生まれ出でる命
短いです。笑ってやってください。
「…なあ、わかっているんだろう?」
差し伸べた手についた傷は、必死に抵抗する故に。
「生れ落ちたそのときにはすでに、それの命が尽きていることを」
囁く声にかぶせる金きり声は、必死に否定する故に。
「もう、わかっていたんだろう?」
見つめる瞳にかぶりを揺る頭は、聞きたくないと耳を塞ぐ故に。
「どんなに暖めようと、どんなに必死になろうとも、それは……命にならなかった命は単なるものでしかないんだ」
ぎゅう、と抱きしめて離さない腕は、命無くとも確かに己の胎から生まれたわが子を護る為に。
「だから……もう、諦めていいんだ」
いっそ痛くなるほどのやさしさに満ちた声。
部屋に響く、怒気にあふれた声。
「だから………」
「その卵を寄越せこんのニワトリ野郎!!俺の朝食ぅぅううう!!」
「コケ--!!コッコケー!!」
傷だらけの手と顔を意に返さず、果敢に突っ込む男と。
初めて生んだ卵を頑として離そうとしない、己の子を護る為に威嚇するニワトリと。
いまだ朝もや漂うニワトリ小屋に響く両名の声をゴングにして、ここに、食うか食われるかの戦いが始まった。
読んでいただきありがとうございました。