんでも下調べしてからというのは、興醒めかなと。


 どんなにゲームでうまくいかなくなっても、現実(リアル)の自分よりひどいことは無いはずだと、思うから。


 いざ、ゲームをスタートしてみれば真っ白い空間に鏡があるだけ、自分の姿を決められるようなので、無難にしておいた。


 格好良くしても、痛い感じがしたし。ネタプレイするほどゲーム時間に余裕があるわけではない。


 ちなみに、このゲームでは時間が3倍速で流れている。


 とは言え、早送りになっているわけではない。


 ゲーム内ではちゃんと3時間たっぷり堪能しても、リアルに戻れば不思議と1時間しかたってない。けれど満足感はそのまま。


 でも時間の感覚は狂わない不思議仕様。


 不思議ではあるが、自分は特に文句は無い。


 所謂ステータス割り振りはなし。説明書によるとゲーム内のリアリティを損ねない為、ステータスは数値で現れない仕様らしい。


 所謂初期スキルもなし。説明書によるとスキルはジョブに就いて貢献ポイントと交換で手に入れるか、クエストで手に入れましょうとのこと。


 種族については【ニューター】一択。


 色々な種族になれるとかそういうことは無いようで、ごく普通の人間型のみ、


 あまり極端な体型設定をしなければ問題なく体は動かせるようだ。


 まあ、別にこだわりがあるわけではないので、現実に近い普通の体型にしておいた。


 一応ゲーム内の設定としては、邪神の復活を予見した創世の女神によって異世界から呼ばれた魂の仮初の肉体ってことらしい。(本当は創世に始まり、ある時異次元から邪神が現れてからの戦いの記録だとかめちゃくちゃ長い設定だの年表だのとあるが、ざっくり斜め読みするとこんな感じだ)


 ちなみにNPCの人間型は、【ヒュム】ってことになってる。


 スタート地点については、いろいろ選べるのだが、

 所謂王道の【王国】

 ちょっと怪しげな【教国】

 いくつかの島国の海洋都市国家【海国】

 砂漠のオアシスを中心としたこれまた複数の都市の【砂国】

 ひたすらに広い平原と山脈を季節によって移動する【馬国】

 特殊金属の多くを産出する鉱山国家【鉱国】深い森林に囲まれた【森国】


 最後に自分が選んだ国、雪深くやや食料に難を抱えつつも鉄鉱石の産出量が多く何代か前の皇帝により小国家群が統一されたことで、とにかく広い国土でそれぞれの役割を担うことで何とか保っている【帝国】


 まあ、今後アップデートがあればもっと増えるかもしれないが今はそんなところだ。


 祖父(じいちゃん)なら確実に【王国】なんだけど、真っ白空間でスタート地点を選ぶ際、すでに人口比が【王国】に山ほどプレイヤーがいるらしく、


 あまりゲームに時間のさけない自分としては比較的人口の少ない場所でまったりやろうと思ったわけで【帝国】を選択。


 そして、チュートリアルに従い、最初のジョブで選んだのが【兵士】。


 それからゲーム内でやることといえば、基本的に【巡回】【整備】【料理番】【訓練】【座学】の中から気分しだいでクエストを選んでこなすだけ。


 そうして、前述の倉庫の中に戻る。


 現実(リアル)四ヶ月、ゲームの中では一年。


 ただただ、クエストをこなしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 独自の世界観が楽しみです [気になる点] 都市国家とはある都市が政治的に独立しており、その傘下に幾つかの村や小規模の町が存在するかしないか程度のものなので、都市国家に「首都」という言葉は適…
[一言] 普通じゃないプレイは予想したけど、流石に国力弱そうな帝国チョイスしてその辺境に兵士やってるとは思わなかったぜ。
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