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四凡  作者: 孤独
4/5

6連投

「ふうぅっ」



抑えは先発と違い、いつもチームに帯同している。

先発する日以外では休みとなって家族サービスしていた頃とは違っていた。



その事よりも北田。5連投をしており、少々疲れていた。

抑えとしてのリズムをある程度掴んだが、体がついていかない模様。怪我をしない身体であるが、回復には向いていない体質であったことをこの時知った。



「なるべく早く寝よう」



少しでも体を休める手段を妻に調べさせていた。




「ピッチャー、北田」



そして、6連投となったこの日。



「よーし!頼むぞ、北田!」

「8セーブいけーー!」



先発が試合を作り、中継ぎもそこまで炎上せず。ここ10試合は僅差が多かった。

試合もペナントも勝ち越しているだけに弱音はいっていられない。この試合を凌げば移動日で体を休ませることができる。



「おっし」



気合を入れて今日も投げ込む北田。

立ち上がりから慎重に攻めていく。球数を使ってでも3アウトをとることに意識している。

だが、13球目に辿り着いた時、異変が起きる。



「っ」



肩が痺れてきた。体のケアはちゃんとしていたはずだが、悲鳴が上がった。

連投をするのは高校以来。それも急に6連投と来たもんだから、体がおかしいと言っているのだろう。

ランナーはヒットと内野ゴロで進んだ二塁ランナーがおり、アウトはあと一つ。ブルペンで肩を作っている投手はいない。全員が俺に託している。

痛みはアウトをとってからでもいい。ここを抑えることに集中しよう。



「ふっし!」



痛みを抱えつつもストライクをむやみに取りにいかない。この場面、一打は命取りだ。

三振は要らない。凡打で抑えようとボールを低めに集める投球を続ける北田。それが思わぬ結果を生む。



「ボール、フォアボール」



自ら逆転のランナーを出した始末。フルカウントと追い込んで、痛みのせいか投げたカーブが最初からボールとなる球だった。このピンチに内野手達がマウンドに集まった。



「大丈夫っす。内野ゴロ、近いところでゲームセットっす」

「……悪い、お前等」

「はい?」

「俺、肩が痛い」

「えええぇぇっ!?」

「6連投が効いている。コントロールが中々定まらない」



北田の思わぬ告白に動揺する内野陣。この中で一番頼りにしているのはピンチを作った北田だからなおさらだ。



「それでもこの試合は俺に任せてくれ。ブルペンで肩を作っている投手もいないし、2アウト満塁でマウンドに上りたくないだろ?」

「そ、そりゃそうですが」

「ただの疲労だ。どのみち、俺はこの回だけの男。戦犯は俺1人で十分だ」



あくまで最悪の負けになったとしても。という話を内野陣にした北田。

体調が良くないことを監督やコーチに告げなかった責もある。

北田はベテランとして、このマウンドで内野陣に作戦を伝える。



「ヒットは打たせん。打者2人で1アウトをとる」

「フォアボール込みでいくんすか。逆転のランナーまで得点圏に……」

「守備側の考えはこの状況も満塁も変わらない。近いところのベースにボールを持って踏む。必ず、内野ゴロを打たせる。後ろにもっと退いて守っていい。万が一のセーフティバントは俺が処理する」

「……分かりました。低めにボールを集めてくださいよ」



北田の作戦と決意に内野陣は頷いて散った。

この状況で一番緊張するべきは北田だというのに、痛みとピンチを背負っても動じずに策を講じて内野手を助けてくれる。

戦犯なんていわず。ちゃんとした、守護神として胸を張って欲しいと言ってやるために後ろの内野陣は引き締まった。



「ふっ」



安心できる内野陣は先発も抑えも変わりないと、北田は思っている。

深い守備をとらせてから打者の低めに投げ込む。




キーーーンッッ



低めのストレートは三遊間に強く転がった。

しかし、深く守っていたサードはこれを難なく処理し、サードベースを踏んでゲームセット。

危なげながら3アウトをとった北田。これで8セーブ目であった。



そして、痛みを感じた肩は予想通り軽度の疲労によるものであった。

チームに同行こそするが、連投は控える予定となった。



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