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王様と令嬢

 マリオからの念話を受け、リズエリーテの名を聞いて何があったと焦った俺は、すぐに転移魔法を発動しマリオの傍へと転移した、そしてドカドカと足音を立てマリオに近寄り、乱暴に肩を掴み振り向かせた。


「マリオ!リズに何があっ・・た?リズ?」

 その時、マリオの向かいに座る、リズエリーテに気がついた。

 慌ててリズエリーテの傍へ移動し、ほっと安心し膝を着いて、リズエリーテの顔に手を添えて怪我をしてないか見る。


「リズ、顔色が悪いが大丈夫か?体調が悪いのか、すぐに休んだ方が良い」


 俺がそう言った時リズエリーテは、ポロリと涙を流した。

 その涙に焦る俺はマリオを見た。

マリオがくいっと眼鏡を押上げ冷たく言い放つ。


「クロウフォード陛下が悪いのですよ、今日で何日目か、わかられてますか?こんなにリズエリーテ様に心配させて、クロウフォード陛下は最低ですね」


 言われた俺は、さぁと血の気が引いて、再度リズエリーテを見る。

 リズエリーテは、ポロポロ泣いていた。


「リズ、済まない、俺が悪かった、約束の日に帰って来なくて」

 リズエリーテの傍で膝を着いたまま、手を握り、頭を下げひたすら謝る事に徹した。


 暫くリズエリーテは、涙でぼんやりする眼に俺を映した、リズエリーテの頬を撫でていたら、漸く俺が、目の前に居る事を実感したようで、涙ぐみながら話出した。


「クロウ、無事だったのですね、良かったです、何かあったのかと思って・・・わたくし」


 その言葉を聞いた俺は、立ち上がりリズエリーテの隣へと座り、そっと抱き締め背を優しく撫でた。


「すまないリズ、心配させてしまったのだな、俺が悪かった」



 そして、少しずつ落ち着いたリズエリーテは現状を認識したようだ。


 俺から慌てて離れようと片手で俺の胸を押し、もう片手で、顔を見えないよう隠して話し出した。


「クロウフォード陛下、わたくしの方こそ申し訳ありません、取り乱してしまいました。もう大丈夫ですから、それにクロウフォード陛下の方がお疲れでしょうから、お休み下さい」


 そう言って、片手で一生懸命俺から離れようとし、顔を隠すリズエリーテに、俺は可愛いと思い、そしてまた愛称で呼びあいたいと思った。

 そして、少し腕を緩めリズエリーテにお願いした。


「リズ、二人で居るときはクロウと呼んで欲しい、城や他の者が居るときは様で構わないから、駄目だろうか」


 俺が腕を緩めたので、少し体を起こしたリズエリーテは、手の隙間からそっと俺を伺うように見る、そんなリスエリーテを微笑ましく見詰めてしまう。


 そしてじっとリズエリーテを見ていると、首すじが真っ赤になっていた。

 心配になり、リズエリーテの顔を確認しようと顔を覆っていた手を退けようとしたら、グラリとリズエリーテが、倒れ込んできた。

 リズエリーテを受け止め声をかけた。


「リズ?」


 俺の呼び掛けに、反応しないリズエリーテを心配する俺に、マリオが呆れたようにはぁと溜め息をはいた。


「全く陛下は、安心されて緊張の糸が切れたのでしょう、リズエリーテ様だけですよ、こんなにクロウフォード陛下を心配してくれるのは」


 俺はマリオを睨みつけ言った。


「大体マリオが、連絡してこないから、リズがこんなに・・・、いや俺が悪かったのだな、こんなに俺の身を案じてくれる者など、今まで居なかったから()


「な」の所で、再度マリオを睨みつけるが、こいつは、俺の睨みを気にもせず、ふうと呆れたように話す。


「まあ、この国で陛下に敵う者など、居ませんからね、そんな方の身を案じるなんて、馬鹿馬鹿しくて」

 緩く首を振り呆れたように話すマリオに、俺はがっくりした。


「お お前と言う奴は・・・」

 その先を話す気力もなく、もう良いと思った俺は、リズエリーテを横抱きに抱え直し、顔色を見た。

 顔色は、いつもの状態に戻り、表情もほっとしたように緩やかだ。


 マリオの毒舌も、リズエリーテを見ることで気にならなくなる。

 気を取り直しマリオに、ついでにビッチの現状を聞くことにした。


「マリオ、その後のビッチ情報は、どうだ?」

「では、まず、勇者ですが、メキメキ成長しています。魔法もソコソコ使えてます、実技は、剣が得意で、バカ皇太子と騎士団長とその子息と同等ですね。

 魔法のみでは、上級魔導師には勝てていません、で、ビッチは、リズエリーテ様を助けに行く時、自分も行くとバカ皇太子にお願いしています、しかし、バカ皇太子は、勇者と卒業生の中の有能な者を選び、その者達を此方へ寄越そうと考えています。

 今の所こんな状況ですね」


 それを聞いた俺は、リズエリーテを眺めながらも考えた。


 大体予定通りか、そろそろ勇者を召喚して、一月だしな、後もう一月たったら、ダリア王国の中で一番強くなるだろう、今回の召喚勇者は、バカ皇太子の扱い方から、恐らく使い捨てにするパターンに近い気がする。


 ビッチは恐らくその手の話を知らないので、何とか自分のシナリオを進めたいから、状況は違うのだろうが、付いて行くと言っているのだろう。と言うことは、やはり、こちらに攻略対象者が居て、そいつに会いに行きたいからだろうな、たが、バカ皇太子はビッチに溺れているから許さないだろう。


 そこまで考えて、あとは此方に来る日に対処するしかないかと思った。


「マリオ、引き続き監視を頼む、勇者が行動を開始する日を知りたい、恐らくもうそろそろ動き出す筈だ、あと、この事はリズには知られたくない、じゃ俺はリズを送ってくる」


 そう言ってリズエリーテを、抱きかかえたまま立ち上がり応接室を出て行った。



 ****



 翌朝、食堂にやって来たリズエリーテが、俺を見て扉の前で少し固まっていたので、席を立ち歩みよった。

 そして、俺は笑みを浮かべ朝の挨拶をした、リズエリーテもニコリと微笑み挨拶をかわし、そして席へとエスコートした。


 朝食も終わり、自室に戻ったリズエリーテの部屋を訪ねてた。


 テーブルに紅茶が用意され、侍女が壁により空気と化したころで話し出した。


「リズ、改めて謝りたいのと、言い訳になるが、話を聞いて貰えないだろうか」


「わたくしは、クロウが無事戻って来てくれただけで、安心しました、だから、もう謝らないで下さい」


「いや、今後の事を考えて俺の話を聞いて欲しい、まず、シーガルの国は、海の底にあり、日の光が入らないから時間の感覚がわからなくなるんだ、そして、俺は、何と言うか特に寝ずとも一週間ぐらい平気でな、それも相まって時間に疎くて、それに、俺の事を心配する者もいないから、今まで俺から何も無い時は、連絡したりしなかったし、気にした事がなかったのだ」


「そうだったのですか、でも、クロウの事を心配しないということは無いと思いますよ」


 リズエリーテは、ガーディス連合王国に来て、皆親切で優しい人々だと思っているので、そう言ったのだろうが、実は少し違う、それは王に対しては皆絶対的な強さを知っており、王が誰かに負ける何て事は無いと思っており、よって王である俺の事は、誰も全く心配なんてしてないのだ。


 その事に指摘する事なく自分の気持ちをリズエリーテに伝えた。


「リズ、リズに俺の心配をされて、リズには申し訳無いと思うが、本当に嬉しかったんだ、俺の事を心配してくれてありがとうリズ」


 俺は本当に嬉しくて、リズエリーテに微笑んだ。


 リズエリーテが、ぼーと俺を見ている、不思議に思い首を傾げ声をかける。


「リズ?」


「あっ、ででは、クロウに一つお願いして良いですか?」


「リズのお願いなら一つと言わず、何でも聞くぞ」


「一つだけ、どうしても約束して欲しいのです、これからは、予定など替わったら、わたくしには教えて頂きたいのです、今回の様に帰って来られないと、やはりわたくしはまた、心配してしまいます」

 そう言って、俯いてしまった。


 そんなリズエリーテに、立ち上がり傍へと移動し、隣に立っつ俺に気がついて、キョトンと見上げるリズエリーテ。


「わかった、リズには、ちゃんと連絡する、それからこの指輪を受け取ってくれないか」


 それは、小さなダイヤモンドが散りばめられた可愛らしい指輪、エンゲージリングだが、今はまだそこまで思って貰えなくてもいい、少しでも希望があるのならと俺は、リズエリーテの手を取り膝を着いて話す。


「リズ、今すぐとは言わない、俺の伴侶としてこれからは、俺と生きてくれないだろうか、これはその事を考えてくれると言うのであれば受け取って欲しい」


 予想外の俺の申し込みに驚いたのだろう、フルリと身を震わすリズエリーテは、震える声で話す。


「クロウ、わたくしも貴方と共に生きたいです、共にこれからの生を歩んで行ってもいいでしょうか」


 そう言ったリズエリーテに、俺は大きく眼を見開いて、息をひゅと飲んだ。

 そして満面の笑みを浮かべ、リズエリーテに立つように促した。

 互いに正面に立ち、見つめ逢いリズエリーテの左手を持ち上げ、その指に指輪を嵌める。

 そして、その指輪にそっと口づけて魔法を唱えた。


 そしてリズエリーテの頬に手を添えて話す。


「リズ、ありがとう俺は嬉しい、こんな俺と共に生きてくれる事に、だから後で後悔しても、もう離してはあげないぞ」

 そう言ってそっとリズエリーテに、触れるだけのキスを落とした。


 リズエリーテは、そっと眼を閉じキスを受け離れた時に、そっと眼を開け話した。


「クロウ、わたくしの事離さないで下さいね、クロウの方こそ、わたくしの事後悔しても、遅いのですよ、わたくしが使命でも義務でもなく、生涯ただ一人の為にと思ったのは、貴方が初めてなのですから」


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