第一話 激突
世の中には様々な人がいる。
運動の得意な者、運動の苦手な者。
裕福な者、貧乏な者。
万能な者、無能な者。
一人一人が個性を持ってこの世界に存在している。
だが、その多くの者は不当な扱いを受けている。
世界はいつだって不平等だ。
遥か昔に身に付いた、人間の「比較」という考え。
人間は古来より、自身より下等な存在を罵り、また批難してきた。
人間の、その醜悪な裏側の心は、まるでラジオ塔が電波を発信するかの如く、他人に伝播していく。
親から子に、恋人から恋人に。
上司から部下に、友から友へと。
時に形を変え、またある時は大きなものとなって伝わる。
それは今になってなお消えていない。
いや、人間という存在が在る限り、それは無くならないのかもしれない。
・・・とまぁ、こういうことを言っている時点で俺は相当残念な人間になっているわけだが、こうして世界を皮肉っていないと、とてもじゃないが今はやっていられなかった。
なぜなら今日は補習の日なのである。
高校最初の学力考査で世界史12点という、ある意味で素晴らしい点数を獲得した俺は、土曜日だというのに補習だと言われ、学校に向かっていた。
一般世間の補習がどうなのかは知らないが、わざわざ土曜日にやる必要はないと思う。
平日の放課後でいいではないか。
早朝4時に電話(それも携帯に)しなくてもいいではないか。
・・・とまぁ、こんな感じで不満ばっかりが募り募って大変なわけだ。
発散しようにも出来ないところが我ながら実に情けない。
そんな感じで悲観的になっていると、急にポケットが震え始めた。
当たり前だが、電話である。
発信者は、自分の担任。
出たくなかったが、出ないと絶対怒られるのでとりあえず出た。
「もしもし、何ですか先生?」
「おう、金森か」
今から補習の俺に対してなんとも言えない軽い調子の応答。
因みに、金森は俺の名字である。
申し遅れたが、俺の名前は金森浩汰。
以後よろしく。
「おう、金森かって・・・俺の携帯にかけといていちいち確認しないでください」
「おうおう。すまんすまん」
「…ったく…。で、何ですか?何か用件でも?」
「おうおう、そうだった。大事な話があったんだった」
「忘れてたんですか…。まぁいいです。で、大事な話とは?」
「金森、今日補習なくなったから」
「はい?」
「だから、補習なくなったから」
「え、ちょ、ちょ、何?今日補習無いんですか?」
「うん」
「えええええええ!!!!」
「大声出すな。耳に障る。ということでじゃあな」
「え、ちょっ、先生!?えっ、ちょっ、ええ!?」
電話はそこで切れた。
俺は唖然とした。
担任曰く、今日は補習無し。
そして、今俺がいる位置は、学校まであと100メートルの地点(長い坂道)。
ぶっちゃけて言おう。
理不尽過ぎんだろうがぁぁぁぁぁ!!!!
・・・さて、近所迷惑な程叫んでしまったが、補習は無くなった。
通常営業。
「帰るか…」
天気は快晴、気分は曇天。
こういう時はゲームをして憂さ晴らししよう、そう思ってもと来た道を戻ろうとした時だった。
「止まってぇぇぇぇぇぇ!!!!」
上の方から声。
しかも、女の子の悲鳴だ。
振り返ってみると、自転車で猛スピードで降りてくる人影が。
ブレーキが壊れているのか、止まる気配はなく、むしろさらに加速して降りてくる。
…あれ?こっち来てね?
あれ?もしかして、当たるんじゃね?
いや、当たるよ!
絶対当たるよ!
そうこう焦っているうちにも、自転車は猛スピードで降りてくる。
当たるのは時間の問題だった。
「ど、どけてぇぇぇぇ!!!!」
…無理じゃぁぁぁ!!!!
あ、あ、あ、当たる!
あ、やばい、来た!
あ、あ、あ、あ…
ゴスッ!!!!
予想通り、俺は自転車と激突した。
全身に強い衝撃を受ける。
俺は宙を舞った。
人間、身体が危険になると全てがスローモーションに見えるらしい。
現に俺は全てがスローモーションに見えていた。
落下が遅く感じる。
思考も単純化されて、もう自分のことしか考えられない。
このあと地面に叩きつけられても、死ぬことは無いだろうが、全身の骨は持っていかれるだろう。
ただ、それもまだ分からない。
もしかしたら、奇跡的に無傷かもしれない。
でも、一つだけ分かることがある。
今日はゲームは出来なさそうだということだ。
初投稿です。
一話目で核心まで迫らないのが私流(笑)
読みにくかった方すみませんでした。