2-4 魂の帰着
「ゼノ……」
深夜に屋根裏に戻った俺を、フィオナは寝ずに待っていた。天井からぶら下がる、コウモリどもと共に。
「大丈夫?」
「平気さ」
駆け寄ってくると、汗まみれの俺に抱き着く。
「おいおい、汚れっちまうぞ。お前、今日もコレットと風呂入ったんだろ」
「いいの……」
フィオナは小柄だ。俺の胸から瞳を見上げてくる。
「ゼノの体から、死と誇りの香りがする」
「そうか……お前、鋭敏なんだな」
頭を撫でてやった。
「一緒に……」
フィオナは俺の手を引いた。俺がいつも寝転がる洗濯物の上でなく、藁を敷いた寝床へと。
「まあ……いいか」
横になると、天井でコウモリの目が光っているのが見えた。無感情に、俺とフィオナを見下ろしている。
「ゼノ……」
寄り添ってきたので、腕枕してやった。
昔はよく、こうやってエリスに腕枕してやったな──。
幸せそうな恋人の幻影を魂の隅に押しやると、フィオナを抱き寄せてやった。
「ゼノ……辛いんだね」
「……辛いのはお前だろ。魂からなにかを抜かれたんだ」
「……」
フィオナは沈黙した。ややあって答える。
「怖……かった。自分の大事な部分が全て……抜き取られて」
「もう怖くなんかないさ。俺が癒やして、魂の欠落を埋めてやる。時間を掛けてな」
「ゼノ……大事な人……」
フィオナの瞳が潤むと、熱い涙が、俺の腕と胸に落ちた。
「さあ、もう寝ろ。俺のこと待っててくれたんだ。眠いだろ」
「う……ん」
フィオナの体は熱く発熱している。俺の心を温めようとするかのように。
──お前……そのエルフからな……名前を教え……られたのか──
先程の、「エルフ」の断末魔の声が脳内で再生された。
──誰も……聞き出せなかった、その名前を。……お前の……末路を知れてよかった──
そう、あいつは言ったのだ。死ぬとわかって俺の心に毒を流し込んだ、ただの捨て台詞なのかも知れない。あるいは深い意味があるのか。
だだそれはどうでもいい。俺の魂はどうせとっくに死んでいる。フィオナを癒やし救済すること。それは俺に残された、最後のミッションなんだ。
■次話から新章「嘆きの塔本拠地で復讐を誓う。」開始です。
圧倒的な力を誇る悪の組織「嘆きの塔」。ゼノの行動が、堅固な組織に次第にひびを入れていく……。
いよいよ深まるフィオナの謎。フィオナ救済を誓うゼノの心は、次第に溺愛へと傾いて……。魂の救済は実現されるのか。そしてゼノとフィオナの愛の行方は……。
物語が加速する第三章にご期待下さい。




