2.
普通はここで相手をぶっ叩くべきだろう。
だけど、なぜだか私はただただ不思議に思って彼を見ていた。
そんな私を彼は少し驚きながら、だけど徐々に嬉しそうな笑みを浮かべている。
「思い出してくれた?」
「…え?」
「…そっか」
意味の分からないことを言う彼、沈黙が教室に満ちる。
「なんで、泣いてたの?」
「…一人ぼっちだから」
再度聞く彼。
素直に答えたこの時の私はきっとどうにかしていたんだろう。もしくはさっきのキスでなんか変な成分を分泌して頭がおかしくなったとか。
「なら、僕といればいいよ。そうすれば二人ぼっちだ」
「…孤独ね」
「孤独は悪いことじゃない」
そんな言葉、ひとりぼっちじゃない彼に言われたくない。
けどなぜかその言葉は気持ちがいいぐらい私の中に響いた。
「伊ヶ崎さんの涙の原因は解決した?」
「…ええ」
「嘘つき。白状すれば?」
「…実は生徒会の出し物が決まらないの」
ほんと、どうかしてる。
だけどそんな私を彼はずっと微笑みながら見てそして言った.
「僕は伊ヶ崎さんのことが好きだし二人ぼっち仲間だから、一緒に考えようよ」
――ああ、また…
今日は何回泣くつもりだろう。
私は頬を濡らすその涙なんてないような顔をしながら彼を見た。
彼はただ、私を見つめながら微笑んでいた。