召喚勇者またも異世界へ召喚される
完結後、数多くの皆様に読んで頂いたようで、まさかの日別ランキングに一時表示された時は、驚いておりました。
再度お礼いたします。
今回は勇者ハヤト君のお話
本編完結後のお話です。
相変わらずのゆるゆるな妄想が漏れました。
皆さん覚えてるだろうか。
以前ダリア王国に召喚され、クロウフォード陛下に元の世界に戻してもらったハヤトです。
元の世界に戻ってからのある日の夕方、僕は学校からの帰宅途中で、道路を歩いていたら突然地面が光だし、その光に包まれた、少ししてその光が収まり周りを見ると、僕は見なれない部屋というか、以前にも見たというか、真っ白の石造りの部屋で、中世ヨーロッパの様な装いの文官ポイ人と、女神の様なドレスを纏った巫女ポイ女性が目の前に居るのを確認すると、思わずはぁーと大きく息を吐き肩を落としてしまう。
またか、何なんだ僕って、なんか呼ばれやすい体質なのか?と落ち込んでいると、巫女ポイ女性から決まり文句を言われた。
「勇者様、世界を魔王から救って下さい」
そして、その女性は両手を祈る様に合わせて僕を見た。
その言葉を聞いて、僕は頭を抱えて屈みたくなったが、辛うじてこらえた。
そして、ちょっと待ったと手を前に出し、巫女ポイ女性に言った。
「ちょっと待って下さいね、知人に連絡を取らせて下さい」
その女性は首を傾げて「どうぞ」と返事が返ってきたので、僕は首にストラップで提げていた、スマートフォンを手にして電話を掛けた。
この電話は、以前クロウフォード陛下が、僕の世界に来ていた時に、カスタマイズして頂いたスマートフォンだ。
その時は、本当に軽い気持ちで、僕が陛下にカスタマイズをお願いしたのだ。
それが今、心から僕は自分にgood jobと思った瞬間だった。
陛下は二度も召喚に遭う者など、滅多に居ないとおっしゃていたのだが・・・、何故か僕はその二度目に遭ってしまった。
ルルル ルルル
『はい、リコだ』
「リコさん、ハヤトです。大変申し訳ありませんが、クロウさんに、僕に電話して頂けるように連絡をお願い出来ませんか?」
『直接かけれないのか?まあ、いい、わかったよ、クロウ君に直ぐ連絡をするよ』
「ありがとうございます、助かります」
『ああ構わないさ、じゃハヤト君またな』
そして、僕は少しほっとして電話を切った。
リコさんは、不思議そうな声をしていたが、深く聞くことなく、すぐ了承してくれた。
リコさんは時には困った人だけと、ここぞと言うときには、何も聞かずに行動してくれる人だ、本当に助かる。
巫女ポイ女性は、不思議そうに何か聞きたそうに僕を見ていたが、僕はニコリと微笑みスルーして言った。
「お待たせしました、では、話をお伺いはしますので、場所移動するんですよね」
僕は馴れたように魔方陣から降りて、女性に案内をお願いした。
僕の予想では、謁見の間で、王さまが居て、周りは偉い人たちが居るんだろうなっと思いながら女性について行く。
その女性に付いて行きながら思う、今回の召喚は巫女様的な人にかと、そしてやっぱり、召喚理由は“魔王を倒せ”なんだなっと思った。
そうこうするうちに割りと大きな扉の前。
扉の両側には、立派な鎧を纏った騎士が居た。
「この部屋の中に、この国の王陛下がいらっしゃいます、私の後ろで、私の真似をして下さいね」
あーやっぱりと思いながら頷いた。
扉が開き部屋の中に入って行く。
僕の予想通り、扉から階段状になった壇上に居られる王陛下のもとまで、赤い絨毯が敷かれており、その壇上の下で、両側に何人か立っているのは、恐らくこの国の偉いさんなのだろう、僕を値踏みするような視線を感じる、前に召喚された時は、テンションが上がってて解らなかったが、前もこんな風に見られて居たのかと思うと恥ずかしい。
そして、僕は王陛下の居られる壇上へ上がる階段の手前で、片膝をつく。
自己紹介を終えて、お決まり台詞を王陛下が話しだす、そして話も終盤になり「・・・力を貸しては頂けないだろうか」の所で、僕が待ちわびた着信音が鳴った。
ちなみにクロウフォード陛下だけは、音を変えている、某有名SF 映画の、悪役ヒーローのテーマ曲だ。
一応、王陛下に許可をとる。
周りは不敬だとイロイロ言っていたが、一番偉い人の許可が出たので、遠慮なく電話に出た。
そこからはちょっと情けなくなってしまったが、仕方ない。
「クロウ様、済みません!!僕また魔王を倒してほしいと、召喚されたんですけど、呼ばれた国名は、アーシェス王国と言ってましたが、クロウ様知ってますか?」
『ハヤト、召喚って、マジか?珍しい奴だな、お前は、まず、その国名は俺の世界には無いから、別の異世界だな、流石に俺でも』
えっ?!クロウフォード陛下でも無理と思った僕は、じわりと目に涙が溜まり、思わず涙声で捲し立ててしまう。
「ええ!?そんな!?僕帰れないんですか!?」
ぐずぐずと涙声になった僕に、クロウフォード陛下が慌てた声で話された。
『ああ、すまん、冗談だ、悪かった、直ぐに行ってやるから泣くな』
と話されると同時に、僕の前に魔法陣が浮かぶ。
そして僕の肩にポンと手が置かれ。
「ちょっと悪ふざけしただけだ、悪かったな」
クロウフォード陛下が、僕の目の前に立っていた。
「うう、クロウ様~良かったです~」
安心したら力が抜けて座り込んでしまった僕。
そんな僕を困った表情をして見てから、暫くそっとしておこうと思われたのだろう、クロウフォード陛下が回りを見ていらっしゃる。
突然現れたクロウフォード陛下に、周りの人達はポカーンとしたままで、あっ王陛下の隣に立ってるのは王女様かな、クロウフォード陛下を見て頬を赤らめてる、あっ巫女ポイ人も、そんな事を思っていたら、どこからか声が聞こえた。
「クー君!!」
クー君?誰の事だ思っていると、クロウフォード陛下に近寄る二十代後半位の青銀の髪の男性、陛下のお友達なんだろうか?
その男性を見たクロウフォード陛下は、嫌な者を見たという表情をして、その男性に話し掛けた。
「オヤジ、こんな所に居たのか、どうせ暢気に歩いていたか飛んでいて、次元の狭間にでも落ちたんだろうとは思ってはいたが、母上だけは心配していたが」
「えっ!酷い!クー君はパパの事心配してくれないのかい」
えっ?この人がクロウフォード陛下のお父さんなの?陛下より少し年上なだけに見えるし、性格も全然似てそうにない!
「どうせ死にはしないだろう、もう少ししたら、母上が可哀想だから、面倒臭いが、そろそろ探しには行こうとは思っていたが」
そう言った陛下が、何とも奇妙な顔をしてから、がっくりと何故か落ち込んで、小さな声で「俺はオヤジの子だ」と呟いてらした。
お父さんは、陛下の落ち込みに気が付かずに嬉しそうに話される。
「ああ、何はともあれ私は嬉しいよ!クー君に会えて、じゃなきゃ、この勇者君に付いて行って、他の国を巡り、帰還魔法探しに行こうと思っていたんだよ」
そこで、アーシェス王国の偉い人だろう人が、クロウフォード陛下のお父さんに声を掛けた。
「ガル魔導師長、急に現れたそのエルフはいったい?貴方は知っているのですか?」
ああこの世界にもエルフって居るんだと、どうでもいいことを思う僕。
「ああ、この子は、私の息子のクー君ですよ、では、私達は元の世界に帰りますのでお構い無く、今までお世話になりました」
明るく嬉しそうに、満面の笑みで言うクロウフォード陛下のお父さん。
いや、それでサヨナラは無理じゃ無いかと僕は思うのだけど。
僕の思った通り、周りの雰囲気は、逃がさない空気でいっばいだ、しかも、いつの間にか数十人の騎士に囲まれている。
でも多分無理ですよ、このお二人を止めるのは、お父さんは知らないけど、クロウフォード陛下を止めるなんて、きっと無理ですよと僕は思う。
そんな周りの雰囲気を気にせず、クロウフォード陛下が、お父さんに問いかけた。
「オヤジはこの国では、どんな立場なんだ?結構な立場なんじゃないか?それに、この包囲はなんだ?」
「いやー、私が帰る為に、帰還魔法を発明しようとしたら、ほら、先ずは生活をしていかないと思ってね、そしたら生活費いるじゃないか、で、幸いなのか、私の魔法は、結構上位魔法だったようで、それなら、国の機関である魔法省に入れるんじゃないかと思って、入省したら国のお金で研究出来るし、生活費も手に入ると思ってね、それでみごと入省しちゃて、ちょっと頑張ったらなんか魔法省のトップになっちゃってね♪テヘ」
頭の後ろに手をやり、頑張った事を照れたように言うお父さん、いや、誉められないと思いますよと僕は思った。
お父さんのその言葉に、クロウフォード陛下は残念な子を見るように、お父さんを見ていたそして一言。
「いい年した大人がテヘとか言ってんじゃねぇ」
まったくと、腕を組んで呆れていた。
そして、クロウフォード陛下は、お父さんを冷めた目で見下ろしながら再度話し掛ける。
「で、この世界は本当に魔王に蹂躙されているのか?」
「いやー、どうなんだろうね?私は見てはないんだよ」
あははっと笑うお父さん。
クロウフォード陛下は言葉使いは悪いが、結構真面目で思慮深い方なのに、お父さんは軽い感じで余り深く考えないようで、空気も読めてないし、陛下の方が保護者に見える。
お父さんの言葉を聞いたクロウフォード陛下は、うむと何か納得したようで。
「そうか、なら帰るか」と仰った。
そう言うと僕の肩に手を置き、お父さんの腕を掴んで魔法を発動した。
そして手を放して、僕に話すクロウフォード陛下。
「擬態魔法をかけた、周りには俺達は見えてないし、声も聞こえてないから安心しろ、それでハヤト召喚魔法陣はどこだ?」
周りは消えた、どこ行ったと騒いでいるが、お二人は何処吹く風の状態。
「クー君、召喚魔法書も没収かい?」
「いや、ここは俺が居る世界ではないからな、あまり干渉するのは良くないだろ、だが、どこかの馬鹿がまた次元の狭間に落ちて、ここに来た時に帰れるように、魔法陣を改変して、帰還も出来る様にする、但し、どこかの馬鹿レベルの魔法を扱う者でないと解らないだろうがな」
それを聞いたクロウフォード陛下のお父さんは、両手を祈る様に合わせ、キラキラした目を陛下に向け言った。
「クー君は優しいね、まだ見ぬ誰かの為にしてあげるなんて、流石私の子だ」
そして、両手を広げて、クロウフォード陛下に抱きつこうとしたが、陛下はスルリとかわされた。
うん、優しいですけど、どこかの馬鹿はお父さんの事ですよと僕は思ったが、当の言われた本人は気が付いて無いようで、陛下にかわされて、躓きこけたお父さんは、「クー君は照れ屋さんなんだから」と呟きながら立ち上がり、誇らしげにうんうん頷いていらした。
僕は、もうお父さんの事は気にしない事にしてクロウフォード陛下に言った。
「それなら、案内出来ます、此方です」
僕は、クロウフォード陛下を召喚魔法陣の間に案内した。
☆☆☆☆☆
クロウフォード陛下は、召喚魔法陣を改変した、僕には何処が変わったか全く解らないけど。
お父さんは解ったようで。
「流石クー君、では、私はこれでフロレアの元に帰るよ」
颯爽と魔法陣を発動させて帰って行ったお父さん。
「いいんですか?クロウ様?」
「ああ、いいんだ、全くあのオヤジは」
「しかし、良かったんでしょうか?僕は、このまま帰っても」
「ああ、魔王の話か、それなら大丈夫だ、大きな力を持つ邪な者は、この世界に居ないからいいんじゃないか」
「わかるんですか?」
「オヤジが、見てないと言ってただろ、そして、“どうなんだろうね?”と言っていた、それは、オヤジは大きな邪な力を感じ無かったからだ、と言うことは、魔王と呼ばれるものは、むやみに蹂躙したりはしていない、あれでも神龍だからな、大きな邪な気や邪悪な気には敏感なんだ」
えっ?!神龍に全然見えないと思っていたら、クロウフォード陛下が苦笑いをされていた。
「まったくな、あれで神龍とは笑えるだろ、では、ハヤトを元の世界に送ろうか」
「あっでも、僕が帰ったら、再度誰かが召喚されるのでは?」
「いや、この魔方陣では、当分は召喚出来まい、かなりの魔力が必要だからな」
「そうなんですね、良かったです、もし、僕の代わりに誰か呼ばれたら、なんか悪いなって思って」
あっそうだと、僕は改めてクロウフォード陛下にお礼を言った。
「クロウフォード陛下、僕の為に来ていただきありがとうございます、あとスマホをカスタマイズして頂いてて、本当に良かったですよ、僕これからもこのスマホは、絶対身に付けて離しませんよ」
「ああ、そうだな」
クロウフォード陛下は、苦笑されていた。
そして、僕の再召喚の物語は直ぐに終わった。
そして異世界ってわりと身近に在るんだなと改めて思ったし、クロウフォード陛下と知り合えて、仲良くしてもらえて本当に良かったと心から思った。
クロウフォード陛下のお父さんも、奥さんのフロレアさんのみ心配する。
クロウフォード陛下の心配も、リズエリーテのみが心配する。
他の皆さんは大丈夫✖️2と思われている。
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