3。姉妹と言っても十人十色なのですね……
シュワと言うお金の単位が出ていますが、1シュワ=10円と考えてください。
あと、物価は日本の物価より少し安いです。
…虚しい。神のお告げなどとふざけている場合ではない。我輩は忙しいのだ!
先ほど言った通り実行するのは戦争で悪いことが起きたときのみ。勿論間違えてしまって追放にはなりたくない。
とりあえずは今日の夕食、一家そろってのディナーである。正直ディナーはチャンスだと思う。父上に探りを入れて何が起きたかをあわよくば話してもらうことができるから。
先ほどドレスの下に男装用の服を着たがもう晩餐用のドレスに着替えなくてはならない。女子って大変だな。
我輩は思い切り侍女を呼ぶベッドわきのひもを引いた。自分で着替えられないんだよ、正式なドレス。どこをどうやって巻いたらどうなるのか理解できる人は天才だと思っている。
紐を引いて二秒後に侍女サフィは現れた。
「ご用件は何でございましょうか」
あくまで職業上の笑顔を貼り付け彼女は問う。まあ、そこまで親しくないわけだし本心から笑う必要ないけどね?
「サフィ、我輩の服を晩餐用に着替えさせろ」
はい、と返事しサフィは我輩のドレスを脱がせようとしたががすぐに疑問形な顔になった。まあ、自分の主が変な男の庶民の服を着ていたらそうなるよな。
「……ルナカルス殿下?どうなさいましたか?」
あいにく彼女はあまり親しくない。世の中は金で成り立ってるから、まあそうあれだ。金の力で解決するべきなんだな?
「サフィ、いつもお前にはほんとに助けてもらっているな。だから1000シュワの臨時報酬だ。あ、そうそうさっきなんか聞いていたが何か質問はあるか?」
「いえ。いつも通り肌がきれいなので見入っておりましたわ」
ちょっと目が輝いている。正直なのはいいことだな?別にお金につられるのはいけないことではないと思う。
「そうか、言い忘れたがこの服はドレスの下にさらに着せておくれ。あと今日は緩めのドレスがいい」
本当は男物の服が着てあるのだから肌なぞ見えるはずもない。そう、世の中は金で回っている!でもサフィを責める訳にはいかない。彼女には生活もあるし、確か弟も養えないくらい貧しいのだからお金につられるのは自然な流れだ。50シュワもあれば食堂で割と満足に食べれる。1000シュワは彼女にとっては大金だろう。
ほんの少し迷った末、わきに置いてあった100シュワを取る。
「…………………やる」
そう言った我輩に少し彼女は驚いた様子だった。まあ臨時報酬出したことなかったしね。
「宜しいので?」
「やるといったはずだ」
意外と恥ずかしいのだな、人を助けるの。今までしたことがなかったとかどんなわがまま王女だよ?「よろしいので」って我輩のキャラはどうなってんだよ?ちょっとほんの少しだけ、赤くなった顔を隠すように早口で言う。
「早くせよ。数刻しかない」
かしこまりました、と彼女が少し嬉しそうに言った。
なんやかんやしているうちに8時になった。その時、我輩は王族の食堂の扉の前にいた。粗相をしてはたまるかと意を決して扉をゆっくり開ける。毎日あけているはずなのだが、ギギギという音を初めて聞いた気がした。
父上に今日聞いたことによって、もうこの生活とはおさらばする可能性があるのだ。そりゃ緊張するわ。
中に入ったら、豪華な装備が目に入った。金の時計、金の柱、そして目線を上にやると豪華な壁画が目に飛び込んだ。目がチカチカするのを抑え込んで、これで最後かもしれないからと情景を頭の中にインプットした。そりゃ7年も居たわけだから、愛も情も湧く。赤い、見るからに豪華な絨毯の上をゆっくり進む。
そして、兄妹たちにものすごい勢いで睨まれた、こわい!(震え声)と付きそうな調子で言う。
「遅れまして、申し訳ございません」
兄妹達は全員そろってたははは。ごめんなさい、兄上、姉上。本当はあなた様方より年下のわたくしめが早く来るはずでした。
もうしわけございませんめっちゃ反省してるので睨まないでちょ?滅茶苦茶怖い。もう、完全に32人ぐらい殺していそうな視線だった。特に二番目の妹。みぃ、姉だよね?なんで奴隷を見る目なの?…私がハーフだからか。
「ルナカルス?今日はどういたしたのかしら?珍しく時間ぎりぎりじゃないの。」
姉上の一人が言う。え何それ怖い。我輩がもしいつも早く来ていて今回遅いのなら気遣う分に見えたかもしれない。だが、遅刻常連者の我輩にはわかる。これは「いつも遅れているのに。なにあんた、今日は早いじゃないのよ」という意味だ。え何それこわい。
たちまち周りから忍び笑いが起こる。もうみんな笑ってるのではないか?あ、妹の一人、ソルだけは笑わないでくれた。実の弟にも笑われているのにほんとソルちゃんは天使だなぁ。ぜひとも嫁にほしい。
「すみません。私(みんなの前での一人称)いつもとても忙しくて……」
すまなさそうな雰囲気ONにして言うと、32人は殺してそうな視線が64人殺してそうな視線になった。え何それ怖い。
迫力満点、いや、迫力満点+ボーナス点が付きそうな雰囲気で二番目の姉が口を開く。
「貴女ハーフのくせに調子乗っているんじゃなくて?忙しいというのはデュセンタ公爵と通じているのではなくて?」
嫌味も仮面も投げ捨てて姉が言い憎々しげに我輩を見た。じぃっと、ドレスを睨んでいる。もしかして羨ましいの?……確かに我輩は王妃の子だからほぼ一番豪華だけど?でも姉のドレスもショーウィンドーに並ぶような豪華品なのだ。それなのに我輩のドレスがほしいとは……。
ハーフ(混血種)の癖にというのはむかついた。自分の出生はコントロールできないためこればかりはどうしようもないが、周りはもう忍び笑いの渦だった。ハーフとはいつも軽視されるものだから。
一応表的には差別はない。弟も王位に就く予定だというし差別があったら困る。だが意識とは裏腹に顔は赤くなるばかりだった。
侍女たちに助けを求めようにも、あたりまえが彼女たちは発言ができない。逆に王族と同じくらいの発言権はそうそうないし、むしろいないのではないか?
「ハーフも純血も皆平等です。私は決してデュセンタ公爵と繋がってません」
自分のただ単に否定したで説得力ゼロの発言にどんどん顔が火照っていく。もうやだ、顔から火が出る!
「あらそうなの?聞くところによると、幼女趣味らしいじゃない、あの人。……あなたも体とともに国も売ってしまったのでは?…あら、まさか。……そうなのね……」
悲しそうな顔で姉が言う。でもね、顔がいくら悲しそうでも目はいじわるそうに煌めいているんだよ?っていうか、そうなのねってどうなんだよ?こわっ。
「王妃の子なのに裏切ってしまうのね……」
しばらくこの調子で虐められた後、国王陛下(父)が来た。戦状はどうなっているのか聞こうとしたら、ちょうどナイスタイミングで、我輩が口を開く前に先ほどとは別の三番目の姉が甘えた声で言った。
「お父様、戦争の状況はどうですのぉ?」
ナイスです、姉上!
「いい姉上と、悪い姉上がいるのですな!」