王様 売られた喧嘩を買う
俺が片膝を着いて、片手で額を押さえてしゃがみこんでいたら。
リズエリーテが降りてきたのがわかったが、ちょっと心のダメージが収まらなくて、そのままでいたら、リズエリーテが息を飲んだのがわかった、大丈夫だと言う前に、びっくりしたリズエリーテが、トトトと俺に駆け寄り肩に手を置いて俺に話しかけた。
「クロウ!大丈夫ですか?ご気分がすぐれないのですか?!」
少し慌てて、心配そうな声音のリズエリーテに俺は顔を上げ、優しく安心させるように微笑んで立ち上がり言った。
「大丈夫です、心配かけてすみませんリズ、すぐ紅茶をいれますから、リビングで待ってて下さいね」
そう言う俺にリズエリーテは首を振る。
「クロウ、無理をしないで下さい、わたくしが紅茶を入れます」
「本当に大丈夫ですよ、心配していただきありがとうございます、しかし、リズは紅茶の入れかた分からないのでは?」
決まり悪そうに俯いたリズエリーテは、少しして顔を上げ決意のこもった目で俺を見た。
「でしたら、クロウが教えて頂けますか、今後はわたくしの事は、わたくしがしていかないと行けないのですから、覚えていきます」
「しかし私も教える程には上手くはないので、今回は私が入れます、ですがリズが自分の事を出来るようになりたいなら、丁度良いところがあります、お茶を飲んだらそこに行ってみませんか?」
「そんな所があるのですか?わかりました、でもクロウ、体は大丈夫なのですか?嬉しい提案ですが、クロウが疲れている時に、わたくしの為に無理をして欲しくはありません」
そう言ってリズエリーテは、心配そうに俺を見上げた。
「いえ、本当に大丈夫ですから、そんなに心配させてしまったのですね、ありがとうリズ、でも、リズが私に紅茶を入れてくれる日が楽しみなので、是非行きましょうね」
そう言ったらリズエリーテの心配そうな表情が、柔らかく嬉しそうに変わり、少し頬を紅くしてガッツポーズをして可愛らしく言った。
「わかりました、わたくし頑張りますねクロウ」
初めて見るリズエリーテのその可愛らしい表現に、ちょっとくらっと来てしまった。
今まで色んな女性に、似たような事をされて来たのだか、気にした事が無かった俺は、初めてのこの気持ちに首を傾げた。
****
リズエリーテとのお茶会を終えて、とある場所にやってきた俺達。
「ここなのですか?クロウ?」
そこは喫茶店「デリシャス」
「ええ、ここなら、紅茶の入れ方も庶民の話し方も手っ取り早くわかりますよ、オーナーとは話を着けてますので直ぐに働けます、先ずは一週間お願いしてますので頑張って下さいねリズ」
そう言って店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ!ようこそデリシャスへ!お二人様ですか?」
にっこり微笑み元気な挨拶をするウエイトレス。
「いえ、私達は客ではありません。こちらの女性が、今日からここで一週間働かせて頂くことになってます、店長をお願い出来ますか」
にっこり微笑み返し、来た理由を言ったのだが、少しばかり、ぼーとしているウエイトレス。
「お嬢さん?」と声をかけたら、はっとしたウエイトレスは、慌てて少々お待ちくださいとバックヤードへと入っていった。
暫くしてウエイトレスが戻って来てバックヤードへと案内された。
*****
そして案内された部屋の中で、店長と向かい合って用意された席に座る。
店長の頭には白く長い耳があった。
兎の獣人族で、諜報部員だったりする。
俺がリズエリーテを紹介する。
「こんにちは店長、此方が今日からお願いする、リズエリーテです」
紹介されたリズエリーテは、立ち上がり挨拶する。
「リズエリーテと申します。店長様今日から一週間ご教授ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。」
「まあまあ、丁寧な挨拶ありがとうリズエリーテちゃん、こちらの方こそよろしくね 、私は店長のナーリエよ、お店では気軽に店長って呼んでね!今日からと言うことたけど、あと3時間位だけと丁度いいかもね、急に一日じゃ大変だもん、じゃリズエリーテちゃんの事は私に任せて、クロウ様はお帰り下さい、迎えには来てあげて下さいね」
そう言ってナーリエは立ち上がって、リズエリーテの肩に手を置いてさあさあと押しながら扉へと向かっていく。
押されるように出て行きながら、リズエリーテは慌てて俺に声をかけた。
「クロウ!わたくし頑張って来ますね」
「頑張ってくださいリズ、終わる頃に迎えには来ますから」
*****
そして、リズエリーテが喫茶店で働いて幾日かたったある日の朝、いつものようにリズを喫茶店に送り届け、店から一旦家へと戻り、ガーディス王城へと転移した。
「おはようございます、クロウフォード陛下」
転移で現れた俺に頭を下げて挨拶をするマリオ。
「おはようマリオ」
俺も挨拶をして自分の机にドカリと座った。
そして、未決済の書類箱を見て、首を傾げる。
「あれ、最近随分少ないな」
未決済の書類箱の中身を取りだし見ていく俺に、マリオが答えた。
「さすがに、今の生活で通常通りの量では、陛下も無理でしょう、滞るのも困りますので、今は優先順位を考慮し、此方で出来る分は処理致しました、そちらは重要案件ですので、お願い致します」
「それは助る、ありがとな」
そうしてちゃちゃと書類を片付ける。
*****
そして全て片付けた時、カチャリと音がした。
マリオが、紅茶が入ったソーサーを俺の机に置いた。
「お疲れさまです陛下」
「ようやく頼んだ紅茶が来たのかマリオ、随分時間が掛かる紅茶だ」
「まあ、近いうちに私ではない方から、直ぐに入れて貰えるのではないですかね」
「おまえ、なんでそんな事を言う、まさか」
俺の睨みに相変わらず、何とも思ってないようで、呆れた様に首を振り残念そうな顔を向けてきた。
「私が陛下に判らないように、遠視魔法で見てるわけないでしょうが、全く、」
とやれやれといった態度をして、話を切り替えやがった。
「リズエリーテ様は、本当に健気で、真面目な方で、気遣いベタな陛下の事を身限らないですし」
「お前は!俺の事完全に舐めてるだろ!それに、まだ、俺はバレて無いぞ!」
バレて無いという事は、普通のエルフという事だ、だから、俺は紳士で、気遣い出来てる筈だと、立ち上がりビシッとマリオに指差し言ってやる。
涼しい顔して、マリオはわざとらしく首を振った。
「いえいえ、私は陛下の下僕ですよ」
絶体そんな事を思ってないだろう!!と思わず苦い顔をし、こんな偉そうな下僕がいるか!と心で突っ込む
「お前という奴は、俺ことちゃんと敬ってるのか?」
「そろそろお時間ですよ、行かれなくていいのですか?」
「また無視か、だがもうそんな時間か、帰るか」
「ほー「帰る」ですか、あながちまんざらでもないのでしょうか」
小声でぶつぶつ言うマリオを、訝しげに見てマリオに声を掛けた。
「なんだよ?」
「何でもありませんよ、本当に急がないと不味いのではないですか、行ってらっしゃいませ」
「まあいい、なにかあったら連絡くれ」
そして転移魔法で家へと移動した。
****
マリオと下らん事を話してたら、いつもより遅くなった。
俺は家から慌てて出て、喫茶店まで走って行った。
着いた店は閉店の案内が架かっているが、灯りは点いていたが、少し何時もと様子が違う事が気になった。
扉も鍵は掛かって無かったので、入ることにし、誰もいない中、声をかけた。
「誰かいませんか?」
返事が無いことに、益々おかしいと感じ、バックヤードへ向かい、扉を開けると誰かが倒れているのを発見した。
慌ててその人にかけよると、ナーリエだったので、体を起こし声を掛けた。
「おい!ナーリエどうした?!リズエリーテはどこだ!!」
揺さぶったことにより目を覚ましたナーリエは、慌てて話す。
「クロウフォード様申し訳ございません、リズエリーテ様は誰かに連れて行かれました、急ぎ追って下さい、裏口に向かいました」
ぐっと唇を噛み締め、目を鋭くした俺に、ナーリエは少しビクリとしたようだ。
それを気にせず、静かに「わかった」とだけ言い、ナーリエから離れ裏口へと移動した。
*****
裏には置き手紙が石で押さえて置かれていた。
それを魔法で手元に寄せて読み、グシャリと手紙を潰し、ある方向を睨み付けると殺気をその方向へと発した。
そして魔法を発動させ書かれていた場所へと転移した。
*****
そこは林の少し手前、城下町の城壁の外の草原に大きな木が一本生えている。
「来てやったぞ、良い度胸だな、俺に喧嘩を売るとは、どこのアホだ」
一本の大きな木の前に立ち、その木に向かい低く、冷えきった声で話した。
その声を聞いた者は恐らく恐怖し、震え気絶する程の殺気を纏った声音だ。
木の影からフードを被った人物が、リズエリーテの首に手を掛けた状態で出てきた。
その状態を見て、俺の殺気がブワリと膨れ上がるのがわかったが止められない、しかし、頭に血が昇った俺でも、リズエリーテの体にゲガがないか目でざっと確認し、リズエリーテに防御魔法を掛け、殺気を誘拐犯に向ける。
「よく来たね~、珍しい怒り具合だね、そんなにこの女が大事なの?」
誘拐犯は、俺の殺気を気にして無い事に不信に思うが、そんなことはどうでもいいと、俺はイライラしすぐに片付ける事にする。
「貴様、よっぽど死にたいらしいな、俺に喧嘩を売ったんだ、本当なら後悔するほど相手してやりたいが、辞めといてやる。一瞬で殺してやるから感謝しろよ」
冷たい視線をそいつにくれてやる。
「やっ!?ちょっと待ってよ!人質居るんだから、冷静にならないと駄目じゃん!この子死んじゃっていいの?」
何故か誘拐犯に諭されるが、そんな事俺が許す筈ないだろうが!と叫びたくなるのを押さえ、ニヤリと笑い魔法を発動した。
それに気が付いた誘拐犯は、リズの腰を抱き抱え、もう片方の手は首に添える。
その犯人がリズエリーテに触れたことにイラっとしたのだが、人質としてかと思い直し、そんな事をしても、もう絶体にリズエリーテには傷一つ付けられないのになっと俺は思い、クックッと冷笑してしまう。
「転移で来る気だろ、それならこっちは魔方陣が出ている所から、随時移動するだけだ」
「ふん、そんな事する必要もないし、魔法を使う時に、魔方陣が発現するとは限らんぞ、まあ、もう終わりだが」
そう言って、二人に歩いて近づいて行く。
誘拐犯はリズエリーテを連れて移動しようとしたが、頭は動くのに体が動かない、指も動かせなくなっている。
そうするうちに、俺は奴の目の前に立った。
「リズは返してもらうぞ」
そう言って動けない誘拐犯の両手を、リズエリーテから引き離す時、ボキッという鳴ってはいけない音がしたが、気にしない。
「ギャ!」
誘拐犯は叫んだが、そんな事は無視して、誘拐犯の拘束から解放したリズエリーテが、俺に倒れ込んできたのを受けとめて、優しく頭を撫でた。
そして、ほっとして優しく話し掛けた。
「リズ、もう大丈夫ですよ、直ぐに片付けますから、ちょっとだけ待ってて下さい」
リズエリーテは、俺を見た時安心たようだったが、誘拐犯に話す言葉と声、行動に、恐怖し震え何も言えなくなってしまっていた。
俺はリズエリーテ怖がらせてしまった。
それを謝るようにそっと抱き締め頭を撫で、大丈夫と優しくもう一度言ったら、ほっと息を吐くのがわかりそして震えも無くなったが、何故か俺の胸元をキュと手で握った。
俺の事恐ろしくないのか?と疑問に思ったが。
そこで俺が片付けると言ったので、慌てて顔を上げ言った。
「クロウ、わたくしは大丈夫ですから、殺さないで下さい、警備隊に引き渡してちゃんと法で裁いて頂きましょう、お願いです」
リズエリーテに潤んだ眼で見上げられ、お願いされたら断れる筈もなく、また、自分の腕の中にいる事で、頭も少し冷静になってきた俺は、素直にリズエリーテのお願いを承諾する。
「わかりました、リズがそう言うのでしたら」
微笑んでリズエリーテを見て、誘拐犯の顔だけ確認しようと、動けない誘拐犯のフードを取った。
俺は、物凄く嫌な見なければ良かったといった表情になったと思う。
サクサク進み過ぎだろうか?と思うケド、へんに文章付け足すととんでもない事になりそうなので、そのままいっちゃいます。




