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のんびりした感じの小説

訊くな!

作者: オリンポス

http://blogs.yahoo.co.jp/alchemist652/30273739.htmlから転載しました。


よろしくお願いします!

「東京の人はエスカレーターに乗っても走るんだぜ! すげーよな」

 友だちからその話を聞いたとき、ぼくは東京都民に共感した。

 オレもエスカレーター走るぜ、と。

 なんか急ぎたくなるよね、と。

「しかもさ、やつら人を人として認識してないから、ぶつかってきたくせに謝りもしねーの」

 うん、わかる。

 オレもお前のこと、消しゴムと間違えることあるもん。

 いやべつにヘンな比喩とかじゃなくて、価値の問題であるとか、値打ちの問題であるとか、そういうことを言いたかったのだ。

「それは災難だったねぇ」

 あいづちを打つ。

「そうなんだよ! やつらは鬼だ」

 わるいな、オレはそれをも凌駕するんだ――言おうとしてやめた。

 人間なんて、べつに植物プランクトンや動物プランクトンと大差ないし。

 つまり正直な話、いてもいなくても同じなのだ。

 ぼくはそう思う。

 だから東京の人がいくら冷徹で、冷血で、冷淡で、薄情でも一向に構わない。

 なぜなら――ぼくはそれどころか。

 ――君達にんげんには無関心だからだ。

 断言する。目の前で人が死んでも、ぼくは面倒だから素通りするだろう。

 アリの死がいと何が違うの? そう思うはずだし、極論何も変わらない。

 櫛風沐雨にさらされ、倒れた木々と、等しく同じなのだから。


 東京駅に行くことになった。

 理由は簡単、お盆の墓参りがあるからだ。

 両親をなんかで亡くし、祖父母と暮らしていたが、まあめんどうだから1人で行くことになった。

 仔細に述べたくても、記憶から抹消されているので、過去のことは気にしないでほしい。まあ、ごたごたがあって…………。

 ただいま「⋀駅」に着いた。

 新幹線の切符どうやって買うんだっけーーー?

 わかんねー、どうしようどうしよう。

「あのー、どうかされました?」

 券売機の前でうんうん唸っていると、背後から声をかけられた。

 男の人だった。

 短髪直毛で、ツンツンと髪が逆立っている。地肌が見えるがまだ若い。

「新幹線の切符買いたいんですがよくわからなくて。東京までなのですが――」

 男の人はふーんとうなずき、「在来線で大宮駅まで行って、そこで新幹線に乗りかえる。こっからは出てないからな……。もしよかったらいっしょに東京まで着いていってあげてもいいけど? 有給休暇とったからやること無いし」

「いえ、今日は手配だけで十分なんですけど……」

「そうか。そんじゃ切符だけ買いに行こう」

 ――優しい人間もいるんだなぁ。

 人間って意外と良いやつかも。


「やあ、ご苦労さん」

 親せきの人が出迎えてくれた。

 ――東京駅である。

 新幹線ホーム(?)といっていいのか、もうよくわからない。

 とにかく広く、何本も新幹線が滑りこんでくる、そんな光景。

 すげーとしか言えなかった!

 (JR)横浜線に乗り換えての移動中、眠ってしまっていた。

「次の駅どこですか?」

 寝ぼけながら訊く。

「きくな!」

 親せきの人が答える。

 シートに座っていたのだが、つり革につかまっている人に、足を踏まれた。

 列車が揺れているのだ。――緊急停止ボタンが押されたとかなんとかアナウンスが流れる。

「あのー、次の駅は……」

「だから、きくな!」

 泣きそうになった。

 なぜ教えてもらえぬ。

 さっさと降りてしまいたいが、列車は止まったままだ。

 訊くな訊くなって……。なぜだ?

 東京とか神奈川とか。

 関東はもうきらいだ! 大嫌い。

 共感しない。何も訊かない!

 ――しばらくして、菊名(きくな)駅に到着したのであるが、ぼくは気がつかなかった。


アドバイス、コメントを心よりおまちしております。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして、糸香です。 面白かったです。 私は田舎育ちで、電車とか余り乗った事がないんですけど、最後の方は何があるのかとドキドキしました。落ちでぷっと笑ってしまいました。 何より、主人…
[良い点] オチが面白かったです!思わず笑いました。 きちんとしたストーリーがあり、オチがあり・・・・・・これだけの話をこの長さにまとめられるとは、すごいなと思いました。 [一言] 短い感想ですみませ…
[一言] すごく共感しました。 私も、初めて東京言ったときびっくりしました。 なにこの人の量。 なにこれ、新幹線?電車じゃないの? 状態でした。 きくな駅は災難だったなー と、同情していました。
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