王様 売られた喧嘩を返品したい
途中で視点が、変わります。
誘拐犯の顔を見たら、見なきゃ良かったと思い、そっと再度フードを被せる俺。
うん、俺はこいつの事は知らない。
そう思い、リズエリーテににっこり微笑む。
そんな俺の態度に誘拐犯は慌てて、頭を振りフードを取った。
真っ青な癖のある短めの髪、瞳も青、二重のパッチリした目、かわいらしい顔をした青年だが、今は頭のみ動くので、慌てた顔して必死に喋りだした。
「やっ!ちょっと待って!見なかった事にしないでよ!僕とクロウ様の仲じゃん!めっちゃ見たじゃん!拘束魔法といて!」
俺は明後日の方向へ顔を向け言う。
「イエイエ、ワタシハアナタノコトナンテ、シリマセン」
「何でカタコト!?スゴい棒読み!?こっち見て!ほら、僕だよ!だから、拘束魔法といて!」
俺は物凄く嫌な顔して、そいつに言ってやる。
「はあ、何で解かなきゃならん、お前は牢獄で一生涯暮らせ!ああ、だがお前に牢屋も勿体無いから、飯代と宿泊代を出しやがれ!」
「えっ!?それ酷くない!鬼!悪魔!守銭奴!あと腕治して!」
「ふざけるな!てめぇで治せ!」
俺の本気の怒った声を聞いた誘拐犯は、今度はしおらしくお願いしだした。
「ほんと痛いです、治して下さい、お願いします」
「全く、お前は」
仕方ないと思い、誘拐犯を治癒魔法で治して、拘束魔法を解除する。
「大体お前は何で、こんなことをしたんだ!」
あー痛かったと誘拐犯は、自分の体を確認する。
「だって、クロウ様に会いに行ったら城下町だと聞いて、見に来たんだよね!そしたらクロウ様が、リズちゃんと何か楽しそうだったから、あっと、所で良いの?リズちゃん、何かポカーンとしてるけど」
そこで俺は、はっとして、ギギギと顔を向けリズエリーテを見た。
「リズ、大丈夫ですか?びっくりしてしまいましたよね」
きっと俺は、情けない顔でリズエリーテを見下ろしているのだろう。
声を掛けられたリズエリーテは、青年と俺を交互にみて。
「お二人はお知り合いなのですか?」
青年はぷっと笑い、あははと笑いだした。
「リズちゃん、面白いね、僕は海王のシーガル、ヨロシク!でも、もっと気になることない?」
そうこいつは海王でシーガルと言う、これでも海の種族の王だ、シーガルの問いかけに、首を傾げるリズエリーテ。
そんなリズエリーテを見て、俺は、恐々と問い掛けた。
「さっきまでのシーガルとのやり取りなんだが、その怖くないのかと・・・。乱暴な話し方をしていただろ、騙した訳では、いや、言い訳だな、済まなかった、本当の俺は、今見た通り、言葉使いが悪い、まるで無法者だな」
そっとリズエリーテに回していた腕を放し、視線を落としてしまう。
リズエリーテは、そんな俺を下から覗き込み微笑んだ。
「確かに先程は怖いと思いましたが、それはわたくしの為に、クロウが怒ってくださったのでしょう、それに、言葉使いが悪くてもクロウが優しい事は、わたくしが知っています。またクロウは無法者ではありません。わたくしを助けて下さいました。ですが、これからはわたくしの前では飾らないクロウで居て下さい」
リズエリーテにそう言われて、ほっと息を吐いた俺は、ぎこちなく笑いリズエリーテにお礼を言った。
「ありがとうリズ、これからも一緒に居ても良いだろうか?」
リズエリーテは優しく微笑んで。
「はい、わたくしこそ、これからも、色々教えて下さいねクロウ」
そこでシーガルが叫んだ。
「良い感じで、終わったけど、もっと気になる事ないのリズちゃん!クロウ様も!もっと大事な事あるでしょ」
言われた俺達は首を傾げる。
「マジですか!?僕名乗ったよね!海王って!でクロウ様って呼んでるんだよ!はい!答えは」
俺はそんなに大事か?思い。
リズエリーテは、うーんと考えていた。
「シーガル様は王様なのですね、王様のシーガル様よりもクロウは、上位者?なのですか」
「リズ、こいつに様付けしなくて良い、なんだったら海蛇って呼べばいい」
こいつの本来の姿は海龍だ、蛇の様に長い体の龍だ。
「ちょ、酷くない、まあ、それは置いといて、ちなみにガーディス連合王国は、元は色々な種族の小さな国が集まって出来た国なんだ、それぞれ種族の長がそれぞれの地を治める王となり、その王達を纏めて居るのが、リズちゃんに分かりやすく言うと、ここにいるクロウフォード魔王陛下です!」
パチパチと拍手を俺に贈るシーガル。
リズエリーテはえっえっと俺を見る。
俺は困って頭を手で掻きながら、リズエリーテを見た。
そして取りあえず間違いを訂正する。
「魔王陛下はやめろ!」とシーガルの頭をゲンコツで殴っておき、リズエリーテに困ったように笑いかけ話した。
「まあ、なんだこいつの言う通り、ガーディス連合王国の王をやっている。こいつらの尻拭いや、雑用纏め役をやらされているだけだ」
「またまた~、そんな事言っちゃって、なかなか出来ませんよ、あんな色んな濃いキャラ達を纏めるのはね、圧倒的な強さも必要だしね」
「お前が一番キャラ濃いわ!リズ疲れただろう、お腹も減ったしな、こいつの事はほっといて帰ろう」
シーガルを放って置いて帰ろうした俺の腕を掴んで、元気にいい笑顔でお願いしてくるシーガル。
「僕も!クロウフォード陛下の城下町の家に泊めて下さい!!」
「い・や・だ!城に行け!」
「リズちゃん!クロウ様が意地悪するよ~、僕、野宿になっちゃうよ、酷いよね、ね」
シーガルは、リズエリーテに訴える様に言った。
リズエリーテは困ったように俺を見て。
「これからは、クロウフォード陛下とお呼びした方が宜しいですよね」
「いや、今まで通りクロウと呼んで欲しい」
「リズちゃんまで、僕を無視しゃうの!?ねっね」
シーガルががっくりと両手両膝を地面について、崩れ落ちた。
そんなシーガルと俺を交互に、オロオロと見るリズエリーテ。
俺は、仕方ないかとはぁと息を吐いてリズエリーテを見た。
「リズ、すまないが、こいつ泊めていいか?」
リズエリーテは、ほっとして頷づいてくれた。
「はい、クロウがよろしければ、わたくしは大丈夫ですよ」
「ありがとうリズ、非常に不本意だが、いつまでそうしているシーガル、夕御飯食べに行くぞ」
シーガルは嬉しそうに顔を上げ俺を見て、ぴょんと跳んで立ち上がる。
「やっぱりクロウ様優しいよね!リズちゃんもありがとね!僕お腹減っちゃたよクロウ様、転移宜しく!」
仕方のない奴だと、シーガルを見た。
「ほら、お前は俺の腕でも掴んでろ」
シーガルにそう言って、リズエリーテとは手を繋いだ。
そして魔法を発動して転移した。
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次の日リズエリーテを喫茶店へと、シーガルと共に送った俺は、そのままシーガルを連れて王城に向かった。
城へ歩いて向かうなか、シーガルへ聞いた。
「で、何の用件で来たんだお前は?」
「ああ、うん実はクラーケンのゲン爺と、ビックホエールのグン爺が、喧嘩しちゃってそれの仲裁お願いしたくてね♪ハハハ」
おいおいと、呆れた目をシーガルに向ける。
「それぐらい、いい加減自分でどうにかしろ!」
「いや、無理だから、二人とも僕の教育係だったから、言いにくいんだよね、それでも頑張って一回止めに行ったんだけど、凄く睨まれて怖くて逃げて来ちゃったんだテヘ♪」
「テヘじゃねぇよ!今はお前の方が強いだろうが」
「そうなんだけと・・・やっぱ親みたいなもんだからさ、だから、クロウフォード陛下にお願いしたくてね」
「はぁ、わかったよ、マリオに聞いてからな」
そうこうするうちに王城へ着いた、弓使いの冒険者のままでは、不味いと思い俺は魔法で黒で統一された騎士の様な服に魔法で着替え、警備兵へ声をかけ入場する。
俺は執務室へ、シーガルは応接室へと別れた。
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執務室に着いて中へと入り、早速マリオに今後の予定を、聞いた。
「おはようマリオ、明日から2,3日何かあるか?」
「おはようございます、クロウフォード陛下、特には有りませんが、書類のみですが、何か?」
「ああ、シーガルに会ってな、城に連れてきた、で、俺に会いに来た理由が、ゲン爺とグン爺が喧嘩してるとの事で仲裁を頼まれた」
「成る程、それは大変ですね、あのお二人が喧嘩すると渦潮が発生し、船が巻き込まれるかもしれませんね」
「ああ、今日の夜から行こうと思うが、2,3日リズの事頼めるか」
「それは、構いませんが」
「じゃ、今日一緒に迎えに行って、今夜から城へ泊めてやって欲しい、あっ、それと、あのバカシーガルのせいで、リズには俺がこの国の王だとばれたから、普段の俺もばれた」
そこで凄く可哀想な子を見る目で、マリオが俺を見る。
「おい!その目はなんだ!リズはそのままの俺で、良いと言ってくれたんだ、お前に憐れられる謂れは無いぞ!」
ちょっと勝ち誇った様にビシッとマリオに指差して言ってやった。
それを聞いたマリオは、びっくりした顔をしてから、嬉しそうに微笑み礼をした。
えっ!?予想と違う反応なんだが!?
「それはおめでとうございます、良かったですねクロウフォード陛下、では、私はリズエリーテ様の部屋の用意と、シーガル王にご挨拶してきますので、そのついでに3日分の食事を食堂に頼んでおきます、では」
珍しく素直に嬉しそうにするマリオに、驚いた俺は、ああとだけ返事をし見送った。
てか、おめでとうってなんだ?
「久しぶりに見たな、マリオの素直な笑みを、槍でも降って来んじゃないか?」
そう独り言を言って、さあ片付けるぞっと机に座った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
所変わってここは、私マリオが向かったのは海王シーガル様が居る応接室。
そして今シーガル王と向かい合って座って居ます。
シーガル王が、昨日の出来事を嬉しそうに話しました。
「クロウフォード陛下てば、リズちゃんには嫌われたくないんだって事、まるわかりだから、でも、リズちゃんも凄いよね、クロウフォード陛下のあの殺気を感じても、その後普通に喋ってんだから、まあ、殺気とあの冷笑と視線をぶつけられたの僕だけと、隣に居たんだから怖かった筈なのにね」
「ほお、陛下がそんなに、これは益々リズエリーテ嬢には、こちらに居て頂かなくてはね」
陛下もそうですが、リズエリーテ嬢の反応を聞くと期待出来そうですし。
ふふふと、思わず声に出して笑ってしまいました。
「マリオ君、何?恐いこと考えてるの?ちょっと怖いよ、その笑み」
「失礼ですね、陛下の事を思っての事ですのに」
「うん、まあ、そうなんだろうけどね、陛下は、見た目は良いのに、女性に縁が無かったよね、普通の女性と会話は、弾まないし、それならばと騎士の女性と席を設ければ、話は弾んだけど武術談義に花を咲かせ、上手くいくと思ったら、気がつけば勝負だって、闘い出し最後は何だろ、男の友情の様な展開で肩組んで、またやろうなって終るし」
シーガル王は、今ここには居ないクロウフォード陛下を思っているのか、遠い目をしています。
私も、これまでの事を思い出し、はぁと溜め息をついてしまいます。
「女性との席を設けようとすると、直ぐに面倒臭いと逃げ出してしまわれて、ほとほと困っていたので、陛下が大事にしたいと思われた、リズエリーテ嬢の事は、逃す訳には参りません」
そんな風に断言する私を見たシーガル王は、
「リズちゃん、御愁傷様、まあ、リズちゃんもクロウ様の事信頼してるようだし、大丈夫か」っと呟かれてました。
私がリズエリーテ嬢に酷いことするはずがありませんのに、シーガル王は、私の事をどんな酷い人物かと思われているのか、まったく、いつか絞めてあげましょうか。