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王様 ダリア王国にこっそり進入する

2017年7月21日お差え→お支え修正


 リズエリーテに話すと、案の定付いて行くと言われた。


 俺は、連れて行きたくはないが、リズエリーテが何やら決意をもった目で俺を見るので、無下に出来ないし、嫌われるのは嫌だ。


 物理的な物からは守りきれる自信があるが、言葉の暴力からは、守ってやれない。

 もうリズエリーテに傷付いて欲しくはない。

 その、俺の葛藤を知っているのかリズエリーテが、綺麗な笑顔を俺に向けた。


「大丈夫ですクロウ様、わたくしは、あの国の方にどんな事を言われようとも傷つく事はありません、ただ、わたくしが思った事を告げるだけです、ですが会えばの話ですし、クロウ様は、なるべく避けて行動されるのでしょう」


「まあ、そうだが、強制力が発動したら、会ってしまうかもしれん」


「強制力?」


 リズエリーテが首を傾げた。


「いや、気にしないでくれ、では、まずは人が居なさそうな、召喚魔法陣を頂きに行こうか、俺達に擬態魔法と飛行魔法を掛けてから、転移するぞ、マリオ」


「はい、失礼します陛下」


 マリオが俺の肩に手を置く、リズエリーテはいつものように手を繋ぐ。


 魔法を掛けて転移魔法で、ダリア王国の王城上空へ転移した。


 *****



 ダリア王城の上空で、俺達三人は浮かんでいる。


「怖くはないか?リズ」

「はい、空に浮いてるのですが、地に足が着いてる感じで安定してるので、大丈夫です」


 良かったと俺はリズエリーテに微笑み、やるべき事をする。


「さて、召喚の塔は、何処だ?」

 俺は目を閉じてハヤトの記憶を思い出し、魔法陣の魔法の残思を探す。



 暫くして場所がわかり目を開け、魔法書の在りかも確認、後は召喚魔法の記憶を持つ者、行った者だが、チラリとマリオを見ると、マリオは心得たとばかりに頷き地上へと下り立ち、ゲート魔法で移動した。

 記憶や心の事ならマリオに、任せれば間違い無いだろう、奴は悪魔だからな、心の隙間や記憶を探るのは得意だからな。


「リズ、先ずは召喚魔法陣を頂きに行こう」

 そう言って転移した。


 *****


 そこは真っ白な部屋だった。

 床に魔法陣が刻まれている。

 俺はリズエリーテの手を離し、魔法陣の側にしゃがみこみ手を着く。

 ほう、これか壊してもいいんだがな、だが他の何処かでハヤトのような者が、出てきた場合の為に、帰還魔法陣に変えてガーディス連合王国に保管するのが安全か。

 そう思い、魔法陣を石板の様に切り取り魔王城闘技場へ転移させた。


 魔法陣が無くなったので、只の床になった。


 さて、次は魔法書だなと立ち上がり、リズエリーテに手を差し出す。

「リズ、次は魔法書を回収する」

 そう言った俺の手をリズエリーテが握った。

 そして魔法書がある場所へと転移する。



 *****


 魔法書が在る所は、書庫なのか、割りと綺麗にされていて、人もちらほらいる、リズエリーテがキョロキョロと回りを見ている。


「リズ、話しても大丈夫だ、この者達には俺達の声も姿も見えないから、安心していい」


「そうなのですか?クロウの魔法はいつも凄いですね」


「そうか?所でリズは、この場所来た事あるのか?」


「はい、小さい頃お父様に付いて登城した時に、よくここに本を読みに来てました、懐かしいです」


「そうか、ここは、リズの思い出の場所なんだな、俺は魔法書を探してくるから、暫くリズは自由に見てくるといい」


「よろしいのですか?」


「ああ、少し魔法書を探すのに時間が掛かるんだ、終わったら、リズの元へ行くから、気にせず見ておいで」


「有り難うございますクロウ」

 リズエリーテは、俺にぎゅっと抱きついてから、手を振り行ってきますねと行ってしまった。


 あんな嬉しそうなリズエリーテは、初めて見る気がする。

 やはり、親との思い出には勝てないかと苦笑してしまう。


 さてと、俺も探すとするかと書庫の中央へと向かう。


 中央についた俺は、文字識別魔法を発動する。

 識別文字は[勇者・召喚]その言葉が入った書物を集める。

 更に反応した本に擬態魔法を掛ける。


 それぞれ、バラバラの場所から本が飛んでくる。


 数十冊集まった。

 宙を舞う本を俺の手の平に一列に載せ、そのまま魔王城闘技場へ転移させた。

 もう、終わってしまった。


 ゆっくりとリズエリーテを探がしても多分すぐ見つけてしまうだろうが、もうちょっとそっとしといてあげようと思い。


 ゆっくりと元の場所へと移動した所で、丁度書庫の扉が開く音がしたが、俺は気にせずリズエリーテを探す、擬態魔法が掛かっているから、俺達の姿は見えない筈だからな。

 そう思い、入って来た女をチラリと見ただけで、目の前を通り過ぎようとしたら、突然腕を捕まれた。


 ぎょっとした俺は捕まれた腕を見て、掴んでいる手の主を見る。

 手の主は女だった、その女はうるうるとした目を向け、顔を何故か赤らめていた。


「見えてるのか?」

 俺は動揺して思わず声に出していた。


「はい、やっとやっと会えました、クロウ様、お逢いしたかったです」

 そう言って女は、俺の腕に抱きついてきた。


 ぞぞっとした俺は、固まったまま目だけで、その女をチラリと見下ろす。

 なんだこの女は!痴女か!?てか何で俺の名前を・・・と思った所で、まさかビッチか!


 俺は落ち着くのに一呼吸してビッチに話しかけた。


「取り合えず、腕を離してくれないか、で、何故俺を知ってる?」


「えっ、それは私が聖女で、夢のお告げて、クロウ様が、リズさんに酷い事をしていると聞いて、その理由も私知ってます。

 元はと言えば、リズさんが、魔族の獣人をいたぶって殺してしまった事でしょう、獣人も生きてるのに酷い人てす。

 ですが同じ事をしては、クロウ様も同じになってしまいます、私の為にもう、リズさんに拷問するのは止めて下さい、私があなたの心を癒しますから」


 ビッチは、やりきって満足したように俺に微笑むが、俺の表情はひきつり、右の頬がピクピクするのがわかる。

 なんでお前の為に俺が言うことを聞かなきゃならん!!

 そもそも、リズエリーテに拷問なんてするわけもないし!!

 そして思う、こんな聖女は嫌だ!!

 しかも最後に戯言をほざいていたが、気持ち悪い、俺にはその一言しか出ない、こいつの目的が、俺だった事に、わずかにその可能性が有るとは思っていたが、まさかなと思っていた。


 だが、俺がここに来た事により、強制力とかいうのが働いた為か、ビッチが聖女というのが本当なのか、その為に俺の擬態魔法が、こいつには効かなかったのだろう。


 その証拠に他の人間は俺は見えていない様で、俺に話し掛けるビッチを見て困惑した表情をして、誰かを呼びに行った様だ。


 まあ、何も無い所に向かって喋ってる様に見えるもんな。


 俺は気を取り直し、冷たい目を向け、事実をビッチに言い放つ


「先ず、俺はリズに拷問などしていない、それに、リズは、獣人や他人種を傷付ける事は絶体にしない、自分が辛くても人種関係無く助けてしまう優しい女性だ、そんな人に俺が拷問などする理由もない、わかったか、だから俺の腕を直ぐに離せ」


 俺の冷たい表情に怯みもせず、ビッチの取って置きなのだろう笑顔を向けてくる。

 背中がゾクリとした。

 やめろ!気持ち悪いと思う俺にビッチは更に俺に止めを刺してきた。


「私には、嘘をつかなくていいんですよ、さあ、本当の事を仰って下さい」


 ちゃんと言ったはずなのに、やはりビッチは伝わらない、てか何でお前に嘘を付く必要があるんだ!それどころか尚も俺の腕にしがみ付いてくる。

 もう、勘弁してくれと俺がもう我慢の限界だと思った所で、俺の心を癒す綺麗な声がした。


「クロウ様から離れて下さいマリアンヌ様、その方は他国の王なのですよ、その様に触られるのは不敬になります」

 リズエリーテが、凛としてビッチを厳しい目で睨み付けていた。


 俺はビッチの手を力ずくで離して、リズエリーテの側へと寄り、リズエリーテを抱き締める。

 ああ、気持ち悪かった。

 リズエリーテを抱き締めると、心の平穏が戻って来るようだ、癒されるな。

 癒しを堪能する俺に、リズエリーテが俺に擬態魔法の解除をお願いしてきた。

 俺は頷く事で了承し解除をし直ぐ様リズエリーテに、守りの結界を張る。

 まあ、リズエリーテには指輪の護りがあるのだから、大丈夫なんだがな。


 リズエリーテに癒される俺を見て、ビッチが、驚いたように叫んだ。


「え!?なんで!クロウ様がその女を抱き締めるのよ!?どういう事なの!!おかしいじゃない!?

 私はクロウ様に会うために頑張ったのに!その女が、私に意地悪しないから、設定通りに周りがその女が、私を虐めているように見えるように頑張って誘導までして、闇の森まで追放までさせたのに!なんで!何処も間違ってないのに!」


「マリアンヌそれはどういう事だ!」

 ビッチの後ろから、声がした。

 俺はリズエリーテの腰に腕を回して、ビッチに向き直る。


 バカ皇太子とその仲間達の登場だ。

 バカ皇太子は、さて何に怒っているのだろうな。


 バカ皇太子が、此方に目を向け驚いた顔をしている。


「お前はリズエリーテ、まさか、生きていたのか、それに、そいつは誰だ」


 リズエリーテが前に出ようとしたが、俺は首を振り、リズエリーテの耳元へと口を寄せ、俺から離れては駄目だと小さく囁き、腰に回した腕で俺の方へ抱き寄せる。


 俺を見上げて紅くなるリズエリーテは、きゅと唇を引き締め、バカ皇太子に向き直る。


「お久しぶりでございます、ラアド皇太子殿下、わたくしは、ここに居られるクロウフォード陛下に助けて頂いたおかげで、生きております」


 バカ皇太子が、ビッチを見る。

「マリアンヌ、先程クロウ様に逢うためとか言っていたな、それにリズエリーテがマリアンヌを虐めていないとも」



 ビッチはバカ皇太子の言うことが聞こえて無いのか、下を向いて呟いてる。


「こんなのおかしい、クロウ様があの女を拷問せず、あんな風に接してるなんて、あの場所は、私の場所なのに、ダリアの攻略対象者は逆ハーレムも簡単に出来たのに、だから、次もゲーム通りになる筈なのに」


「おい、マリアンヌ説明しろ!どういう事だ!お前はあいつに逢う為とはどういう事だ!!」

 バカ皇太子が俺に指を差し、ギリギリ歯軋りしている。


 俺は、そんなバカ皇太子に向かって言ってやる。


「おい、ダリアの皇太子、お前は人を見る目が無いということだ。

 大体リズの事をちゃんと知っていれば、あの様な事をリズがする筈がないと判る筈だ。

 それにお前はこの国の王になる存在であれば、公平にきちんと調べ、真実を見抜かなければならない筈、それに、いや、俺が言うことでもないか、まあ、そんな間抜けだから、俺はリズに会えたのだから、そこは感謝するがな」


 そう言ってリズエリーテを後ろから抱き締めて、頬にキスをした。


 リズエリーテは、真っ赤になって両手で顔を隠して俯いてしまったが、可愛らしい素直な反応に俺は、ニヤリとバカ皇太子に勝ち誇った様に笑う。


 バカ皇太子は、こんなリズエリーテを見たことが無いのだろう。

 目を見開いて驚いていた。

 今更返せ言われても、絶体に渡さんがなっとフフンと見下してやる。


 そこで、怒鳴り声が発せられた。

「お前がバグなんだ!!だったらお前が消えればルートが修正されるんだ!!死になさい!!」


 そして、ビッチが魔力を集中させ、光の矢を俺達に向けて放つ、そして、レイピアを顕現させて、リズエリーテに、向かってくる。

 リズエリーテが、ビクリと怯えたのがわかった。


「大丈夫だ、俺がリズには針の先程も触れさせはしない」


 そう言うと、リズエリーテの腰に回した俺の手にそっとリズエリーテの手が添えられた。

 その事に気を良くした俺は、俄然張り切ってしまう。

 片手で光の矢を掴み消滅させ、リズエリーテに斬りかかろうとするビッチを拘束魔法で動きを止める。


「お前は勝手が過ぎたな、俺の権限によりお前の魔力を封じる事にする、おい、ダリアの皇太子、後はお前に任せるが、闇の森へ放置することは許さんからな、仮にも聖女なんだから、よくよく考えて対処しろよ」

いやー、闇の森に放置されて、もしも俺が助けたりとかしたら、絶対ゲームの続きと思ってとんでもない事を、やらかしそうだからな!


 そしてビッチを眠りの魔法で眠らした。


 そこでマリオから、念話連絡が来た。


(陛下よろしいですか?)

(マリオか、終わったのか?)

(はい、召喚実行者と魔法の記憶を持つ者の、記憶の取り出しは終わりました)

(そうか、ご苦労、先に魔王城に帰って良いぞ、こちらも、もうすぐ戻る)

(わかりました。では、先に帰還致します)


 用事も終わったし、もう帰ってもいいだろう。


「リズ、そろそろ帰ろうか、最後に、こいつらに言って置くことがあるなら、言ってやるといい」


「ラアド皇太子殿下、わたくしを処刑していただき有難うございます、わたくしはあの時に、漸く一人の個人になり、思い思われる事を知り、そして初めてわたくし個人として、心から公私共にお支えしたいと思う方に、出会うことが出来ました。

 では、もう会うことも無いでしょう、マリアンヌ様と善き国になるように皆を導いてください」


「ままて!マリアンヌの事は間違いだった!それにお前は私の事をす」

 その先は言わせんと、俺は殺気をバカ皇太子に放つ。

 俺の殺気に当てられ、ブルブル体は震えるが動けないバカ皇太子。

 そんなバカ皇太子にリズエリーテは、困ったように話す。


「ラアド皇太子殿下の事は、父に託された使命を全うする仕事仲間、共に国を守る同志といった処でしょうか、わたくしもまた、殿下の事を見ていなかったのでしょうし、知ろうとも思いませんでした」

 そして申し訳なさそうにバカ皇太子を見た。


 リズエリーテの答えに俺はすこぶる気分が上がる。

 思わずリズエリーテに微笑んで話す。


「リズ、では帰ろうか」

「はい、クロウ様帰りましょう」


 そう言ってリズエリーテは、綺麗な微笑みを俺に向け、そして俺の手に重なるリズエリーテの手、そして俺は転移魔法で魔王城へと転移した。


長らくお付き合いありがとうございます、

次で終わります。


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