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宰相 令嬢を観察する

途中で宰相さん視点になります。


 夕方、リズエリーテを迎えに来た俺とマリオとシーガルに、リズエリーテはキョトンとした表情をした。

 そんなリズエリーテに理由を説明した。


「・・・と言うことで、2~3日シーガルの所に行くことになってしまった。すまないリズ、その間は城に住んで欲しい、マリオに城からここまでの送り迎えと城での生活を頼んだから、心配しなくていい」

 そう言った俺にリズエリーテは、横に首を振り答えた。


「いえ、道さえ覚えれば一人で大丈夫ですよクロウフォード様」

 自信ありげに言うリズエリーテ。

 クロウフォード様と呼ばれた事に少しさびしい気持ちになった俺、しかし、それは城勤めのマリオが居る事への気遣いだとわかり、指摘しないことにした。


「確かにこの街は安全だが、俺を安心させると思って、マリオに送り迎えさせてくれないか」


 リズエリーテをじっと見て、再度言う俺に、少し困った様な表情ををしたリズエリーテは、微笑んで了承してくれた。


「わかりましたわ、クロウフォード様に安心していただけるのでしたら、マリオ様どうぞ宜しくお願い致します」

 俺に微笑んで、マリオに頭を下げてお願いした。


 そんなリズエリーテを微笑ましく見ていたマリオは、嬉しそうに言った。


「どうぞ、お顔を上げて下さい。リズエリーテ様、私は喜んで、クロウフォード様の替わりを勤めさせて頂きますので、宜しくお願い致します」


 そして、店の前でマリオとリズエリーテ、俺とシーガルとてそれぞれ別れた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 私マリオとリズエリーテ様は、店の前で陛下とシーガル王を見送っています。

 クロウフォード陛下が、何回か振り返り手を振られてました、それも目視出来なくなるまで、そしてお二人は行かれてしまいました。


 リズエリーテ様も、クロウフォード陛下が見えなくなるまで見送っておられました。


 それを私は、急かす事なく微笑ましく見ておりました。


 そしてクロウフォード陛下が見えなくなって、リズエリーテ様は私に向き直り、城への道案内をお願いされました。

 私とリズエリーテ様は、城へ歩いて向かいます。

 並んで歩くリズエリーテ様の様子を、そっと伺うと、少し寂しそうにお見受けしましたので、確認する為に話しかけます。


「リズエリーテ様、クロウフォード様が居なくて、お寂しいですか?」


 私の問いかけで、はっとしたリズエリーテ様は、私に顔を向け、ぎこちなく微笑んで言われました。


「いいえ、大丈夫ですわ、それとわたくしの事は、リズエリーテと、どうぞ呼び捨てにして下さいませ」


 リズエリーテ様の反応にこれは期待出来ると思い、一つ提案することにした。


「いえ、リズエリーテ様と呼ばせて下さい。そうそう、もし宜しければ城にご滞在の間、空いている時間で、ガーディス連合王国の歴史を勉強致しませんか?」

 リズエリーテ様は私が、呼び捨てを拒否した事に、少し困ったように私を見ましたが、私の申し出には、嬉しそうに微笑まれました。


「まあ、宜しいのですか?是非お願い致します!」


 その反応に私は益々気分が良くなります。

 やはりクロウフォード陛下の妃になるのは、リズエリーテ様しか居ないと。

 ガーディス連合王国の歴史をお教えするのは、私にとって王妃教育の一貫、将来の為を思っての事でした。

 しかも、お嫌そうな顔をしないばかりか、嬉しそうにお願いされるとは思いませんでした。

 なので、するりと言葉が漏れてしまいました。


「そんなにこの国の事を、知りたかったのですか?」と言ってしまってから、私には珍しくしまったと思ったのですが。


 リズエリーテ様はなおも嬉しそうにおっしゃいました。


「はい!クロウフォード陛下の国の事を、わたくしがこれから住む国の事を、ちゃんと知りたいのです!クロウフォード陛下が、帰って来るまでに少しでも覚えて、驚かせてあげたいのです!」


 リズエリーテ様のその言葉に、私は衝撃を受け心の中で叫んでいました。

 女性の扱いが、全然駄目駄目な陛下がこんなにも思われているなんて!よくやりましたよ陛下!!これ迄の臣下一同の苦労は、よもやこの様な最高なお妃様に、巡り会う為だったのですね!とクロウフォード陛下に対して、珍しく心の中で誉め称えていました。


 ****


 そして、クロウフォード陛下が言われた2日目、リズエリーテ様を迎えにお店に行ったのですが、私が店の前に着かない、辛うじて誰か判断出来る距離でリズエリーテ様が、お店から出てこちらを見られているのがわかったのですが、クロウフォード陛下でなかったのを確認されたのでしょう、少し寂しげな様子で店に入って行かれました。

 私が、店に着いてお迎えに上がった時には、そんな素振りは見せず微笑んで、宜しくお願いしますと言われました。


 3日目、リズエリーテ様は午後に入ると、そわそわと喫茶店に架かっている時計を、ちらちらよく見られていました。

 それを店で仲良くなった、兎の獣人族のハンナにからかわれていたようです。


「リズエリーテ、何?ちらちら時計気にして、誰か愛しい人でも来るの?」

 言われたリズエリーテ様は、ちょっと赤くなり反論されています。


「ち 違うわ!見てないわ!」

 にやにやリズエリーテ様を見るハンナは、ポンと手を叩き、閃いたといったポーズをし。


「そっか!今日はクロウさんが迎えに来てくれる日って言ってたね!そうかそうか、いいなぁ、リズエリーテは、あんな格好いい人が恋人で」


「ち 違いますわ!そ そんな事クロウに言わないで下さいませ!ク クロウに失礼ですわ」

 吃りながら、顔を紅くして挙動不審になるリズエリーテ様を見て、ハンナは言った。


「もうやぁねぇ、照れなくていいじゃん、好きなんでしょ」


 ブンブンと首を横に振り紅くなるリズエリーテ様。



 その後、ハンナは隙を見つけては、ちょくちょくリズエリーテ様をいじっておりました。


 以上、私は、ナーリエ諜報部員からの、報告を映像で受けてその映像を見ていました。


 そして、店が終わりに近づく頃になりましたので、リズエリーテ様をお迎えに向かった私ですが、昨日同様リズエリーテ様は外に出て私を確認すると、またも寂しげに店の中に戻られました。

 お店でお会いした時には、表面上はいつもとお変わり無いようでしたが、店から王城までの道のりでは、何か思い悩んでおられるリズエリーテ様。



 何も会話としないで王城に着いたことに、リズエリーテ様は焦ったように私に対して、大変失礼な事をしたと言われ、私に謝られました。


「マリオ様、大変失礼な事を致しました。申し訳ありません」


 そんなリズエリーテ様に、私は首を振り申し訳なさ一杯になります。


「いえ、リズエリーテ様が頭を下げる事はありません。少しお話をしたいので、応接室へ来ていただいて宜しいでしょうか」


 それを頷く事で了承したリズエリーテ様は、私の後ろを付いて来られました。

 二人で応接室へと入り、向かい合うように座り、侍女達が紅茶とお菓子を用意して、部屋の隅へと落ち着いたのを、確認し話し出しました。


「先ずはご報告申し上げます、お気付きだと思いますが、クロウフォード陛下はまだ帰って来ていません」

 リズエリーテ様は、恐らく私が応接室でわざわざ話す事に不安になったのでしょう。

 リズエリーテ様の体が震えています。

 状況を確認しなければとの思いでしょう、震える声で私に聞いてこられました。


「マリオ様、最後にクロウフォード陛下から、連絡が来たのは何時なのでしょうか?」

 膝の上に震える手を、ぎゅっと握りしめて置いて私からの、答えを待つリズエリーテ様。



「実は、二日前のシーガル様からの連絡が最後なのです」

 それを聞いたリズエリーテ様は、えっと茫然とされていました。

 顔色を無くしたリズエリーテに様に、私は内心焦りだしましたが、平静を装い一計を図ります。


「リズエリーテ様、大丈夫ですか、落ち着いて下さい。私は今から陛下に念話で連絡を取ろうと思いますので、少しお待ち頂けますか」


 リズエリーテ様がうんうんと頷いて、手を合わせて祈るようにされてます。

 その様子をみて、ますます良心が痛みますが、クロウフォード陛下が悪いのですと責任転嫁しました。


「では、今から念話致します」


(クロウフォード陛下、聞こえていますか?)

(マリオか、どうした?何かあったか?)

(クロウフォード陛下、リズエリーテ様が(何!リズに、何かあったのか!直ぐ戻る!)


 そして、私のソファの後ろに魔法陣が浮かび上がるのでした。



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