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王様 時間を守りましょう

 

 そして、地面から少し上の空間に先程までなかった、黒い裂目が現れた、その中から少女が姿を現した。

 その後ろには、金髪の眼鏡をかけた俺に冷たい目を向けた青年、その頭には捻れた角が生えていた。


 可愛らしい微笑みを讃えながらその少女は、俺に声を掛けた。


「クロウ様、これはどういう事でございますか?」


 柔らかく俺に話しかけたその人を見て、焦って声が上擦ってしまう。


「リズ!なんでここに!?」


「戦われていたのですか?」


「いや、違うんだリズ、たまたま、ここの視察にきたら、こいつらが居てだな、こいつらに隷属魔法掛けられてるのを見てだな、事情を聞いていた」

 わたわたと、言い訳をする、そしてリズの後ろにいるマリオをギロリと睨み付けた。


「マリオ、なんでリズをここに連れてきた!」


「夕方になっても帰って来られないクロウフォード陛下を、ご心配されていたので、黙っておくことが出来ませんでした」


 そこで、キラリと、眼鏡が光り無言の圧が「必ず帰って来てくださいと言いましたよね」と目で言っていると感じた。

 ぐぬぬと睨み付けるが、マリオ涼しい顔して気にもしてないのがわかる。


 まあ、確かに俺が悪いのはわかるが、それにしても、もうちょっと上司を庇うとか、誤魔化して助けるとか、そう!連絡してくれればいいだろうが!俺が時間感覚に疎いの知ってるだろうが!っと思うが言えない。


 勇者一行は、空間から現れた二人にビックリしたまま、リズと呼ばれる女性への態度と、マリオと呼ばれる男に向けた俺の態度の違いに、勇者達はぽかんとするばかり。


 そんな勇者達に向き直ったリズエリーテが丁寧に一礼する。


「申し遅れました、わたくしはリズエリーテと申します、お見知りおき下さい」


 勇者達も、思わずリズエリーテに一礼した。

 そこで勇者の仲間達の一人が呟いた。


「レッドフォード侯爵令嬢リズエリーテ様?」


「?わたくしの事をご存知なのですか?」


「ええ、貴女様が魔王に拷問されていると言われ、我々が送り込まれたのですが・・・」

 そう聞いたリズエリーテがポカンとした顔した。


「どうして、その様な話に・・・?」

 俺は、あちゃっと頭を押さえた。


「リズ気にするな」


 そう言った俺に、リズエリーテは俺へと向き直り、少し悲しそうな表情をして言った。


「クロウ様、わたくしが原因ですか?」


 そう言ってリズエリーテは、少し震えて両手を胸の前で組んで見上げ、悲しそうに俺を見た。


 慌てて俺は、リズエリーテを抱き寄せて言う。


「違う、リズのせいじゃない、だから、そんな悲しそうな顔をしないでくれ」


 優しくリズエリーテを抱き締め、震える背中を優しく撫でた。


「ダリア王国へは、リズは戻さないし、渡さないから安心してくれ」


「でも、それでクロウ様が戦う事になるのでしたら、わたくしは戻ります」


「リズ、それは俺が弱いと思って言ってくれてるのなら、凄い落ち込むんだが」


 リズエリーテは、首を振って違いますと言った。


「俺が人を傷付けるのが、嫌なのか?」


「わたくしの為に、クロウ様が手を汚されるのは嫌なのです」


「大丈夫だ、誰も傷付けない、心配しなくていい、一旦王城へ戻ろう」

 そして、抱き締めてた手をリズエリーテの背から放し手を繋ぎ直し、勇者一行に向き直った俺。


「おまえら、取り合えず王城へ移動するぞ、と、その前に、隷属魔法を解除しとくぞ」

 と言って勇者一行に向け、繋いで無い方の手を一振りした。


「マリオ、こいつらを連れていくが、いいか?」


 一応マリオに声を掛けた、奴は眼鏡をクイっと押し上げた。


「王城へ招くのは困ります、一旦城下の家に来ていただきましょう、ですので、クロウフォード陛下、地下の転移扉を繋いで下さい」


「お前でも「繋いで頂けますよね」」

 にこりと冷笑で微笑まれ、内心こいつはと思いながらも、気にしない風に了承した。


「わかった、では行くぞ、着いてこい」


 俺は、リズの手を引いて先頭を歩き、その後ろを勇者一行、最後にマリオが続いた。


 そして、地下の転移扉に着いた俺達。

 俺は、扉の取っ手に手をかけ開く。


 開いた先は、普通の家、先にマリオが入り、その後にキョロキョロしながら勇者一行、最後に俺達が通った。


 俺は勇者一行に向かって話しだした。


「取り合えず、今日の晩はここに止まってくれ、明日、今後の事を話そう、食事は適当にそこの食糧庫に在るものを使っていいぞ、あと、今日は、外には出れないからな、俺の方からは以上だ、あとはマリオに聞いてくれ、では、また明日な」


 俺はリズエリーテを連れて、転移魔法で王城の自室へ移動した。



 *****


 自室へと転移した俺達、リズエリーテが黙ったまま顔を俯かせていた。

 そんなリズエリーテの頭を優しく撫でながら、ソファへと座るように導き、座って話しかけた。


「リズ、あの者達の事が気になるのか?大丈夫だ、悪い様にはしない、そして、俺はダリア王国へ、報復に行ったりもしないから、安心してくれ」


「確かにあの方達の事は気になります。わたくしが原因で、闇の森へ送られたのです、偶々あの方達が強かったのか、運良く魔王城までたどり着いたから良かったものの、だけど、クロウの事を魔王として殺そうと・・・、わたくしは、生きてて」


 リズエリーテが話終わる前に、俺はぎゅっと抱き締めて最後の言葉を遮った。


「リズ、今回の事は、リズじゃなかった別の人物でも、起こっていたことだ、それは一人の人物の身勝手な思い込みによる事だ、だから、あいつらがリズのせいで巻き込まれた訳ではない、それに、リズは、あの時から俺と共に生きてくれると言ってくれただろう、だから、自分を否定するような事は言わないでくれ」


 俺はそう言って優しく背を撫でた。

 リズエリーテはそっと俺の背に手を回し抱きついた。


「クロウ、ありがとうございます」


 そう言って俺の胸に顔を埋めた。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 私に後を丸投げされ、転移魔法で消えたクロウフォード陛下達に、勇者一行は、ビックリしたまま固まっております。

 まあ、そうでしょうねぇ、術者本人だけの転移魔法も驚きですが、リズエリーテ様を連れての転移ですからね、私は転移魔法使えませんから。


 私は、勇者一行を、観察しながら、声を掛けリビングの椅子に座るように促しました。

 私の声に漸く、現実に戻ってきた勇者一行のろのろと座りました。


 そして、先程の魔法と、転移扉を思い出し、私の姿を見て戦々恐々としているようです、そんなに私の姿が怖そうなのでしょうか?陛下より紳士な見た目と応対だと思うのですが。


 私は、自ら紅茶を入れ勇者一行にも振る舞い、席について優雅に紅茶を飲み勇者一行の様子を観察します。



 勇者一行が、それぞれ紅茶に口を付け飲んで一息ついた所で、にこりと優しく微笑み、さてとと話すことにしました。


「では、まず自己紹介ですね、私は、このガーディス連合王国の宰相をしております、マリオと申します。先程貴殿方と戦われていたのは、この国の王である、クロウフォード陛下です」


 そこで、一息ついて微笑みながら勇者一行を見渡し再び話します。

 何故か皆さんビクついてます。


「今晩は貴方達は、この家からは出ないで下さいね、出ない方が貴方達の為ですよ、2階が寝室となっておりますのでお好きに使って下さい、お風呂は1階の奥ですね、台所はそこです。では、勇者以外の方々はご自由にどうぞ、明日の朝今後について話しましょう。勇者様は少し話をお聞きしたいので残って下さい」


 勇者様以外の皆はほっとした様子で、それぞれリビングから出て行った。


 勇者様はビクビクしていた。


「なぜ僕だけ・・・」


「そんなに怖がらなくて宜しいですよ、私なぞ、陛下よりも弱いですから、なに、ちょっとお聞きしたいだけですよ」


「何を聞きたいのですか?」


「ええ、貴方は乙女ゲームと言う言葉わかりますか?」


「ええまあ、意味はわかりますが」

 訝しげに私を見る勇者様。


 ふむと顎に手を置き、暫し目を閉じ思考します。

 考えが纏まったので、目を開け話します。


「そうですか、貴方運がいいですよ、恐らく陛下は貴方の世界に行ってますので、簡単に帰れますよ」


 私の言葉に、勇者様は、目を見開いて驚いています。


「えっ!?本当ですか!?でも、通常召喚された勇者は、簡単には帰れないのがテッパンのはずですが」


 私は、テッパンと言う言葉に疑問を持ったが、受け流しました。


「まあ、陛下は規格外の方ですからね、異世界渡りなんて出来るのは、歴代の王でも陛下を入れて3人と聞いてます、その点でもあなた運がいいですね」

 淡々と表情を変えずに話します。


 ポカーンとした勇者様、少しして立ち直り、呟いています。


「そんな、よくあるラノベの何でもあり設定でもぶっ飛んでないか?」と、「でもと本当なら帰れる」と嬉しそうにしてられます。


 そして、私に爽やかな笑顔を、向けました。


「明日、魔王じゃないか、陛下にお話をさせて頂けるように、お願い致します」

 勇者様は、立ち上がり私に頭を下げられました。


「そんな、頭を上げて下さい、まあ、陛下に直接話して頂かないと、本当にあなたの世界か断言出来ませんから、場は設けるつもりですよ」

 そう言う私に、勇者様は再度お礼を言われました。


 さて帰りますかと私は立ち上がり、勇者様に言います。


「では、今日はお疲れでしょうから、これで失礼しますね、明日朝には世話する者を寄越しますので、それまで寛いで下さい」

 ではと、私は魔法を発動しました。


「ゲート」黒い裂目が表れ私は入り、自室へと戻りました。




 その後残された勇者ハヤトは。

 目の前で起こった魔法に呆然として呟いた。


「ダリア王国の人達、こんな凄い魔法を使う人達に喧嘩売って大丈夫なのか?あの人達、転移魔法も、ゲート魔法も使えなかったぞ、僕も使えないけど...」


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