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王様 魔王を演じる

 

 ここは闘技場の様に見えるが、魔王城の王の間と言われる場所だ、そこで相対しているのは、勇者一行と玉座に座る(魔王)である。


 勇者一行の一人が前に出て、ビシっと俺に指を差し話し出す。

 おお、なんか勇者ぽいな、大人しく聞くことにする。


「魔王!僕は勇者のハヤトだ!か弱い女性に酷い事をしてるな!その女性を助ける為に僕達はやって来た!!」


自ら勇者って言ってるぞ!

居るんだな、そんな恥ずかしい台詞言える奴。

そして、俺は見事に魔王認定かと、物凄く嫌な顔をした。しかも設定はビッチの言った通りかと溜め息を吐いた、さてどうするかと、ざっと一行を見る。


 これは、闘技場へ降りないとだめか?と思いゆっくりと立ち上がった。


 俺が立ち上がった事に、後退り勇者以外武器に手を掛ける勇者一行。

 俺にビビり過ぎじゃないか、これで俺が降りたらどうなるんだ?

 ちょっと面白くなりワクワクしてきた。

 闘技場に降りるために、無駄に龍の黒い翼を出して飛んでバサッと舞い降りた。

 いや、普通に飛び降りてもよかったんだが、魔王ぽく演出だ。

 実は俺は、エルフと神龍のハーフだ、普段はエルフの姿で、龍の姿にも変化出来るが、めったに龍化はしない、一部龍化することが出来、今回は翼のみを出した。



 そして、出来るだけ偉そうにして勇者一行の前に降り立った。


 そして勇者ハヤトが一人、俺の前に出て、王の間中央で向かい合った。


「勇者ハヤトだけでよいのか?」

「僕だけで充分だ!」


 こいつ偉い自信満々だな。

 多分、異世界召喚で俺最強とか思ってるんだろうな。

 これで話をと言っても聞かんだろうし、取り合えず叩き潰せば、話を大人しく聞くだろうと、俺の刀に手を掛ける。


 今まさに互いの得物に手を掛けてのにらみ合いの一騎討ちが始まる。



 勇者と俺は同時に動き互いの武器で受け止めた。

 キィンと剣と刀がぶつかり、膠着する。


 互いに力を入れたまま、俺は勇者に話しかけた。


「なぁ、お前は何で来たんだ?」


「さっきも言ったろ、僕は君に拷問されている女性を助けて、国を守る為に戦っている」


「それ、お前は証拠でも見たのか?国を守るってダリア王国か?お前には関係ないのに?」


 ふっと思わず笑いが漏れる。


「何が可笑しい、人を蹂躙し、虐げるお前達にはわかるまい」


 勇者ハヤトが力強く俺を睨み付ける。

 俺は失礼なと思い、不機嫌に言った。


「お前は我らが侵略したのを見たのか?それが本当か確認したのか?」


「見なくとも、確認せずともわかる!貴様らが悪だということは!」


「お前・・・バカだな」


 ふうと呆れた俺は、溜め息を吐いて、先程までと雰囲気をガラリとかえた。

 俺の解放した魔力に勇者は飲まれそうになり、歯をくいしばっている。

 俺は刀を押しやり後方へ跳びながら、魔法で氷の矢の雨を勇者ハヤトへと放つ。


 勇者はそれを剣で払っていくが、全て払い除けれず、頬や足に微かに傷がつく。

 そして地面をひと蹴りして、猛スビードで俺へと斬り掛かってきた。

  俺はその剣を刀で払い上げ、片手で刀を持ち、もう片手に魔法で空気の塊を発生させ、勇者の腹へと打ち込んだ。


 勇者は、それを身体強化で受け止めたが、げほっと唸り後ろに跳んで僅かにダメージを受け流す。


 その時には俺は勇者の上空に跳んで、新たな魔法を発動させる。

 手のひらの上に、黒い球がどんどん大きくなっていく。

 そして勇者の方を見て、くくくと笑ってしまう。


「お前なら、これに耐えられるだろ?俺を失望させてくれるなよ」


 そう言ってその黒い塊を勇者ハヤトに向かって放った。


 避ける時間がないと悟った勇者ハヤトは、剣を振るった。

 剣から、風の刀が無数に発生しその黒い塊に向かったが、押し潰されるように消えてしまった。

 勇者ハヤトは、まさかと一瞬驚いたようで、くっと歯をくいしばり次の手を考えてるようだ。


 これは直に切って消滅させるしかないと思ったのか勇者は、剣を構える。

 恐らく何らかのスキルでも発動するのだろう。

 勇者が、剣を降り下ろす、剣から光の刃が、放たれる、しかし黒い球を滅する事が出来ず、黒い塊を受け止める形となった勇者は、顔を歪める。

 どんどん剣が重くなっていくからだ。

 そう、この球は重力球だ、触れたものをドンドン重くしていくだけだ。

 そして、勇者は身体強化を施し剣を、力の限り振り抜いた。

 それにより、重力球は俺へと豪速球で向かっていく。

 うん、なかなかだな。


 それを俺は、避けることなく、片手で受け止め握り潰し消滅させた。

 唖然とする勇者、何であんなに驚くんだと思いながら、自分で発動した魔法ぐらい制御出来るだろう普通に。


 そして、勇者が跳んで来ないので、仕方なしに地上へと降下した。


 勇者は、気を取り直して俺に向かって焔の槍を何発も発動したが、俺は刀で難なく切り払っていく。

 いや、当たっても全然ダメージ受けないけどな、それをしたら勇者が凹むと不味いだろ。


 地上に降り立った時に、勇者が俺へと向かって来て、剣を振り下ろす。


 キィンと武器がぶつかる。

 勇者ハヤトが小さく魔法を呟いた。


 合わせた互いの武器の回りが揺らめく。


 その揺らめきは刀の方が大きくなったが、すぐにそれが移動するように剣へとそして、勇者へと移動した。


 俺は面白いとちょっと笑う。


「ほお、魔力吸収か?大分持っていかれたか」

 本当は、ほんの少しだかな。


 勇者ハヤトが、剣を払い距離をとる。


「次で終わりにするよ、さあ、これで終わりだ!」


 地面を蹴って、俺へと向かう勇者ハヤト、そして、互いの武器が再度交わり、再度勇者が小さく魔法を唱えた。

 そして、俺達は光に包まれた。




 そして、光が収まるのを見計らった様に、何故か勇者の仲間である剣士、魔術師、狩人、召喚師が、俺達に向けて各々最大級であろうと思う攻撃を放った。


 俺達の回りを、凄まじい爆炎が上がり土煙が舞った、そして勇者の仲間は、何故かほっとしたように呟いたのが聞こえた。

 俺は遠視魔法で勇者一行の様子を見てみる。


「やったぞ、魔王を倒した、これで俺達は自由だ」

 勇者の仲間達がそう言って互いを見合って涙ぐむ。

 おいおい、なんか俺を倒して喜んでると言う感じじゃないな。

 大体あんな魔法で俺を殺せると思われたのが、腹立つ。



 そして少したった頃、土煙が薄くなったので遠視魔法を、解いて俺は奴等に話しかけた。


「アア、誰を倒したって、お前ら」

 自分声に違和感を感じた俺。

 まあ、いいかと、取りあえず土煙を風魔法で払うことにした。

 ふわりと土煙が風に流され晴れた。


 勇者の仲間達は、呆然とし俺を見て叫んだ。


「なんで?!死んでない!!勇者のあの魔法が発動したら、勇者と入れ替わった魔王なら、俺達の一斉攻撃で倒せると言われたのに!」


 奴等の言葉にちょっとカチンと切れた俺はドスを利かし話した。


「はぁ、お前ら、なめてんのか、あんなちんけな魔法で、俺が殺せると?」


 結構ドスを効かせて、話したつもりなのだが、いつもより迫力に欠けるなぁと思いながら、さっきこいつらなんか変なこと言ってなかったか?と思ったら、後ろから聞いた事がある声が聞こえた。


「なんで?!僕が目の前にいるんだー!!」


 その声に、俺は振り向いた。

 そして、目をパチパチ瞬きをして、頭を傾げた。


「うん?おかしいな」


 目を擦る。

 さあ、もう一度と目を開いて見る。


「おかしいな、俺がいる?いや、鏡か?そんなわけないよな、そういえは・・・」


 俺の言葉の最後の一言を無視して納得したように、俺の姿をした者が手を打った。


「そうか!鏡か?いや違う、さっき後ろ姿だだったし、喋ってるし、じゃ、やはり僕が二人」


 ああそうかと、面白事してくれたな。

 納得したように頭を掻きながら俺の体に向かって言った。


「いや、違うぞ、ほれ」


 俺は魔法を唱えた。


「ミラー」


 俺の体の前に大きな姿見が表れた。

 俺の体の人物が、自分の顔を手でペタペタ触り、耳を触って固まった。


 俺はポリポリと頬をかいて、そいつにに言った。


「今の俺、魔王が勇者で、勇者ハヤトのお前が俺、魔王になってんだな、てか、お前が発動した魔法だろうが、なんでおまえ以外の奴のがしってるんだよ!」


 そう言って、勇者の仲間へと俺は睨みながら振り向いた。

 すごく目付きの悪るくなった勇者の俺に睨まれた勇者の仲間達は、びびって一斉に土下座をした。


「すみません!!僕達はこうするしかなかったんです!勇者様も!!謝って済むことではないけど、ごめんなさい!」


 それを見た俺は、頭をを掻きながら言った。


「まあ、大体想像つくが、とりあえず腹減ったから昼飯でも食べながら、お前達がここに来るまでの経緯をざっと教えてくれるか?」


 そう言いながら勇者な俺は、アイテムボックスから食糧を出し、勇者一行にも分け与えた。


 思わぬ勇者の俺の言葉と行動に、伺うように顔を上げた魔法使いが、懺悔のように話し出した。



 *********


 魔術師の話を聞いた俺は、なんとも言えない顔をして言った。


「ああ成る程な、それにしても相変わらずダリア王国は酷いな、それで監視目的か」



 魔法使いが恐る恐る顔を上げて、勇者の俺におずおずと聞いた。


「監視目的とは?」


「ああ、お前達がこの闇の森に入ってから、遠視の魔法でお前達を見てる奴がいてな」


「そうだったんですか、じゃこの今の状況も知られてるんですね」


 力なく頭を垂れる魔法使い。

 勇者の俺は、にやりと笑い得意げに言った。


「いや、奴等が見てるのは俺が見せてる擬装映像だ、だから、まだお前らは森の中を進んでて、たまに、魔獣と戦ってるのを見てるだけだ」


 勇者の俺は腕を組んでうんうん偉そうに頷く。


 そんな馬鹿なとびっくり顔の勇者の仲間達、代表して、魔法使いが言った。


「それは、無理でしょう、僕達の監視ならば、ダリア王国一と言われる大魔道師が視てるはず、それを、擬装映像を見せて騙すなんて出来るはずがありません」


 勇者の俺がふふんと鼻で笑う。


「たかだか一王国の一番だろ、俺の結界の中を視れて、擬装映像を見破るには、そうだな、世界を冠とする特別なスキルじゃなきゃ無理だな、まあ、信じられないか、いいけどよ、あとよ、その腕の隷属魔法も国一のその魔道師が掛けたんだよな」


 魔術師が、びっくり顔をし、すぐに泣きそうな顔をする。


「これを視ることが出来るのですか!先程話しましたが、大魔道師殿の魔法で隠蔽されてますので、信じては頂けないかと思ったのですが」


 勇者の俺はがっくりとうなだれた。

 俺は人族の大魔道師よりも劣ると思われているのかと、ひとしきり落ち込んで、一つ頭を振って気をとりなおり、まあいいかと勇者一行に問いかけた。


「で、奪われたのはお前らの自由と家族か」


 勇者の仲間達は、悔しそうに手を握り締め拳を震わせている。


「はい」


「お前らの状況は判った、で、次は、お前だな」



 勇者の俺は、茫然自失の俺の体の勇者に向き直り、自分の首に指差し言った。

 勿論隠蔽されていたので、見えるようにして。


「なあ、お前も、ここに隷属魔法掛けられてるのをしってたのか?」


「えっ?そんな何で・・・」


 非常に困惑した表情で、俺の体の勇者は動揺した。

 これは少しほっといた方がいいなと判断した勇者の俺は取りあえずと、再度勇者の仲間達に声を掛けた。


「お前らはどうしたい?」


 勇者の仲間達は互いを見合せた。


「僕達が死ねば家族は助かるかもしれません」


「何でそうなる?もっと思うことあるだろう、ないのか?」


「死にたくなんかありませんよ、生きて帰って家族と普通の生活がしたいに決まってます!でも、このまま帰ってもまた利用される・・・、そして、家族もずっと命を狙われ続けてしまいます。なら、僕達が死ねば家族だけでも自由になるかもしれない!」


 ぎゅっと唇をかみして勇者の仲間達が言う。


 勇者の体の俺は、呆れたようにふふんと笑った。


「ダリア王国の王は、民を何だと思ってるんだ、いや、今回はバカ皇太子か、まったく、あとな、俺は魔王じゃねぇぞ!俺はガーディス連合王国の王だ、民を守るのは王たる俺の役目だ、俺はこの国の民を守らなけらばならない、その国にお前達は侵略するのに足を踏み入れた、そこでだ、選択肢を二つやる」


 勇者の俺が二つ指を立て話す。


「このままここに残る事が一つ、もう一つは、俺の国から出て行く事だ」


 勇者の仲間達は、驚きに目を見開く、そして、声を震わし俺へと話しかけた。


「こんな事をした僕達を、助けてくれるのですか」


 勇者の俺は、ふんと顔を背けながら言った。


「俺は助けるとは言ってないぞ、出て行くのか行かないのかと言ったまでだ」


 勇者の俺は顔をしかめながら言った。

 魔法使いは顔を横に振り言った。


「いえ、貴方は国の王としての在り方を示された。僕はそれを信じます。

 そして感謝します、王、僕達は貴方に誠心誠意尽くします、貴方の民にして下さい」


「ここに残るんだな、じゃ今日からお前達はこの国の民だ。だが、もう一人の許可がいる。そいつが....、まあ、大丈夫だろう」


 勇者の俺は、俺の体の勇者のに向き直る。


「おい、勇者よ、お前はどうしたいんだ?」


「僕は・・・帰りたいんだ、もと居た場所に・・、君を倒したらあの人達は帰れると、でも、あの方達は始めから僕の事は、どうでもよかったんですね、それに・・・」


 がっくりと崩れ落ちorzの形に頭を垂れる俺の体を見て、俺は、カッコ悪い自分の姿を晒したくないと思い言った。


「とりあえず、このままじゃやりづらいから、元に戻すぞ」


 と俺の体に肩に手を置いて、目を閉じた。


 すると、一瞬光が二人を包んで収まった。


「よし、戻ったな、やっぱ自分の体が、一番しっくりくるな」


 素早く立ち上がり、うーんと俺は背伸びし、腕を組んで真面目な表情で勇者ハヤトを見た。


 勇者ハヤトは、まじまじと、自分の体を見て、俺を見た。


「簡単に戻るなんて、君、本当に凄いんだね」


「まあな、で、入れ替わってた間お前の記憶を見ちったのだが、異世界からの召喚で、この地に来たのか?」


「そうだよ、気がついたら城の魔方陣の中にいた、そして、その場に大魔道師様が居て、人族の危機を救って欲しいと請われて、そのまま鵜呑みにして、あとはご覧の通りだよ」


 勇者ハヤトの話を聞いた俺は、魔法の気配を感じる。

 しかも、今ここに来てほしくない人物の魔力を感じ辺りをキョロキョロビクビク見渡した。


 そんな俺を不思議に思った勇者ハヤトは俺に声を掛けようとしたが、その前に綺麗な女の人の声が響いた。


「クロウ様」

 そこには長いさらさらの黒髪に藍色の瞳の美少女が立っていた。

ちゃんと戦いになってますかね、

戦いを文章に表現するのは難しい。


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