私!ヒロインじゃないの?
マリアンヌさん視点です。
第3話
本編終了後のお話があります。
私はクロウ様に一番可愛いであろう微笑みを向けた。
きっとクロウ様も見惚れてくれると思って、クロウ様の顔を見たら、何故か私に冷たい目を向けて、無表情に話された。
「先ず、俺はリズに拷問などしていない、それに、リズは、獣人や他人種を傷付ける事は絶体にしない、自分が辛くても人種関係無く助けてしまう優しい女性だ、そんな人に俺が拷問などする理由もない、わかったか、だから俺の腕を直ぐに離せ」
尚一層冷たい眼を私に向ける、だけど私はクロウ様の心が傷付いているのがわかっているから、やさしく微笑んで言った。
「私には、嘘をつかなくていいんですよ、さあ、本当の事を仰って下さい」
さあ、私に心を開いてと見てみると、なんかもう勘弁してくれといった表情をされているクロウ様、私が変だなっと思っていると、女性の声がした。
「クロウ様から離れて下さいマリアンヌ様、その方は他国の王なのですよ、その様に触られるのは不敬になります」
リズエリーテが、私を厳しい目で睨み付けていた。
えっ?なんで!?リズエリーテがいるの?それに初めて見る強い眼差しで私を牽制してる。
ラアド様の事や、卒業式の断罪の時にも見せなかった強い眼。
なぜ!どうして?と思っていたら、クロウ様が無理やり私の手を引き剥がして、リズエリーテの側へと歩みより彼女を抱き締めた!
はっ?と思った私は叫ぶように言った。
「え!?なんで!クロウ様がその女を抱き締めるのよ!?どういう事なの!!おかしいじゃない!?
私はクロウ様に会うために頑張ったのに!その女が、私に意地悪しないから、設定通りに周りがその女が、私を虐めているように見えるように頑張って誘導までして、闇の森まで追放までさせたのに!なんで!何処も間違ってないのに!」
思わず今までの事を叫んでしまっていた私の後ろから、ラアド様の声がしたけど、私は構ってる暇なんてない。
「マリアンヌそれはどういう事だ!」
クロウ様を見ていたら、突然現れたラアド様からリズエリーテを守るように腰に腕を回して、私達に向き直った。
ラアド様がクロウ様達に何か話している。
「お前はリズエリーテ、まさか、生きていたのか、それに、そいつは誰だ」
私はじっと二人を見ていた。
するとリズエリーテが前に出ようとしたが、クロウ様は首を振り、リズエリーテの耳元へと口を寄せ何か話している。
そしてリズエリーテの腰に腕を回し抱き寄せていた。
こんなのおかしい!!だって!シナリオに無いもの!!
リズエリーテとラアド様が何か話していた。
二人の会話はどうでもいい!先程の光景に私は悔しくて下を向いて呟いた。
「こんなのおかしい、クロウ様があの女を拷問せず、あんな風に接してるなんて、あの場所は、私の場所なのに、ダリアの攻略対象者は逆ハーレムも簡単に出来たのに、だから、次もゲーム通りになる筈なのに」
クロウ様とラアド様がなにやら話していた、そして私はゆるゆると顔を上げたら。
クロウ様がリズエリーテを後ろから抱き締めて、頬にキスをした。
そこで、私はキレてしまい叫んだ。
「お前がバグなんだ!!だったらお前が消えればルートが修正されるんだ!!死になさい!!」
そして魔力を集中させ、光の矢をリズエリーテに向けて放つ、そして、レイピアを顕現させて、リズエリーテに斬りかかっていった。
すると、クロウ様が私の光の矢を掴んで消滅させた。
ならばとレイピアで斬り付ける寸前で、体が動かなくなる。
なんで!なんで?そう思っているとクロウ様が私に話し掛けてきた言葉は聞きたくないセリフだった。
そして、私は間違っていたの?と思い意識を失った。
****
目が覚めると、王宮の私の部屋だった。
まだ、生きてるんだ私。
ぼーと天井を見て、溜め息を吐いた。
窓からはオレンジ色の光が射し込んでいる。
夕方なのね。
あーどうなるのかな私、この世界はゲームじゃなかった。
もっと早く気が付いていたら、いえ、駄目ね、相当浮かれていたもの。
ラアド様達には、きっと不敬罪とか言われて修道院にでも入れられるのかしら、それとも処刑。
処刑なら痛くない方法でお願いしたい。
そんな馬鹿な事をつらつら考えていると、扉がノックされた。
「マリアンヌ、僕だ、入っていいかい?」
「どうぞ」
私は簡潔に返事をして、ラアド様を迎えるために起き上がり、ベッドから立った。
「お見苦しいなりで申し訳ありません、ラアド皇太子殿下」
私は膝を折り礼をした。
ラアド様は少し驚いた表情をした。
まあ、今まで呼び方がラアド様だったから。
「いや、それより1日中起きないから心配したよ、身体は辛くないか?僕の事は気にしなくていいから、横になった方がよくないか?」
やっぱりラアド様は、優しい王子様ね。
「いえ、大丈夫です、お気遣いありがとうございます、それと、今までの非礼をお詫び致します」
「マリアンヌ・・・」
「あっ、申し訳ありません、どうぞソファーへお座り下さい」
ラアド様が立ったままなのに気がついた私は慌ててソファーを進めた。
ラアド様がソファーに座り一息ついた所で、私は膝を折りお辞儀をしてラアド様にお願いした。
「ラアド皇太子殿下、私を裁いて下さい」
私はこの世界をゲームと思って行動した。
それは人の心を無視して、自分の望む結果を求めた。
そして二次元ではなく現実とわかった今、なんて傲慢で身勝手な行動、確かにクロウ様の仰った通り。
もっと私は転生によって、生きてた事を大事にしなきゃ駄目だったんだ。
ほんといい年して浮かれ過ぎね。
私は自傷ぎみに小さく笑う。
せめてラアド様には、本当の事を話した方がいいのかな、でも、話してこれ以上傷付けてどうするの?とも思う。
私が悩んでいると、ラアド様が俯く私に話しかけた。
「マリアンヌ、僕は、君を手に入れる為に、リズエリーテの命を蔑ろにした。だから、僕が君を裁く権利なんてないんだ」
そう言われたラアド様の言葉に、私は驚いて顔を上げた。
ラアド様は、情けないという表情をされていた。
「私のせいですよ、ラアド皇太子殿下は悪くありません、私がその様に誘導したのですから、私はリズエリーテ様が魔王様に連れ去られると思ってましたから、今思えば、私の思い込みでリズエリーテ様の命を危険に晒してしまいました、実際は魔王様に助けられて居たので良かったですが、もし、違っていたら・・・」
「マリアンヌ、全て話してくれないか?」
「話せばラアド皇太子殿下が、ますます傷つく事になるかもしれませんよ」
「構わない、僕は事実を受け止めないといけないんだ」
ラアド様の決意の眼差しを見て私は話す事にした。
****
私は、私の世界で死んだことと、その時の年齢とゲームの話をした。
ゲームがこの世界にないから、本の空想物語として説明した。
そして最初から、その話にそって私が行動をしていたこと、リズエリーテ様だけが話と違っていた事。
私が話を無理やり進める為に、リズエリーテ様にした事。
話を進める為に、ラアド皇太子殿下の側近の方達にも、してしまったこと。
冷静に他人事の様に話すと、私はとんでもないビッチだった。
そう思うと、両手、両膝を床についてしまいそうになる。
きっとクロウ様は、そんな私を知っていたのかもしれない。
だからあんなにも冷たい眼で私を見ていたのかも。
そして、私の目的はクロウ様だった事をお話した。
「馬鹿な女ですよね、物語の話を現実も同じになると思うなんて」
ふふと力なく笑ってしまう。
「マリアンヌ、それでも僕は君と居て、僕は僕で居れたんだ、だから、僕と一緒にやり直さないか」
「えっ?」
私はラアド様の言われた事に、しばしびっくりして呆けてしまった。
「僕は、リズエリーテとは数度話しただけで、決められた婚約者だったから、蔑ろにしていた、だから、魔王と居たリズエリーテを見た時驚いた。あんな表情を見た事がなかった」
「確かに、今思い出すと、リズエリーテ様はとても幸せそうでした。それに、私がクロウ様に触れているのを、凄くお怒りになられていたのも初めて見ました」
ラアド様と私はその時の事を思いだし、苦笑いをして、お互い情けない表情をしていた。
「マリアンヌ、だからと言うのも変だけど、僕達はやり直せないだろうか」
「いえ、私はラアド皇太子殿下には相応しくありません。魔力も封印されましたから、国の役にも立てません。
それにソリン様達にもお詫びをしないといけません」
「僕も一緒に謝るよ」
私は慌てて手を振ってラアド様に話す。
「駄目ですよ!ラアド皇太子殿下は何も悪くはありません」
「うん、そうかもしれないね、でも、僕は君の側に居たかった為に、彼らを利用したのは僕だ、それにこれから君とちゃんとやり直したい、だから僕も謝るよ」
がんとしてラアド様は譲らなかった。
そしてラアド様が立ち上がった。
「今日はもう帰るよ、マリアンヌも休んで、また明日」
そう言われて私の部屋を出て行かれた。
私はじっくりと考えた。
ラアド様は、本気で私とやり直す気のようだけど、私はその言葉に甘えていいのだろうか?
いや駄目だろう!精神年齢は私のが上だ、年下の子に付き添われて謝るなんて、子供じゃない!
それに、ソリン様達の婚約者様達にも、お詫びをしなければならないけど、プライドの高いご令嬢ばかりだし、私のお詫びを受けてもくれないかもしれないし。
でも、もう行動あるのみだ!
取り敢えず明日ソリン様達に謝ろう。
そう思い、夕食を頂きお風呂に入って寝ることにした。
次で終わりです。