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第55話 シャーリー、暗躍する その3

 そして、夜の邸宅で、シャーリーは考えにふけり想いをはせる。


 女王と三河晴斗の結婚が決まる前から、自分はこの状況を考えて準備を進めてきた。婚姻の儀というのは、それを実行する絶好の機会にすぎない。


 三河晴斗がこちらに落ちれば事はもっと容易に進むはずだった。しかしその肝心の晴斗は、のらりくらりと勧誘をかわすだけで、はっきりとした立ち位置を示さない。


 シャーリーは持っていたグラスのワインを口に含み、その芳香に感覚をゆだねる。


 ただの孤児だった自分が、欲と野望に情熱を焦がし、たまたま持っていた美貌も利用してこの地位にまで登ってきた。その欲と野望は、自分の本能のようなもので、十二騎士筆頭という地位では収まらない。


 女王を失脚させ、自分がホワイトリリーの長となり、女性至上主義の世界を創り上げるのだ。というより、その目的を達成するために、ホワイトリリーが『あの方』たちの目の止まり、現在の形になったのだと言えるだろう。


 ホワイトリリーを影から導いてきた、名前を言うのも恐れ多い『あの方』たち。『あの方』たちに列席できれば、自分は満たされて、その欲と野望は昇華されるのだと、シャーリーは信じていた。


 それは、たまたま自分が今いるこの世界線だけではなく、多元並列世界の全ての世界線を統べる『神』となるのに等しい。


 そうだ。自分は神になるのだ。ホワイトリリーの十二騎士筆頭などではなく、女王レベルでもない、現実に存在する神になるのだ。


 シャーリーは、もう一口、グラスを傾けてワインを口に入れる。のどを流れていくアルコールが、自分にエネルギーともいうべき力を与えてくれるような気がする。


 女王と三河晴斗の婚姻の儀は、一週間後に控えている。決行はその前夜。それまでにすべての準備を終え、女王と晴斗を絡めとるのだ。


 シャーリーはワインを飲み終え、自分の決意を示すようにグラスを床にたたきつけた。


「私とあの方たちに、祝福を」


 シャーリーは言葉にしてから、両手を広げて天を仰ぐ。あの方たちは見ているだろう。そう想像すると、自分のカラダの中から、力が沸き起こってくるのを実感できる。


 シャーリーは、今、欲と野望に身を焦がしている。

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