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今後に向けて


 何か起こりそうな嫌な予感が見事的中してしまいました。

 ヴィルールバンヌ侯爵家とメリニャック侯爵家の謀反発覚からのお家取潰し。それに加担した貴族の一掃……からのお妃選びの白紙化!

『そろそろ決まるのか!?』なんて浮かれていたちょっと前の私をぶん殴りたい。決まるどころか振り出しに戻ったわ!

 しかもとどめの王子様の一言『お妃は貴賎を問わず広くから選定する』(意訳)って、もうほんと、嫌な予感しかしない。(再び)




 罠のようなお城招集の次の日。

 いつものように使用人として市場に出かけたら、どこから伝わったのか、町は昨日のお城での騒ぎのことで持ちきりでした。

 さすがに大スキャンダル、みんな興味津々です。

 大人たちは、

「加担していたお貴族様、結構重役もいたんだって? しばらく政治が混乱するんじゃないか?」

 と心配し、独身の女の子たち(老若問わず)は、

「王子様のお妃様、貴族じゃなくても相応しかったら庶民でもなれるんですって!」

 と色めき立ち。

 いつも以上に賑わっていました。

 そんな庶民の皆さんの会話を耳にして、昨日は思いつかなかったことに気がつきました。


 そうか、しばらくは政治が混乱するからお妃選びなんて悠長なことしてる暇ありませんよね!


 ということは………時間稼ぎできます。

 目指せ庶民化!

 王様たちが施政体制を整えている間に、私はトンズラ用意……げふげふ、失踪の準備をする。王様たちがどれくらいで体制を立て直してくるかわからないからのんびりしている暇はありません。

 これから最優先でやらなきゃいけないことってなんだろう。

「仕事はこのままコスメアドバイザーやるとして、元手はやっぱりあるに越したことないわよね。それは自分の宝飾類を持ち出すので我慢しようか。あんまり欲張って持ち出せないし」

 私の宝飾類、そうは言ってもちょいちょいリールやニームが『これかわいい、ちょうだい』って言って借りパクされたままになってたりして目減りしてるんですけどね。

 子爵家のお金はお義母様ががっちり管理してるから手が出せないし。

 まあいい、それはくれてやるっつーの!

「仕事場は今のまま、薬屋の一角を借りるので大丈夫でしょ。あとは……家か!」

 そうでした。家に関してまだ決まってなかったんでした。

 今はまだ十五歳なので、後見人なしに家を借りることはできません。でも幸い誕生日まであとひと月。誕生日が来れば十六歳。れっきとした大人として扱ってもらえますから、後見人なしで一人暮らし用の家を借りられます。

「おばあちゃんに確認しなきゃ」


 さあ、お城の動きが早いか、私の誕生日が早いか。


 どっちにしても急がなくちゃ!




「おばあちゃん、前にお願いしてた一人暮らし用のお部屋、見つかった?」


 薬屋さんに着いて、私は開口一番おばあちゃんに尋ねました。

 以前、家を出るにあたってのことをおばあちゃんに相談してましたので。

 適当なところがあれば紹介して欲しいとおばあちゃんにお願いして、話はそれっきりになっていました。あの時はまだ切羽詰まってなかったんです。

「一人暮らしの? ……ああ、前に言ってたやつかい?」

「そう。予定よりも早めに子爵家からお暇もらおうと思ってね」

「ああ、ごめん。すっかり忘れてたよ」

「おばあちゃ〜〜〜ん!!」

 おばあちゃん、てへぺろって笑うのやめて。

「えらくまた急に言い出したね。昨日の騒動がらみかい?」

 昨日の今日だからですかね。おばあちゃん、そこつっこんできますか。

 昨日の騒動は子爵家いえ的には関係ないけど、問題はそのあと。平凡(かつ平和)な二度目の人生を送るために〝子爵令嬢〟として存在しておきたくないっていうか。

「フォルカルキエ家は今回関係なかったんだけどね、いつ何時、どんなことが起こるかわからないなぁって思っちゃって」

「ふうん。リヨンにも思うところあったのか」

「まあ、そういう感じ、かな」

 適当に誤魔化しておきましょう。

「さっきのは冗談だよ。ちゃんと探したんだから」

「ありがとう! それで?」

「いろいろ考えたんだけど、リヨンみたいに若い娘を一人で生活させるのは心配だから、うちの二階でどうだい? しばらく使ってなかったから埃だらけだけど、綺麗に掃除すればまだまだ使えるよ」

 おばあちゃんが私をじっと見ながら言いました。

「おばあちゃんのうち? いいの?」

「ああ、いいとも。家賃制でもいいし、なんなら労働報酬でもいいし」

「家事洗濯、なんでもござれよ、それいいわ!」

「よし決まった」

 二人でグッと親指立てて。商談成立です。


「今すぐ引っ越しは無理だから、少しずつ掃除したり私の荷物を運び込んだりする感じでもいい?」

「ああ、リヨンの都合のいいようにしな。こっちは構わないから。家賃は実際に住むようになってからでいいし」

「おばあちゃん、神!」

「ふふふ、もっと崇めなさい」

「ははぁ〜。おばあさま神様、尊いです〜」

「よしよし」


 これで家も確保できました!


 あとはどうやって失踪するか……考えておかなくちゃ。




「ねえ……おばあちゃん?」

「なんだい」

「おばあちゃんもカタズケラレネーゼなの?」

「なんだい、そりゃ?」

「片付けられない人ってこと!」

「そんな、褒められちゃ照れちゃうよ」

「どっこも褒めてな〜〜〜い!!」


 早速連れて行ってもらったおばあちゃんの家は、市場のすぐ裏、なかなかの立地です。

 そして一歩、踏み入れたすぐの感想がさっきの言葉。

 服や本、その他いろんなものが散らかった床。台所は流しに皿やプライパンが突っ込まれたまま。どこかで見たような部屋……汚部屋でした。これじゃあお義母様たちの部屋と変わりないですよ。

 唯一綺麗な場所が、薬を調合していと思われる机の周りだけでした。

 ハッとして確認すれば、薬草はきちんと分類されて戸棚にしまわれています。なんつーギャップ。両極端すぎるでしょ。

 ギンっとおばあちゃんを睨めば、

「腰が痛くてねぇ、なかなか片付けられないんだよ、あいたたた……」

 なんて茶番が始まってしまいました。

「嘘ばっかり。いつもそんなこと言ってないし、聞いたこともない」

「気にするな」

「まったく……」

 おばあちゃん、とぼけたってダメなんですからね。

 そのまま二階に案内されて行くと、そこは一階したと同じような惨状でした。埃かぶってるからさらに厄介!

「これじゃあ片付けるのに時間がかかりそうね。頑張らなきゃ」

「ついでに一階したも……」

「はいはい、やりますやります」

 一つも二つも同じです。どっちもさっさと片付けちゃいましょう!


「あ、おばあちゃん」

「なんだい」

「いちおう確認」

「ふん?」

「私は使用人?」

「違うよ。店子たなこで同居人」

「オケ。把握。じゃあ、サービスで一階したも片付けてあげる。次からは自分でお片付けしてね」

「わかってるよ」



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