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残された一ヶ月  作者: ないわ
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11月30日

 その日は説明する事もないくらいにいつもと変わらない1日で、ただただ惰性で過ごす人生の一ページに過ぎない何でもない1日のはずだった。

「ぱんぱかぱーん。おめでとーございます。あなたは栄えある犠牲者に選ばれました」

「は?」

 俺以外に誰もいないはずの家に突如として現れた翼を生やした女は、限りなく棒読みの言葉で、どこまでも屈託のない笑顔で、俺に謎の死刑宣告を告げた。

 とりあえず落ち着こう。

 家に帰ったらいきなり翼を生やした女がいて、犠牲者がどうとか言ってきた。

 つまり……これは何だ?

 まったく意味が分からない。

 この翼はなんだ? コスプレか? コスプレに詳しくない俺には材質がよく分からない。

「あのー」

 そうか、わかった。新手の詐欺か何かに違いない。そうと決まれば警察に通報した方がいいだろう。

「もしもーし」

 どちらにしても、不法侵入には違いない。

「話を聞きなさーい!」

 ポケットからケータイを取り出そうとした俺の手を女が止める。

「何ですか? 不法侵入は犯罪ですし、しっかり警察に連絡しないと」

「何だ? じゃありません。どこの世界に天使を警察に通報する人間がいるんですか」

 参ったな、相当電波が入った女らしい。こういうのには関わらない方が良い。

 気にせずにケータイで通報しようとするが、再度手を止められる。しつこい女だ。

「駄目ですよ、犯罪を犯したら捕まるのは当然です」

「あー、もうめんどくさい。神様にどうにかして貰おうっと」

 電波女はケータイとは微妙に違った機器を取り出し何やら喋りはじめた。

「もしもし神様ですか? 私です。選んだ人がどうやっても信じてくれないんで、神様の力でどうにかしてください。え、何? 今日は休みだからヤダって? 明日なら真面目にやるって? あ、ちょっと神様ー。あー…。切れたし」

 神様なんてふざけた単語を出しながら謎の会話を終えた電波女。一人芝居とは無駄に芸が細かいやつだ。やっていて悲しくならないのだろうか。ぼっちの俺でもしない。

「はぁー、どうしろっていうんですか…」

 深いため息をもらし俺を見つめる電波女。

「そろそろ通報していいか?」

「ダメです!!」

 まったく早くさせろ。というかわざわざ聞いてやる必要はなかった。通報して事情を聞かれるのは面倒だが仕方ない。

 俺がケータイに手をかけたその時、電波女が諦めたように言う。

「もう、概要だけ伝えて帰ります。あなたは犠牲者に選ばれました。今日は……11月30日ですか。丁度いいですね。これから1ヶ月後の12月31日あなたに選択して貰います。あなたが死ぬか、この世界を消すか」

「何を言ってるんだ、お前は」

「詳しい話はまた明日~」

 俺の疑問を返答になっていない返答で返すと、電波女はそのまま煙のように消え去ってしまった。


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